第9話 同じ気持ち
商人のエティゴーヤと言うおっさんが家にいた。
夜だし……泊まる気満々だ。
どうでも良いけど、今日の晩御飯は、何?
エティゴーヤと明日、ハーヴェストの町に行く事になった。
つまり、今日、コイツを我が家に宿泊させると言う事だ。
そして、宿泊させると言う事は……
「これは、何とも旨そうな匂いですなぁ!」
エティゴーヤがデカい声で言った。
そう……宿泊するって事は、晩飯も一緒に食うと言う事!
食卓を囲む、父さん、母さん、キャスカ、そして俺と、エティゴーヤ。
「……」
なぜ、俺の隣にエティゴーヤを着席させた?
狭いよ!
「お兄ちゃん、どうしたの?」
キャスカが言った。
おっと、危ない危ない……不満が顔に出ていたようだな。
気をつけねば…… 食事させるのが嫌だとか、心が狭い、小さい男だと思われちまう。
いや、俺は、お客さんが食事するのは、全然大丈夫なんですよ。
だだ、それは、普段のはなしであって……今日は、ダメなんだよ……
俺の大好物である、すき焼きだから!
博人は、ニコニコしているエティゴーヤを見る。
……だって、凄く食べそうじゃん、コイツ!
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「さぁ、煮えてきましたよ! エティゴーヤさん、器を貸してください」
父さんが、エティゴーヤの器をもらい、その中に、生卵を落として、軽くかき混ぜてから、器をエティゴーヤに返した。
「俊夫殿、その……大丈夫なのでしょうか?」
エティゴーヤが、生卵を前にして、戸惑っている……
そうか、生卵は、他の国じゃあんまり食べないって聞いた事がある! ここ異世界でもそうなのか?!
人間、無理はいけない。
「エティゴーヤさん、無理する事、ありませんよ、この、漬物など美味しいですよ」
俺は、優しさ一杯、満面の笑みで、コイツに漬物を進めた。
「ハハハ、そうですね、私の国以外、生卵をあまり食さないですから、まぁ、騙されたと思って、こうやって一口食べてみてくださいよ」
父さんが、肉を取って、生卵にディップして食べて見せた。
ッチ!
……余計な事を!
「よ、よし、商人たるもの、チャレンジ精神がないといけませんからな! いっ、いざ!」
出さんでいい! そんな勇気!
そんな俺の心も知らず、エティゴーヤが、勇気をだして、フォークを鍋へ投入し肉を取った。
そんなに!
ちゃぽん……
エティゴーヤが、器の生卵に肉を絡めて、持ち上げる……ジッと肉を見て、口に……入れた!
「ぅまぁぁぁーーーい! 何コレ!」
エティゴーヤが……
終わった……
こうなったら、コイツに注目してる場合じゃねぇ! 俺も、早く肉を食わねば!
「坊ちゃんのお母さんは、料理が上手ですなぁ、こんな旨い料理、王都でもたべれますまい! いやー羨ましい!」
俺が、鍋から肉を取ろうとしたところにエティゴーヤが、俺に話しかけてきた。
嫌がらせか?
「ハハ……良かったね、母さん、褒められたよ」
満足か? 俺は、肉を食うぞ!
「坊っちゃん! このエティゴーヤにお任せあれ!」
は?
エティゴーヤが、自分のフォークで俺の器に、すき焼きをよそってくれた。
うわぁぁぁ……
他人の口にしたフォークで……少し気分が悪くなったが、良かれと思っての行動なので、怒るに怒れない……
「ささ、美味しいですぞ」
「あ、ありがとうございます」
言いたくないお礼を言って、俺は、エティゴーヤがよそってくれた器を手に取る。
やっと肉が食べれるし、我慢だ……
あれ?
白菜に白滝、そして春菊と豆腐……肉は?
「いやぁー旨いですなぁー!」
( このガキは、沢山食いそうだからな )
エティゴーヤが肉を頬張って言った。
その、幸せそうな顔をぶん殴ってやりたい。
「朱美さんの作る料理は、どれもとっても美味しいんだから!」
キャスカが、笑顔でエティゴーヤに母さんの自慢をして……ホントに優しい子だ事!
沢山肉を食べるんだよ。
俺は、暖かい気持ちになった。
「キャスカったら! まったく、子供って、正直で困っちゃいますわね、オホホ」
母さんが全く困った様子無く言っている。
そして俺は、白菜や豆腐など、自分の器の中の食材を片付けた! さぁ、肉だ!
「おっ、坊っちゃん、器が! エティゴーヤにお任せあれ!」
( なんだよ、もう食っちまったのか? 肉など、100年早い )
エティゴーヤの手が俺の器に伸びてきた!
ガッ!
俺は、すかさずエティゴーヤの手を掴む!
「ハ・ハ・ハ…… エティゴーヤさんは、お客さんなんだから、お気になさらずに、それより、僕が、取ってあげますよ」
俺は、素早くエティゴーヤの器を取って、豆腐、豆腐、春菊、白菜、白菜、白菜を取ってあげた。
「さぁ、どうぞ! 沢山食べてくださいね」
( 野菜でも食ってろ! )
笑顔の俺。
「……いやぁ、もうしわけないなぁ」
( さっきの仕返しか?クソガキが! )
笑顔のエティゴーヤ。
「珍しいわね、博人が初めての人とそんなに仲良くするなんて」
朱美は、微笑み合う博人とエティゴーヤをみて言った。
俺は、今の内とばかりに、自分の器に肉を投入していく!
