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今回は短めです。
重たい瞼をあけると、そこは知らない天井が広がっていた。白で統一されているこの場所は、病院のように思えた。しばらくすると部屋に入ってきた女性は驚いたようだったがすぐさま笑顔になり、こちらへ近づいてきた。
「お目覚めのようですね、よかったわ」
私が何かを言う前に、異常がないか素早く身体チェックをした。その出際の良さに口をはさむことが出来ず、気のすむまで待っているとどこか安心したように息をついていた。
「意識もはっきりしているし大丈夫そうね」
「あの、ここは」
「ここは騎士団の医務室よ。あなた試験中に倒れちゃって運び込まれたの」
はやり記憶の最後に思い出すのはルークの水魔法の攻撃。視界いっぱいに広がる水が綺麗ではあったがその重たい衝撃をもろに食らってしまったことを考えれば無鉄砲な反撃であったなと思い当たる。
「試験はどうなったのですか」
「試験?試験は昨日で終わっているよ」
「・・・・・・・きのう」
なんと私は1日意識を無くしていたらしい。そのことに絶句していると女性は安心させるように背を撫でながら言葉を続けた。
「貴女に伝言を頼まれていたの。起きたら団長室に来てほしいですって」
***
医務室から出て騎士団の団長室を目指すため、敷地内を歩く。外の演習場では声も聞こえてくるので訓練をしているのだろう。医務室の女性はセレナという方で寝起きの私に色々世話を焼いてくれた。
数分歩いた先に目的の場所についたようで、団長と同じライオンのマークが掲げられていた。深呼吸をし扉をノックすると中から「入れ」と声があった。背筋を伸ばし中に入ると、そこには団長と、もう一人騎士服を着た男性が居た。
「意識が戻ったか!試験は難儀であったな」
「いえ、治療までしていただきありがとうございます」
「いやいやこちらの不手際だったからな。まだ痛むようだったらきちんと治療してくれ」
「はい」
ニカッと笑いながら話す団長に、横で静かに優し気な表情で見守っている男性が気になりそちらをちらりと見てしまうとあちらも見ていたのかばっちり目が合ってしまった。
「ローズマリアさんですね、まずは座って下さい」
「あ、はい。失礼致します」
ソファに自然と案内され紳士的な男性は、団長が”動”とするなら彼は”静”なのだろう。
「初めましてですね。私は王立騎士団で副団長を務めさせていただいています、ユリウス・オーウェンと申します」
目の前に、この国の騎士団をまとめているトップ2がいるという事に冷や汗が出るのは仕方がない。それこそ数年に一度あるかないか、大きな式典などでしかお二人同時に出会えないのだから。私の焦りも感じたのか、安心させるように笑みを見せたユリウスは一つの書類を出してきた。テーブルに出されたその書類を見ると、それは今一番知りたかったことであった。
「おめでとうローズマリア。この度の騎士試験を合格とし、正式に騎士団に所属することをここに表明する」
団長がそのよく通る声でそう宣言した。
「ありがとう、ございます・・・」
嬉しさで震えそうな声を必死に抑えて礼を言う。これで一歩私の夢に近づいたのだ、長年なれないと思っていた憧れにだ。
「おめでとう。これからは我々の仲間になるね」
「はい、誠心誠意頑張らせて頂きます」
「よろしい、若者は元気でいいな!あとじゃ配属先なのだがな、君は他の者と違って特殊である。意味はわかるね」
それは単純に魔力なしのスクルートであると騎士団側は把握しており、それでも入団させてくれたという事に頭が上がらない。だからこれは試されているのだ、本当に騎士としてこの前まで令嬢だった私が使えるのかどうか。
「はい」
私は強く返事をする。今はそれしかできないが、これはチャンスをくれた彼らに覚悟を示すのだ。
その返事にどこか満足げな団長と、少しだけ困った顔をした副団長。
「それでは、君の配属先を言い渡そう」
「はい」
「第五部隊に行ってもらう」