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世界はクロッカスを待ち望む  作者: カモミール
第一章サーハ村
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キレアの過去2

「あっ!あの・・・父は・・・父はどうなったんですか!?」


「あぁ、奴なら死んだよ。罪を告白した後、逃げようとしたのでな、まぁ当然の報いよな」


使いが無慈悲に告げる


「そんなっ・・・・」


キレアは膝をつき、地面に這いつくばった。


「おい、村長。領主様のお屋敷から盗まれたのは小さな緋色の宝玉だ。貴様らの手には余るだろう。見つければ即刻返すのだな」


使いはそう言いの残すと村長に背を向けた。


使いの言葉に瞳を限界まで見開いた。


住む場所を失った。


父を失った。


大好きな父だった。どこか抜けていて、頼りない感じもするのに、


それでも、家族を守ろうと必死に働いて。


死んだ母さんの代わりに、僕らを守ってくれた。


ただ、そんな父がなぜこんなことをしたのかが、全くわからなかった。


そんなことはするはずがないと信じたい自分がいた。


けれども、使いの言葉を聞いた時、否応無く、確信してしまった。


ポケットの中に手を入れる。


指先にはつやつやとした、丸い球体の感触。


父のいない間、家の中で見つけた。緋色の宝玉。


それが、父が捕まった原因を物語っていた。


父が何を思ってこんなことをしたのかはわからない。


わからない、が俺は父のことを激しく憎んだ。


使いが馬に乗り、領主の館へと戻っていく、


俺はやり場のない怒りや、悲しみをどこにぶつければいいのやら、


わからなくなっていた。


「にぃ・・・・」


ずっと村長の後ろに隠れていたガーベが涙目で袖をつかんでくる。


妹の顔を見た途端、頭に上っていた血が治まった。


父さんがいなくなった今、妹を守れるのは俺だけなんだ、


そう思った瞬間、自分がどんな顔をしているのか気になった。


顔を隠すように、ガーベを抱きしめる。


「大丈夫、大丈夫だ。お兄ちゃんがいる。心配するな」


抱きしめながら、彼女の頭を撫でてやり、村長の方に向き直った。


「村長さん・・・俺、働きます。に持ち運びでも鋤き込みでも何でもやりますだから、働かせてください」


村長は白いひげをなでながら、考え込むとキレアに伝えた。


「しかし、まだお前は年齢に達しておらん、村の規則ではまだ子供だ。住む場所は私が用意する、無理して働く必要はないと思うが・・・?」


「働かないと・・・家族を妹を守れません。俺が父さんの代わりになります。そうしないと・・・自分の気がおさまらないんです」


村長はしばらく、考え込むと小さなため息をついた。


「・・・わかった。キレアに働くことを認めよう。」


「ありがとうございます」


「だが・・・・キレア、これだけは覚えていなさい。働くことは大人になる事ではない。それをしっかり頭に入れておきなさい。


「・・・はい」


村長はそう言って、家の中に俺たちを招き入れた。


それからのことは村長が進めてくれた。


俺と妹はマリーという女性が選ばれた。


仕事も、その人の夫の担当を手伝うように言われた。


これでいい、俺は一人でもやっていける。俺が父さんの代わりになるんだ・・・


村長にお礼を言って、村長の家を出た。


マリーさんは村で農夫をしている女性でやさしそうな雰囲気を感じる。


マリーさんに挨拶を済ませた後、壊された自分の家に向かった。


ポケットから小さな珠玉を取り出す。


それは父に最後に言われた通り、引き出しを確認した時に見つけたものだ。


家の中の引き出しは二重底になっていて簡単にはみつけられないようになっていた・


「父さん、こんなもの・・・こんなもののためにっ、俺たち二人を危険にさらしたっていうのか」


使いが最後に言い残した言葉で疑惑は確信に変わった。


これを盗んだのは父さんで、だから殺されたのだ。


自業自得だが、なぜこんなことをしたのか、俺には理解できなかった。


そしてそれを考えるのもばかばかしくなって・・・やめた。


「こんなもの・・・こんなもののせいでっ」


この球が何なのかわからないが、父さんとの因縁を払うために、球を畑の方へと投げ捨てた。


そのまま自分の中で父さんの記憶に鍵をかけた。


二度と思い出さないように、二度と悲しまないように。




それから、の生活は外から見れば順調だったのかもしれない。


確かに次の年の徴収が厳しくなり、それぞれの蓄えを切り崩さなければならなかったが、


狩猟や薬草師などほかの仕事の人たちが協力し合い。


商人などから、物々交換をしながら、規定通りの量を納めることができた。


村の住民も一体となって成し遂げることができ、村人同士の交流は増えた。


ただ、俺たち二人を除いて、


村が聞きに陥った理由を作った俺たちは当然のように非難された。


頼りにしていたマリーさんが自分たちを守ってくれたかというと、そうではなかった。


彼女は自分に構ってくれない夫に対しての不満や苛立ちを俺にぶつけてきていた。


今回の村人の非難が免罪符となって、マリーさんの蛮行に拍車をかけたのだ。


マリーの夫は俺たちに興味がない様子で、仕事の話以外では話すこともなかった。


妹を守りたい、それは今でも変わらない。


だから、俺が苦しむのは構わない、マリーが俺だけをいじめてくる日が続いたが、そんなことはどうだっていい。


妹さえ守れれば、俺は十分なんだから。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

遅れて申し訳ないです。

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