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世界はクロッカスを待ち望む  作者: カモミール
第一章サーハ村
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ゴブリンとの戦闘

「俺も戦おうか?」


後ろからモネに相談する。


まともに使えるかどうかわからないが、囮にはなるだろう。


短剣を構える俺の手を、そっとモネの手が止めた。


「心配ないわ、あなたの助けがなくても倒せる範疇よ、それよりも周囲の警戒をしておいて、あいつらには私たちにとどかないまでも、それなりに知性がある」


「この前私がやっつけたことを根に持っているはずだから、仕返しに来たんだと思うけど・・・。あれだけの数で私が倒せないのを知っているはず、何かしらの対策があるのは間違いないわ」


言い終わると、ゴブリンの方から目を話して俺の方に向き直る。


「ごめんなさい・・・私のせいね。あなたのこと危険にさらしてしまった」


申し訳なさそうに、モネは謝罪した。


「モネは悪くない、俺は平気だから、それくらいのことで謝らないでくれ」


俺がそういうと、モネは短く、ありがとうと言ってから、剣を抜き放った。


「まだ、敵が隠れているかもしれない。あなたはそこでじっとしていて?」


ぎこちない笑みとともに、踵を返す。


モネがゴブリンの群れに突貫していく、走ってくるモネに気づいた先頭のゴブリンは振り返る前に、背中に剣撃を喰らった。


「グギャ・・・」


一体目のゴブリンが崩れ落ちる。


残り5体




仲間がやられたことに気づいたゴブリンたちは、モネの前方に扇状の陣形を組んだ。


「グギャアアアアッッ!!」


「グギュアアアアッッ!!」


ゴブリンたちが咆哮する。仲間をやられたことに相当、怒り狂っているようだ。




剣を振り払って、鋭い視線でゴブリンたちを睨みつける。



戦うときのモネは今までのモネとは別人のようだった。



3匹のゴブリンが息を合わせて突撃する。



二匹は剣を構えて飛び掛かり、槍を持った一匹が続く。



モネは深く、体を沈み込ませると、体のばねを使って宙に浮かぶ二匹を振り払う




バランスを崩した二匹が落下するが、槍のゴブリンは止まらない。




振り払ってしまった右手の剣では、間に合わない距離まで槍先が近づいてた。





モネは槍を難なく躱すと、相手の懐に飛び込み、拳を突き上げた。



その拳は正確にゴブリンの鼻を打つ



後ろに吹っ飛んだゴブリンは後ろの二匹にぶつかり、苦悶の声を上げて顔を覆った。



「ギャアアアア!?」




倒れこんだゴブリン達が仲間を掴んで引き起こす。


忌々しく、モネの方を見るが、次の瞬間には唇をニヤリと引き上げた。


「イギッ、グアァ・・・・・・グギッ、グギッ」




「モネッ!・・・・後ろだっ!!」





モネの背後に大きな影が覆いかぶさる。



影はその大きな巨体を使って、モネの小さな体を押しつぶした。






「なるほど、グレートゴブリン。ゴブリンたちがこぞって仕返しに来るわけね」




攻撃してきたグレートゴブリンを躱し、その巨体を見上げる。




肌はゴブリンに似た深い緑だが、体はすでに大人の身長を超えている。


他のゴブリンと同じく腹が出ているが、グレートゴブリンのそれは体の大部分と行っていい。


それだけ体が太ければ、モネくらいの少女くらい簡単に押しつぶしてしまえただろう。





グレートゴブリンは奇襲に失敗したのを遅まきながらきづいたのか、うつ伏せの状態で顔を上げる。



巨体を起こし、背負っていた棍棒を片手で持ち上げた。



棍棒は木をまるまる削ったように太く、モネの持っている剣では分が悪いように思われた。



モネの顔が少し曇る、眉を寄せ、グレートゴブリンと対峙する。




緩慢な動作でグレートゴブリンが振りかぶった。




「グギャアアアアッ!!」


無骨な棍棒がモネの腹部を襲う。




モネは油断なく得物を見据えながら、剣を引いて突きの構えになった。




棍棒とモネの突きの切っ先がぶつかり合う。





棍棒に対し、突きの攻撃、力負けするかに思われたが、剣は棍棒の中心を貫き、粉砕する。




「森へ帰りなさい、ここはあなたたちの来るようなところではないわ」




剣を振りぬき、切っ先をゴブリンたちに向ける。



言葉はわからなくとも伝わったのか、彼らは一目散に逃げていった。





モネのところまで走っていき、声をかける。


「すごいな、全員撃退するなんて」


付着した血をふき取り、剣をしまうとモネは俺に向き直った。


「ごめんなさいね、ひどい光景を見せてしまって・・・・」


そういいながら、モネは自らが切ったゴブリンたちの亡骸の方へと向き直る。


自分の手を握りしめ、静かに目を閉じた。


「何をしてるんだ?」


「彼らに悪意があったとしても、私は彼らを殺めてしまった。だからその償い」


「彼らは、元々人間を襲う者たちではないのよ、ただ神々に(もてあそ)ばれ、それでも必死に彼らなりの生活をしようと努力していた」


「私はそれを奪った・・・だから、償い」


凛々しく語る背中は、どこか悲しげで、


風になびく桃色の髪と、すらりと佇むモネの姿に少し、見惚れてしまった。




体の奥が・・・なんだか、熱い?


意識が塗り替わって・・く・・・暗く・・・深く



俺は短剣を静かに抜くと、彼女の静謐な背中に向かって(やいば)を突き刺した。




「それでは(われ)が、世界を壊すとしよう。(われ)らを(もてあそ)んだ神々に、裁きの鉄槌を下すためにな」




まどろみに沈んでいく中、なぜか彼女の笑顔ばかりが頭に浮かんで、




離れなかった。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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