三人での夕食
ここはどこだ?
戦いは終わったのだろうか?
主様は・・・救われただろうか?
ほかの仲間は・・・ここにはいないようだ。
私はどれくらい気を失っていた?
身体が熱い
明らかにおかしい、今の季節は冬のはず、なのにここら一帯には若草が生え、木は青々と茂っている。
身体が燃えるように熱い、これは気温のせいではない・・・身体の芯が、いや魂が燃えているとでもいうのか。
「主・・・様・・・あるじ、様ぁ・・・」
もうなんでもいい、早くっ・・・早くあの方をお救いしなければっ・・・
たとえこの身が灼け焦げようとも・・・あの方は、あの方だけは。
我らを作り、我らに大地を与えてくださった、主様。
主様は私を救ってくださったのだ。
今度は・・・・私が救う番だ。
「待っていてください・・・主様っ・・・」
村の食堂ではランタとデシコが二人で話をしていた。
「アーネを一人にしたのか!?」
食堂でランタの声が響き渡る。周囲の反応に少し声を改めて小声で、デシコに話しかける。
「村長に言われてるだろっアーネとカイルから目を離すなって、一応客人だが、俺たち村の者とは違う、よそ者なんだぞ?何か事件でもあったらどうするんだっ」
「そんなことアーネはしないと思うよ?」
「それはっおれもそう思うが・・・」
「あっ、噂をすれば来たみたいだよ?」
食堂の中へ入ると、デシコが手を振って居場所を伝える。
一緒に来たキレアとガーベは、一直線に食堂の奥の席のすでに二人の大人が座っているところに行ってしまった。
別れの挨拶もかけずに別れたキレアに対し、少し眉を寄せながら、
デシコの座っている席の方へ行くと、すでにデシコとランタが座っていた。
「アーネ、心配したぞ。全くどこに行ってたんだ」
「にいちゃん、それはさすがに白々しい・・・」
「むぐっデシコ・・・やけにアーネの肩を持つじゃないか」
ランタとデシコが二人で見つめ合う。
デシコの瞳を見たランタは、ため息をついて俺の方に向き直った。
「コホン・・・デシコに言われてな、アーネには本当のことを話した方がいいってな、それで・・・俺たちは村長にアーネの監視を任されているんだ。一応、行き場に困ってここに来た人間にこんなことをするのはいかがなものかとは思うが、一応の警戒はしなければならない。それが仕事だからな・・・」
「今までどこで何をしていた?教えてくれ」
押し殺したように話してくれたランタはその言葉から自分の本意ではないと分かった。
それにしても、自分の行動に少し軽率な部分があったと思う。
「ごめんランタ、心配かけて。さっきはずっとキレアと一緒にいたんだ。」
「いやいや、お前を見失ったのはデシコの責任だ。お前があやまる必要はない。ちょっと待て、キレア?あの、キレアか?」
ランタが向こうのテーブルをさして言う。
俺が頷くと、ランタは少し難しい顔をした。
「キレアと・・・話したのか?様子はどうだった?」
「様子・・・?べつに・・・元気なお兄ちゃんだと、思ったけど、笑ったりもしてたし」
するとランタは今度は驚いた顔をしてカイルと顔を見合わせた。
手前に居たカイルが話し始める。
「実はね、アーネ。キレアは昔、領主様に父親を殺されてるんだ」
「父親を殺されて・・・じゃあ、今そこで一緒に話してる二人は言った誰なの?」
「あの二人はマトリさんと、マリーさんだよもともと二人暮らしで子供もいなかったんだけど、行き場を無くしてた二人を引き取るって名乗り出たんだ。」
「行き場を無くしたって・・・お母さんは?」
カイルに聞くと、首を横に振ってこたえた。
キレアにそんな過去があったなんて知らなかった。
カイルは話を続ける。
「キレアのお父さんは、盗人の罪で捕まって処罰されたんだけど・・・おじいちゃんが言うには、濡れぎぬだって・・・」
「あの二人の所に移り住んで、どうにか気持ちが立ち直るのを期待してたんだけど・・・一年たっても暗い表情のままで・・・僕、キレアに会ったら極力笑顔で接しているんだけど、どうにもそっけない返事しかされないから」
「だから、アーネの口からキレアが笑ったって聞けて、僕は嬉しい」
カイルは笑って、ありがとうを口にした。
俺は三人にキレアの家に行く前、ガーベがされていた仕打ちについて伝えた。
深刻なことではないけど、少しでもガーベを救いたかったからだ。
カイルが村長に話しておくと言って、その夕食の話は終わった。
村長の家に帰る前、カイルに明日は村の休日だと教えてもらった。
ランタ達と相談し、昨日話したアマリという女性の家に綺麗な石を見に行くことに決めた。
食堂から出ると、二人の大人の後ろをついていくキレアとガーベの姿が見えた。
暗闇で見づらかったが、二人の顔は夕方のように笑ってはいなかった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
次回は休日ですね。これから物語が動いていきます。
ゆっくり投稿ですが、よろしくお願いします。