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薔薇騎士物語  作者: 井鳥リヤ
第一章
7/11

5

 滞りなく測定検査も終了し次は戦闘試験であった。ヴァルクの話ではほぼ例外なく毎回同じ試験内容で人間を模したかかしに魔法や剣技を披露するというものだった。しかしそれは大半がそれであって極稀に例外が存在するという言葉だった。

 なぜなら、今目の前に広がっているのは野外の演習場に一人だけ格の高い騎士服を着用し受験者に激励をしている男にこそ原因があった。


「私は王立騎士団、団長のガウル・ロッツォである!貴殿らの活躍を見たくこちらに足を運んだ所存。十分に活躍するといい」


 この騎士団長という男が来たときは、試験内容がガラッとかわり受験者同士の戦闘試験となるのだった。人形と人間相手では動きも全然違う為、試験としてはこちらの方が試験として適しているのだろう。しかしその結果、試験自体が厳しくなり合格者もかなり制限されてしまう。実質、合格判断するのが戦闘においてプロの騎士団長がやるわけであるからだ。彼のお眼鏡にかなうのは、至難の業だろう。ガウル騎士団長は自分の召喚獣であるライオンを横に携えて少し離れた場所に待機するようだった。

 周りの受験者も感じ取っているのだろう、先ほどまでの緩い空気感が抜け是が非でも合格したいという緊張感がでた。そして私の方への視線も鋭くなる。


「ローズマリアさんの番号です」

「はい」


 受験者に配られたのは整理番号。番号の同じ者が対戦相手のようで、皆私の番号をきにしていた。なぜなら、今回の受験者の中で一番ひ弱そうで楽に勝てそうなのは私くらいだ。

 広い敷地内で数か所に分かれて試験を行うようで、番号が呼ばれた順に案内されるようだ。


「13番の方、前へ!」


 手元にあるのは”13”と書かれた紙。それを渡し、試験エリアへと入ると相手も現れた。それは控室で出会った青髪の青年だった。


「おっ!まさか君と当たるとはなー!」

「お前か・・・・・」


 嫌な奴に当ってしまったと思い顔をしかめてしまう。それをわかっているのか相手はなぜか嬉しそうにはしゃいでいた。


「名乗り忘れてたけど、俺の名はルーク。ルーって呼んでもいいぜローズちゃん」

「あなたに愛称で呼ばれるなんて虫唾が走りますね」

「うわぁ辛辣だな。まぁお手柔らかによろしく」


 お互いに持つのは木剣。訓練用のものを貸してもらっているが、熟練者になれば木剣でも凶器となる。そして我々の試合を見てくれるのは、先ほど私の検査をしてくれた騎士だった。


「これより試験を開始する。それでは始め!」


 合図と同時に、男は私の懐に素早く入ってくる。体格に似合わず素早い動きに驚きながらも私は地面を蹴る。私の意図を察したのか素早くそれを回避した。


「・・・・・石礫で目つぶしなんで、ローズちゃんちょっと卑怯じゃない?」

「戦場ではそんなこと言ってられないのでしょう」


 そう軽く挑発すると、何が彼の琴線に触れたのだろうにんまりと笑いこちらに踏み込んできた。まともに剣を受け止めても力では負けてしまうので攻撃は受け流し、隙を見て攻撃を繰り出す。しかしこの男、見た目によらず動きまわるため決定的な攻撃を与えられておらず、消耗戦になってきた。


「ローズちゃんすごいね!そしたら少しだけ本気をだしちゃう・・・”水よ”」


 ルークは詠唱し、水の塊を私に当てようとした。すさまじいスピードで来る水の塊をすれすれで避けると、それはすさまじい音で土をえぐったのだ。


「よく避けたね!それじゃあ次はどうかな」


 すぐさま詠唱された水が何個も飛んでくる。それをすれすれで躱し、どうにか体に当らないようにする。むしろそれしかできない。


「逃げてばっかりじゃ試験にならないよー」


 彼の通り逃げてばかりでは試験にならないし、何よりもこの薄笑いの人間に負けたくない。そう思って一か八か、むしろ怪我をする前提である行動に移した。


 私は持っている木剣を思い切り振りかぶり、ルークへと投げた。それはブーメランのように円を描きながらまっすぐルークの方へ飛んでいく。


「うわぁ!なにしてくれてんの!」


 気が付いたルークは、自身に飛んでくる木剣を魔法で止めようとするはず。それの反応が遅れれば彼の懐に入ることができ、体術で制圧できるかもしれない。そう予想を付けルークへ走り出す。しかし彼はその予想を覆し、なんと自身の木剣ではじき返し魔法を私の方へと向けてきたのだ。


「”水よ”!」


 突っ込んでいった私に対して魔法を繰り出す。そしてそれを正面から受けてしまった私は強い衝撃を感じた後、意識を飛ばしてしまったのだった。

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