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第8話 よこしまな考えと屁理屈

自宅にエティゴーヤが到着する前の話。

そう、俺達は、ラビリオの村に行った時から話は、始まる……


 自宅にエティゴーヤが訪問する少し前の話だが、俺達は、ラビリオの村に到着していた。


 車は少し遠くに駐車してある。

 徒歩で村に入ったのだ。

 そう、要らぬイザコザを避ける為にって訳でね。


 ラビリオの村は、点在する家は……豪勢な屋敷は少ないようで、多くが木造建築の家だ。

 行った事など無いが、ヨーロッパの田舎の村ってイメージだ。


「キャスカは、この村にきた事があるの?」

「……お父さんと、この前泊まった」

  俺の質問に暗い顔で答えたキャスカ……

 ごめんね、辛い思いでを思い出させちゃって!

 ったく! 盗賊といい、この村といい、キャスカを悲しませないでもらいたいもんだ!

 まぁ、どっちも俺の言い掛かり的、八つ当たりなのだろうがな。


「博人、キャスカのそばにいてやれ」

 父さんが、俺に言うと、さっさと歩いて行ってしまった。


 うん、勝手な人だ。


 さてと……

 村の中で置き去りにされた俺達だが……どうしよう。


「博人お兄ちゃん」

 キャスカが不安そうに、俺を見ているし……ホントに、どうしよう……



 ん?

 ……待てよ!


 この状況で、俺が、お兄ちゃんらしい所……いや、男らしいところを見せれば、キャスカに好意をもってもらえるんじゃないかしら! いや、きっとそうだ!

 大体、一人っ子の俺が、お兄ちゃんらしくって言ってもわかんねぇしな、取りあえず、カッコよく、リードして引っ張って行けば……

 ウヒヒ……


「ひ、博人お兄ちゃん……怖いんですけど」

 ニヤニヤしている、博人を見てキャスカは引いて言った。


 よっしゃ!

「あーー、キャスカ、何かして欲しい事とかないか? ん?」

「え? ……無いけど…」

 唐突に言われて困惑したキャスカ。

 そう言えば、町田家の人間は、押しが強いのか、厚かましいのか……とにかく、何でも勝手に決めてく傾向がある。

 そんな風に、短い期間で町田家の傾向を感じ取ったキャスカであるが、同時に天涯孤独になった自分みたいな人間を心配して、家族と言ってくれる町田家を好きになっていた。

 そう、気持ち悪い笑い顔でウヒウヒ言っている博人もきっと、自分の為に何かしなきゃって思ってくれてて、言ってくれているのだろう……ありがたい事だ。

 

 キャスカは、笑顔で博人を見た。



 何? 可愛いんですけど……

 キャスカが、俺に笑顔を返してくれた。

 もしかして、そう言う事?

 俺の事が好き的な?


 ……ないな。

 考えてもみろ、俺。

 これまでの人生、16年間……女の方から好きになってもらった事があったか?

 フフフ、油断するところだったぜ……これが、魔性の女って奴か!


 博人は、勝手に一人納得した。


「お茶でもしようか?」

 俺は、キャスカの手を引いてその辺の食堂か喫茶店か解らないけど、店に入ろうと思う。

 そこで、ゆっくりとお話をして、知ってもらいたいんだ。


 俺が、いかに誠実で素晴らしい男かを!


 博人は、自己評価が高かった。


 ラビリオの村、唯一の飲食店「ルイーザ」


「中々素敵な店じゃない」

 適当に言って、席に着く。


「……博人お兄ちゃん、大丈夫なの?」

 キャスカが心配そうに言ってきたが、何が?


「へい! マスター、メニュープリーズ!」

 俺は、颯爽とカッコよく言った。

 

「フフフ、キャスカ、好きな物を頼みなよ! お兄ちゃんのおごりだ」

 経済力をさりげなくアピールしつつ言うと、奥からババァが俺達の席にきた。

 店名のルイーザって、このババァか?

