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世界はクロッカスを待ち望む  作者: カモミール
第一章サーハ村
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カイルと出会う前の一夜

「アーネの身体にユピテルがいる以上、アーネには手を出せない・・・」


けがをした片手に包帯を巻きながら、モネがつぶやく。


ここはモネの家から遠く離れた森の中


 変身魔法、水精の羽衣(フェザーオブジェミー)


自分の身体に魔力をまとわせて、姿を変えることができる。


「とっさに掴んだゴブリンの死体を自分自身に変身させて身代わりにするなんて・・・余裕がなかったとはいえ彼らを冒涜し過ぎね・・・」


ユピテルの攻撃を間一髪で躱し、ゴブリンを身代わりにすることで自分の正体を消した。


「・・・シェムハザ、いいえお父さん。私はあなたを許しません。たとえ目的が同じであろうと、あなたとはもう分かり合えない・・・」


【変身魔法】水精の羽衣(フェザーオブジェミー)


彼女がつぶやくと、魔法陣に水滴が集まり、体に張り付いたかと思うと顔の形を大きく変えた。


「アーネごめんなさい、待ってて、必ずあなたを救って見せる」








日がとっぷりと暮れ、森の中から小さくざわめきが聞こえる。


意識が戻った時、辺りは真っ暗になっていた。


痛む体を起こし辺りを見回す。


月明かりに照らされて、だだっ広い空間が広がる。


「誰も、いない?」


そこにはどこにも人影は見えなかった。


「・・・・モネ」


先ほどまでそばで話していた少女。


彼女の祈る姿を最後に意識が途切れてしまった。


今までに至るまでの記憶もない。


「いったい何が・・・」


ふと自分の服を見ると、黒いしみがべったりとついていて、月明かりに照らしてみると、血であることが分かった。



その光景に、動悸が激しくなっていく。



急いで立ち上がり、家の方へと駆けだす



ドアを乱暴に開けると、中は昼間と打って変わって静かだった。


この血はモネの者なのではないか?


そんな最悪の想像が、頭をよぎる



「誰か・・・いないのか?」


「モネ・・・・モネ・・・・?」


名前を繰り返すが、誰もいない。


「なぜ泣くのだ、小僧」


だが、声はした。思わず振り返るがさっきと同じで、誰もいない。


「我はそこにはいない、お前の中にいるのだ」


「・・・誰?」


「我はユピテル。少し事情があり、貴様の身体を借りている」


頭の中に声が響く、本当に内側から声をかけれているようだ。


「小僧、なぜそのように泣いている?」


ユピテルが再び、問いかける。


「わからない・・・・寂しいんだと・・・思う。自分が誰かわからなくて、やっと、頼れる人を見つけてもどこかに行ってしまって」


あふれる涙が止まらない。こんなにも悲しい気持ちになったのは初めてでよくわからなかったが、とにかく止めることは自分の意思ではできなかった。


「家族の愛を求め、孤独を感じ、涙を流す・・・か。貴様もやはり人なのだな・・・」


「あ、あのユピテル・・・さん?」


「やめろ、やめろユピテルで構わぬ、貴様に言われると寒気が走るわ」


「モネは・・・モネはどこに行ったの?」


「モネ・・・か、我にはわからぬな。我も今起きたところでな、記憶も無いのだ」


「記憶がないの?」


「あぁ、シェムハザというものにゲームに参加しろと言われ、記憶を奪われた」


「そうなのか・・・僕と同じだね」


「あぁ・・・そう、だな・・・」


自分と同じ仲間ができたと思うと、妙にうれしくて、安心した。


安心すると、肩の力が抜けたように感じて、小さく あくびをしてしまった。


「もう夜も深い、そろそろ寝たらどうだ?」


「ん・・・そう・・・するよ、おやす・・・み」


強烈な眠気に襲われて、深く瞼を閉じた。


まどろみに落ちて行くのに不思議と体はまだ立ち尽くしていた。


意識を完全に閉じる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やはりゴブリンの死体が一つ消えている。やはり、モネは生きていたか」


高く上った月の光が広場全体を淡く照らす。


その中で中腰になり自分が魔法で消し去ったモネの死体だったものを見る。


灰燼の中には、ゴブリンが身に着けていたであろう布切れや、首飾りの紐が見て取れた。


「100年もの間、弟を待ち続け、最後には父親の手によって自分の弟を、敵の我に乗っ取られるか、ここで殺しその呪縛を破壊(こわ)してやるのが情けだと思ったが、まだまだ彼女は苦しみは終わらぬようだ」


「人間が悲しむのを見るのは胸が張り裂けるよりもつらい・・・」


「だから壊すのだ、私が作った世界だからこそ、神々によって汚されたこの世界を壊すことで、神々に復讐する」


「そのために、我は生まれたのだから」


「父親によって運命を壊されたこの小僧は、我と貴様の記憶に触れ、何を思うのだろうか?」


「どう決断するのだろうか?」


月に向かってユピテルが呟こうとも、なにかを返すものはいなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



朝起きて、家の中を探し回ったが、誰もいなくなっていた。


「やっぱり、モネがいないや・・・」


「ユピテルさ・・・ユピテル、これからどうしようか?」


「とりあえずここからは、離れた方がいいかもしれんな、モネを探すにしても、ここからだと得られる情報も少ないだろう」


「そう・・・だね」


ユピテルの言う通りだ。


ここにいたって何にもならない、それよりも僕がモネを見つけなくっちゃ!


それに今は人間じゃないけれど、一緒にいく人もいる。


大丈夫探し出せるさ、


胸をむんと、張ってベルトに短剣を止め直し、玄関の扉を開いた。


「一緒にモネを探しに行こうね!ユピテル!」


「あっあぁ・・・そうだな、がんばろう・・・・」


一人だけど、二人で森の中へと進んでいった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

(ここからは作品に関係ありません)

初めてコメントをもらい、とても気持ちがいっぱいになりました。

モチベーションや、やる気に直結すると思うのでこれからも送っていただけると幸いです。

また、作品の良い点、悪い点も(できるならば根拠も含めて)コメントをくださると、自分のスキルアップ、作品の品質向上になると思います!ぜひぜひご協力ください。

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