村を散策
「こっちが農園、ほとんどはあそこで働いているが、秀でた能力を持つ者は別の仕事をしている。例えば君が話していたエキザさんは村の薬師、イカリは狩人を生業としている。」
ランタが指をさしながらどこに何があるか教えてくれる。
「エキザとイカリさんは夫婦なんだよー」
やけに二人の距離が近いと思ったら、そうだったのか
ランタが村人についての説明をし、そっれにカイルが情報を付け加えた。
歩きながら二人に相槌を打って村の中を歩きまわった。
家の数は数十棟ほどで村の西には広い段々畑がある。
ほとんどはそこで領主へ献上する、作物を育てている。
しかし、エキザやイカリのように特別な人間は、ほかの職種で働いており、村の経営を支えている。
「ここはコルル王国のひとつの領地なんだよ」
カイルが自慢げに言うとランタが訂正する。
「カイル、前にも言っただろう・・・ここのコ・ル・ロ王国だ。何度言えばいいんだ全く」
「兄ちゃん、間違ってる。ここはコロル王国・・・・」
「あっ!?そうだったか?忘れてしまったな・・・」
デシコがなだめるように最終的に訂正した。
「自分の国の名前も知らないの?」
びっくりして2人に聞くと、
「知っている!わっ忘れてただけだぁ!」
「僕はもう覚えてないよーこの村にいる限り、僕たちに覚える必要なんてないもんねー」
「カイルっ!お前はもっと覚える努力をしろっ大体、君はどうなんだアーネっ!」
カイルを軽く叱ってから、コホンと咳払いをしたランタが反論する。
質問を返されて困ってしまった。
「えっ・・・えぇっと・・・」
「ほれ見たことか、思い出せないじゃないか」
「おーじゃあ元々はアーネも農民だったんだ、そういえばどこから来たか、まだ聞いてなかったよね?」
「あー・・・えぇっとぉー」
ユピテルッユピテルッどっどうしたらいいと思う!?
「知らん、自分で誤魔化せ、我は疲れた」
ユピテルッーー
俺が答えられないでいるとランタとカイルが興味深そうに顔を近づけてくる。
デシコはあまり興味はないのか離れたところであくびをしていた。
どうしよう・・・
「あらあらっ?みんな揃ってどうしたの?」
ランタとカイルに追い込まれているところに一人の女性が話しかけてくる。
見てみるとごく普通の村人のようで頭に日よけの帽子をかぶって手には小さめのかごを持っていた。
いかにも噂好きのおばちゃんといったところだろうか。
ただ、この村では特別、お金持ちなのか、小さな石を紐で通して作ったネックレスのようなものを首から下げていた。
「アマリさん。ほらっ、カイルお前が森に行ったのを教えてくれたのはアマリさんなんだぞ、きちんとお礼を言っておけ」
「アマリさん、こんにちわ、ランタ達を呼んでくれてありがとうございます」
カイルがぺこりとお辞儀をする。
「まぁまぁ、いいのよ?私はついでにランタ達に伝えただけなんだから」
「あら?初めて見る子ね。名前は何て言うの?」
「アーネです」
「まぁ、アーネちゃん私はアマリよ、この村で畑作業を手伝っているの」
他の人と同じ農民ならなぜ、目の前の彼女だけ裕福そうなのだろうか、疑問に思っていると
それを感じ取ったのか、アマリが答えを教えてくれた。
「このネックレスが気になるの?これはこの辺りに落ちている石を磨いて作っているの宝石ほど鮮やかではないけれど、きれいでしょう?こんな村だからおしゃれするのも一苦労でね、形ばかりだけれどこんなものを作っているの」
「ほんとにアマリさんはきらきらするもの好きだよね」
「確か、昔来た貴族のお嬢さまの首についてたのを見てから、好きになったんでしたよね」
アマリのきれいな石を集める趣味に驚いたが、女性としてはオシャレに気を遣うのは普通なのかな?と思った。
「そういえば聞いてくれる?さっき新しく綺麗な石を拾ったのよ、あれは私が見つけてきた中でも一番きれいな輝きだったわ!」
石のことになると話が白熱するのか、頬を上気させながらご機嫌に離すアマリ。
「アーネちゃんも機会があったら私の家によって頂戴ね?その石を見せてあげるわ」
「はい、ありがとう・・・ございます」
離したいことを話し終わったからか足早にアマリは去っていた。
それからは、村の中を回り、夕飯をカイルと一緒に食べてから村長の家に向かった。
「アーネはここで寝て、僕の隣だけど、嫌かな?」
カイルは男の子だ、何を心配するのだろうか、
「大丈夫だよ」
そう答え、カイルと一緒にシーツをひいた。
「カイルウウウウ?今日も一緒に寝るぞオオオオオィ!」
仕事を終わらせてきたのだろうか、村長が部屋の中に上機嫌で入ってきた。
「じいちゃんは外で寝て」
村長がカイルの冷たい一言で切り捨てられる。
「ヒドゥイ・・・・」
とぼとぼ部屋を後にする村長は悲しみの表情を浮かべていた。
「大丈夫なの?ここって村長さんの寝るところなんじゃ・・・?」
「大丈夫。じいちゃんは自分の寝室があるから」
「それより、アーネにずっと聞きたかったことがあったんだ」
カイルの表情が真剣さを増す、
窓から差す薄い月明かりに照らされたカイルが俺の方に向き直る。
「アーネって魔法が使えるの?」
じっと見つめるカイルの視線が言い逃れはできないと告げていた。
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