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王立騎士団には全部で7つの部隊がある。
第一部隊は王家を守護する近衛騎士団
第二部隊は主に魔法に特化したものが集まり、主に研究などをしている
第三部隊は騎士としても魔法もトップクラス、主に王都守護をしているが様々な仕事をかけ持つ
第四部隊は魔物専門の討伐部隊
第五部隊は城下の国民を守護する対人に特化した部隊
第六部隊は国境警備を主とする部隊
第七部隊は国際犯罪に特化した部隊
ヴァルクは第六部隊に配属になったばかりらしく、色々と鍛えられているようだった。その中で、私に言い渡されたのは”第五部隊”。それはそれは国民なら誰でも知っている悪評高い部隊なのだ。
騎士団というのはどの身分であってもあこがれる職業である。戦で誉を取れば出征街道も間違いないし、戦がない今でも安定して生活のできる人気職だ。しかし、第五部隊というのは国民を守護する最も大事な部隊とされているのだがこの部隊は地域によって対応に差が出てしまっているらしい。王都に近い連隊はいいのだが、騎士本部の目が届きにくい地域では悪い噂が流れてくることも多い。そして騎士とは思えないそぶりのものもいるのも事実。ちなみにグリーン領やハウンド領など街を持っている貴族は専属の専属騎士を雇っている。その専属騎士で賄いきれない領や地域で王立騎士団は活躍している。
そして今、私はその第五部隊隊長のいるベルカ地区本部の隊長室にいる。
「本日より配属されましたローズマリアと言います。よろしくお願いいたします」
「・・・・・・・・・第五部隊を束ねているダロン・フィルだ。まずは、第五部隊へようこそと言っておきましょう」
王都本部とは違ってかなり狭い室内に古ぼけた内装はかなり使い込まれているようで、何日前いやいつ掃除をしたんだというほど空気が淀んでいる。それは掃除うんぬんよりは目の前の隊長からその空気が出ていると過言ではない。
「最初に言っておきますが、騎士団は弱肉強食です。新人には一人教育係をつけますのでそのものと行動をしてください。貴女の部屋は一応鍵付きのところを用意しました。もし問題など起こしたら即刻ここを追い出しますのであしからず」
「はい・・・」
めんどくさい、の一言なのだろう。最早顔に書いているのがバレバレである。
「君の教育係はまだ外には出てないはずだから探して下さい」
「さっさと出てけ」と言わんばかりに手をひらひらさせて手元の書類に目を移していた。隊長室から半ば追い出されるようなしぐさをされて、自分はあまり歓迎されていないのだなと感じこれからが少しだけ不安に思うのだった。
***
兵舎を歩いていると、やはり目立つのかちらちらと見られることはあれど挨拶などは一切ない。ただただ入ってきた異物を警戒しているような空気である。私は目的の人物を探すためうろうろとしているとそれらしき人物を見つけることができた。その人は私と歳が近そうで金に近い明るい茶髪をした青年だった。
「あの、カイ・ローレンス騎士でしょうか」
「あ、はいそうです。君は?」
「本日より配属になりましたローズマリアと言います」
正面から見るとアーモンド型のその瞳に優し気な顔つきはきっと令嬢達に人気が出そうなものだった。
「はじめまして、カイ・ローレンスです。教育係として貴女と組みますが、同僚ですので気軽にしてくださいね」
「お気遣いありがとうございます」
「それじゃぁ早速だけど一緒に街へ出ましょうか」
このハツラツとした笑顔を見て目を細めてしまった。
装備を揃え街に出ると、ベルカの街はそれなりに繁盛しているようで様々な店が立ち並んでいる。しかし、騎士服を着た我々をかなり遠巻きに見ておりひそひそと何かを話しているようだった。
「どうですか、この街は」
「率直に申し上げてもいいのであれば」
「いいですよ」
「・・・・・なんだか空気が悪いです」
正直に言うと、カイは「本当に正直だね」と苦笑いをして歩き続ける。
「魔獣のいる森からも少しばかり遠く、そして王都からも少し遠い場所にあるこの街は色々と行き届かなくトップによって色々変わっていきます。これは情けない話なのですがこのベルカ地区の騎士団はあまり機能していません」
「それは、なぜ」
「新人の君にこの話をするのは酷化もしれません。しかし、貴女の身を守るためにも早く言わないといけないので」
「私の身ですか?」
話しながらも周りを警戒しながら足を進める。しかし我々を避けるように楽し気に話していた人たちは会話を止めてそそくさと何処かへ行ってしまう。
「フィル隊長は最近赴任したばかりであまり現場をわかっていません。それに中央出身でこんな田舎に飛ばされたので予想ではありますが左遷させられたのでしょう。そのおかげか隊長を下に見る騎士も多くいます。そして前任の隊長の悪行がそのまま残っているこのベルカ地区の騎士は堕落した人間ばかりです」
優し気な表情が曇り、手に力が入っているその様子に相当思うところがあるのだろう。
「僕も赴任したばかりですので全てを把握しているわけではありません。しかしはっきりと言えるのは貴女にとって良くない赴任先であることは確かです。女性というだけで嫌なことは沢山あると思いますので、できうる限り僕と一緒に行動してください」
「わかりました、ありがとうございま・・・・す・・・・・・・・。赴任したばっかり?」
真剣にこちらを心配してくれるカイに好印象を持ったが彼のある一言がひっかかりを持ってしまう。
「同僚って言ったじゃないですか。僕も2週間前に騎士になってこちらに赴任したばかりなので一緒に頑張りましょうね」
新人同士で見回りさせるこの部隊にかなり不安がよぎるのは仕方がないことであった。