エティゴーヤが、フォークを鍋に入れようと!
「エティゴーヤさん! 自分の器を空にしてから、次の具を取ってください!」
( 肉ばっかり食いやがって )
俺は、エティゴーヤに言って、肉を取る!
「……」
( クソガキ! 俺に、肉を食わせない気だな )
エティゴーヤが、フォークを自分の器に移して豆腐や白菜を、勢いよく食べだした!
流石に、食卓を囲むみんなが、俺とエティゴーヤの様子に気づいて、自分の肉を確保するため、勢いよくすき焼きの肉が消費されていった……
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俺の部屋ーー
「なんだよ! あの、おっさん! 遠慮が無いと言うか…… なぁ、キャスカ!」
俺は、ベッドの上に座って言った!
「お兄ちゃん、大人げないよ」
キャスカに言われたが、俺は未成年、子供なので、大人げなくて当たり前だ!
俺は、頭に手をやって、ベッドに横になって考えた。
まぁ、俺が考える事って言ったらキャスカの事に決まってる。
「なぁ、キャスカ、お前、弟でいいの?」
ずっと、男のフリをするのかを聞いた。
「……朱美さんも、俊夫さんも良い人達だと思うけど……( 養子になるか )迷ってる」
キャスカが言った!、
女だと言うのが遅れて、父さんや母さんに言い出しにくいのは解るが……迷う事ないんじゃないか?
「無理しないで良いんだぞ、……父さんや母さんがどんな反応示すかなんて考えなくて、自分に正直になれば良いんじゃないか?
まぁ、隠さないでも、俺は、( お前が女だと )知ってるけどね」
どさくさ紛れに、キャスカが女だと知っている事を伝えた……
「え? お兄ちゃん、私の気持ちに気づいてたの?」
気持ち?
気持ちって……
そうか、そうだったのか!
俺は、体を起こして、キャスカを見つめる。
「ああ、俺もお前と、同じ気持ちだ……出会って、まだ間もないけど、こんな事って、時間じゃないんじゃないか?」
まさか……キャスカが俺の事を好きだったとは……
「……でも、お兄ちゃんは、良いの? こんな僕で」
上目遣いで言ったキャスカを直ぐにでも抱きしめたい衝動にかられる。
だが、焦って嫌われたらお終いだから、必死で……我慢だ!
「ああ、キャスカだから……いや、キャスカじゃないと、ダメなんだ……明日、父さんと母さんに言おう」
爽やかに俺は、言った。
キャスカは、うん、悩んでいるようだ……頑張れ、キャスカ。
「そんじゃ、先に俺、風呂入ってくるわ!」
そう言って、俺は、部屋を出た……
顔がニヤけて、こんな顔、キャスカに見せらんない。
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お風呂ーー
ブクブクブク……
浴槽に博人が潜っていて、水面に泡が浮かび上がる。
ウヒョーー! 初めての彼女が、あんな美少女とは……俺は、世界一の幸せ者だぜ!
いや! 俺が、キャスカを世界一の幸せ者にしてあげるんだ!
ザバァーー!
「キャスカ、愛してるよ!」
キリっとして俺は、言ってみた。
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そして、次の日ーー
「それでは、先に、向かってますんで、俊夫殿達も早く追ってきてくださいよ」
父さんが、玄関で、エティゴーヤを見送っていた。
ハーヴェストの町に行くための準備をすませた後、俺とキャスカは、父さんと母さんに大事な話があると言って、エティゴーヤに先発してもらったのだ。
「なんだ、話って? エティゴーヤさんを追うから、手短にな」
父さんが俺とキャスカに言った。
俺とキャスカが顔を見合わせ、頷いた。
さぁ、二人の関係を、父さん達に伝えよう!
「父さん、母さん……実は……」
「お兄ちゃん、僕から、言うよ!」
俺が言おうと思ったのだが……キャスカも必死なんだな、ああ、頼んだぞ!
「僕は、まだ、お父さんの事を…… だから、朱美さんや俊夫さんをお父さん、お母さんと……今は、呼べないけど…… 一緒にいたいです! 家族になりたいです!」
……キャスカ、そんなんじゃ、回りくどいぞ! 博人のお嫁さんになって、家族になりたいです! だろ?
ヤレヤレと思いつつ、俺が言おうとした時、
「何言ってんだキャスカ、お前は、この家に来た日から、もう俺達の家族じゃないか」
「そうよ、博人も、弟が出来たって喜んでるみたいだし、今も、お兄ちゃんとしてキャスカの事を心配して一緒にお父さんに言ったんでしょ?」
父さん、母さん……それは、勘違いだ!
キャスカ! 言ってやれ!
「うん! 養子になるの迷って僕を、お兄ちゃんが、後押ししてくれたんだ!」
キャスカが、嬉しそうに、涙なんか流しちゃって……
うん。
何を言い出すんだ?
俺の事を好きで、付き合うって話だったんじゃないの?
こうして、キャスカが正式に俺達の家族になった。
……俺の弟として。
みんなが嬉しそうに抱き合ってる。
……うぅぅ、マジで泣きたくなってきた。
俺とキャスカは結ばれた。
家族、兄弟として。
俺が望んでたのは、お嫁さん的な、イチャイチャ的な展開だ!
良いよ! もう! もっと可愛い女の子見つけてやるんだ!
って事で、次回も、乞うご期待!