 どうでもいいけど。

 俺は、ババァが持ってきたメニューを見る……



 ……料理名が書いてあるのだろうが……どんな料理なのか全く、想像がつかない。

 日本語じゃないのに読めるのも不思議だが……そんな些細な事より、ここは、スマートに注文をしてだな……

 って、キャスカは、悩んでるみたいだけど、どんな料理なのか解ってみてんのか?


 まぁ……何とかなるだろ?


「キャスカ、決まったか?」

「……うん、ウェルチャスにする」

 ……なんだ、ウェルチャスって? 全くわかんないぞ。

 飲み物なのか、食べ物なのか? 何なのソレ!


「ふうん、ウェルッチね、そんなので良いの? もっと、良いの頼めばいいのに」

 全く想像出来ないが、適当に、知ったかして言った。


「へい、おばあさん! 注文だ!」

 俺は、ババァを呼んだ。



「坊や達、注文が決まったかい?」

「ああ、こっちのキャスカには、ウェ、ウェル……」

 なんだっけ?

「ウェルチャスだよ」

 キャスカが言ってくれた。

「そう、それね! 後、俺だけど……コレかな!」

 俺は、メニューを適当に指さした。

「えっ!」

 ババァが、驚いた様子で言った。

 なんだよ?!

 キャスカを見ると、目を見開いていた……


 うん。


「違う! 間違いだ! こっちだった! ハハハ」

 危険を感知した俺は、すかさず、注文を変更する!


 ……いいんだよな?


 あからさまに、ババァとキャスカがホッとした表情に変わったので、こっちの選択は正しかったのだと思う俺。

 ……良いんだよな?

 最初に選択したのは、一体なんだったんだよ……


「お兄ちゃん、ありがとう」

 眩しい笑顔で言ってきたキャスカを抱きしめたかったが、頭がおかしいと思われてもアレなので、やめた。


「キャスカ……博人って呼び捨てでも……いいんだよ。 ほら、俺は、フレンドリーだから!」

 お兄ちゃんって呼ばれるのもいいが……こ、恋人同士になるなら……


 博人が思うのは勝手だが、キャスカは、恋愛感情的なものは無い。


「ううん、呼び捨てなんて出来ないよ」

 キャスカに言われ、嬉しいけど、残念だと思ったが、焦ってはいけない。

「それより、お兄ちゃん、お金あるの?」

「バカ、子供が金の心配するんじゃないよ!」

 フフフ、財布に5千円くらい入ってますよ! ってんだ。


 俺が、そんな風にキャスカを見ていると、俺達より前に店に居た酔っ払いが近づいてきた。


「可愛い坊主だなぁ、女の子みたいじゃねぇか! こっち来て、一緒に飲もう」

 なんと、解りやすい絡み方をしてきた酔っ払いめ!

 って、キャスカに触れようと!


「やめろ! 俺のキャスカに触れるんじゃねぇ!」

 気づいたら、立ち上がって、言ってた。

 酔っ払いは、二名。

 スキンヘッドとモヒカンだ。

 世紀末じゃないのに……

 どうでもいいが、二人とも肉体労働者なのか、ムッキムキだ。


「あぁぁん? なんだ、小僧? 文句あんのか?」

 スキンヘッドが言ってきた。

 怖えぇぇぇ!


「お、弟に触れないでくださいよ……」

 俺は、勇気を振り絞って言った。

 ……てか、俺は、悪くないし、なんで敬語?


「んん~? 似てねぇじゃねぇか?」

 モヒカンが言った。


「うるせぇな、邪魔だから、向こう行けって言ってあげてるんですよ」

 俺は、丁重に断る。

 だんだん腹が立ってきた。


「あんたら、子供相手に、何してんだい?!」

 おばあ様が、加勢に来てくれた!

 俺は、最初から、感じの良いおばあ様と思っていたが、ありがとう!


「うるせぇ!」


ドンッ!

 モヒカンが、おばあ様を突き飛ばした!

 何してんだ!


