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世界はクロッカスを待ち望む  作者: カモミール
第一章サーハ村
15/26

キレアとガーベ

「さっきのあの剣技はどこで習ったの?」


歩きながらデシコが聞いてくる。


「わからない、ただやられないないようにに必死になって、剣を振っていただけだよ、習ってはいない、と思うよ」


「そう・・・君の名前・・・なんだっけ?」


「えっ?アーネだけど・・・」


「アーネ・・・アーネか、覚えておく」


今まで覚えてすらいなかったんだね・・・


少し悲しみながらランタの後をついていく


今は訓練が終わってお昼ご飯を終え、訓練場に向かっているところだ。


「キレア!キレアじゃないか、おーいキレアー」


先頭で走っていた、カイルが道の向こうから歩いてくる少年の方に向かっていった。


キレアと呼ばれた少年は振り返り、カイルを見る


その肩には大きなかごが背負われていた。


「カイルさん・・・どうかしましたか?」


キルアははにかみながらカイルに対応する、その態度はどこか落ち着いていて、カイルよりも幼く見えるが、カイルより大人に見えた。


「キレアはこれから仕事?」


「はい・・・カイルさんは・・・ランタさんと訓練ですか?」


「そうなんだよー、でもランタと勝負に勝ったから、少ししたらそのあと遊べるんだー」


カイルの言葉を聞くとランタの肩がビクッと震えた。


あんな大見得切って負けのか・・・


いろんな意味で正反対だなぁ・・・この兄弟


「兄ちゃんを馬鹿にするのは許さない」


すぐ横にいたデシコに左耳をつねられた。



カイルとキレアの会話が続く。


「キレアも今日は仕事しないで、僕と遊びに行こうよ。僕からいってくからさ」


「ありがとうございます、でも大丈夫です。明日は休日ですし、しなけらばならないこともありますので・・・では」


「そうなんだ・・・うん、仕事がっばってね!キレアは偉いなぁ小さいころから仕事を始めて、尊敬するよ」


「いえ、私がやりたくてやっていることですので・・・あの方は?」


キレアがデシコに耳をつねられていたがっているアーネを指さす。


「あぁ、アーネだよ、村の外から来たんだ」


「そう・・・ですか、外から・・・」


キレアがアーネを見つめる目が鋭くなる。


「キレア?目が怖いよ?」


「あっすみません。では私はこれで、失礼します」


足早に戻っていくキレアに、カイルは少し違和感を覚えた。




「キレアってもう働いてるの?」


俺の疑問にランタが答えた。


「あぁ・・・本来ならば仕事を始める年齢が決められているんだが・・・本人からの強い要望があってな、畑の仕事をしてもらっている」


「カイルはまだ働く年齢じゃないの?」


「カイルは・・・村長の息子だからな、村があまり忙しくないのをいいことに、村長のはからいでまだ働いてないんだ。だからあんなにわがままに育ってしまった。ちょっとはキレアを見習ってほしいもんだ」


「おっと、そろそろつくな、カイルー今回だけだぞ・・・俺は森の入り口に待機しておく、あまり遠くには行くなよー」


「はーい、アーネも来るー?」


「アーネは僕と剣の練習・・・」


デシコは俺の服をがっちり掴んで離さない。


「デシコが誰かに興味を持つのは珍しいな、誰かと交流することはいいことだ」


ランタがデシコの頭をなでると、デシコは嬉しそうに「・・・うん」と返した。



訓練場の地面に背中を付ける。


デシコとの模擬戦で今度こそボッコボコに負けた俺は、そのまま脱力した。


何度目かもわからない酩酊の中、デシコが休憩とばかりに話し始める。


「僕の剣は、ある人から受け継いだものなんだ。生まれたときから鍛えられ、ここまで強くなった。君の剣には、何かあの人に通じるものを感じる。だから・・・」


「これからも、付き合ってほしい」


息も絶え絶えになりながら了承の意を伝えると、


「・・・ありがとう」


デシコは立ち上がると訓練場の出口に向かって歩き始めた。


「僕はランタ達を呼んでくるね。アーネはまっすぐ食堂に戻っていいよ」


「・・・わかった」


デシコに短くそう伝える。


デシコが訓練場から見えなくなってからゆっくり立ち上がった。


「敵わないなぁ・・・けどデシコの言ってたある人って誰だろう?僕の失われた記憶の中に答えはあるのかな?」


「地道に探すしかないだろうな」


久々にユピテルが顔をだす。


「そうだね、頑張っていこう」


木剣をもと合ったところに戻し、訓練場を後にする。


食堂までの道のりを歩いていると、一人の少女が井戸で大きな桶で水を汲んでいるのが見えた。


それは少女が持つには大きすぎるようで、少しよろめきながらも、危なっかしく運んでいた。


すると近くで話をしていた女性は少女の担いでいる桶に手を置いて、その手を勢いよく押し出した。


桶の水が勢いよく零れ落ちる。


「あははっ早くしなさい、もう日が暮れてしまうわよ、早くそれを家にもっていって、そしたら次は洗濯よ終わるまで食堂に来てはいけませんからね。わかったかしら、だったら早く汲みなおしなさい」


つかつかと食堂の方に入っていく女性と入れ違いに、おれが少女に近づく、少女は小さな腕を一生懸命に使って、井戸から水を汲みだしていた。


黙ってそれを手伝う、大丈夫?と声をかけると少女は驚いた様子で、こちらを見た。


「おにいちゃん、誰?」


「俺はアーネ、君の名前は?」


「私は・・・ガーベ」

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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