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序
「おめでとうございます。あなたは勇者に当選しました。あ、因みに権利の放棄は認められません。勇者は魔王が選ぶものですので、あしからず。
歴代の勇者が各国の王に認められ、傾国の美姫を娶り王族となっている事はご存知ですね。勿論そうですよね、子どもでも知っている事ですから。やがてあなたにも訪れるれる幸運ですよ。ふふ、楽しみにしていて下さい。
あ、失礼。あまり長居しないようにと魔王様からの言付けでして。要件は以上ですので、これにて失礼致します。
またいずれお会いしましょう。あれ、なんだか私が魔王のような言い回しになってしまいましたね。魔王様には内緒にしていて下さいね。それでは今宵はこれで、お休みなさい」
夜に向かってぽかりと空いた窓が静かに閉じていき、風に棚引いていたカーテンがだらりと垂れた。
暗闇の中、薄らと目を開ける。
誰かが早口で何かを話していった気がするが。……眠い。
シーラは寝返りを打ち、再び夢の世界へと旅立った。