「ひぇぇぇぇーー!」

 ババァが、奥に逃げた。

 クソババァ! 役に立たねぇな!

 ……だが、俺の我慢も限界だ。


「外に出な……」

 俺は、スキンヘッドとモヒカンに言って、店を出る。

「なんだと、クソガキが!」

 ちゃんと二人とも、俺についてきてくれたので、ホッとした。


「お、お兄ちゃん……」

 キャスカが、俺を心配してくれているようだ。

 なんか……なんか、嬉しい。


 自慢じゃないが、俺は、武道に心得がある。

 中学の頃から、体育の授業で、柔道をしてるし、高校で剣道の授業もあるのだ。

 喧嘩など、した事が無いが……降りかかる火の粉は、払わねばなるまい!


 店の外、俺の目の前に二人の悪者。


「このクソガキ! 痛い目に合わせてや」

「待て!」

 俺は、二人に言った。


「なんだ! 怖気づいたのか?!」

 スキンヘッドが言ったが、バカめ!


「俺も、(キャスカとイチャイチャしたくて)暇じゃないんでね……、お前らのどっちか、強い方とやるから、強い方が前に出ろ」

 スキンヘッドと、モヒカンが同時に前に出る。

 なんじゃ、そりゃ?

 

「おい、ハゲ……なんで、前に出る?」

「いや、俺の方が強いでしょ?」

「はぁ? お前、俺より弱いじゃん」

「いやいや、何言ってるの? 冗談は、髪型だけにしとけよ」

「なんだと、この野郎! 髪型以前に髪が無いくせに!」

「ふざけんなよ、この野郎! ぶっ殺すぞ!」


 なんか、二人で揉め出した。

 邪魔しちゃ悪いので、店に戻ろう……


「待て待て待て! 何、しれっと帰ろうとしてるの、お前」

 スキンヘッドに呼び止められた。

「いや、揉めてるみたいだから……」

 そう言う訳で、俺は退散させてもら

「おかしいでしょ? そもそも、お前が外に出ろって言ったんでしょうが?!」

 うん。

「じゃぁ、あんたが強い方で良いの?」

 スキンヘッドに言った。

「おうよ!」

「ちょっと、待てよ! ふざけんなよ、この野郎!」

 モヒカンが割って入る。

 もう、めんどくさいなぁ!


「お前ら! 言い争いは、やめろ! いい大人が、往来で、みっともない! 考えてもみなさいよ、強さってなんなの?」

 俺は、二人に問う!

「そりゃぁ、腕っぷしが強いって事だろう!」

 モヒカンが、言った……まったく……残念だよ!

 俺は、二人を見据える。

「馬鹿野郎! お前がいくら腕っぷしが強かろうが、そんなもの強さじゃねぇ! 考えてもみろ! お前が強いからって、ドラゴンに勝てるか? いや、完全武装した騎士団にすら勝てるのか? 違うだろ?」

 言ってやった。

「何が言いてぇんだ、てめぇ!」

 モヒカンとスキンヘッドが……仕方のない奴等だ。

「本当の強さって奴はな、人を動かす、そんな器のデカさを言うんだ! お前達が小さなコミュニティでイキがってても、本当の強さ、そう! 権力者から見たら、ゴミくず、虫けら同然だ! 悔しくないのかお前達!」

 俺は、力の限りデカい声で言った!


「……悔しいさ! 先生、俺は、どうしたらいいのさ?!」

 モヒカンが言った。




 そうか……

 って、マジかよ! 俺の与太話に食いついた?! いや、自分で言ったんだけど……父さんが戻るまでの時間稼ぎ程度に思っていたのに!


「いや、アレだ……そう! 地域に貢献してだな、そうすれば、ほら、人望? とか出来て……うん、村長とかになれるんじゃ、ないんですか?」

 適当に言った。


「……村長……こんな、俺が?!」

 なんか、このモヒカンが言ってる。

「お前なら、出来るって!」

 モヒカンにスキンヘッドが言った。

 二人して感極まった感じで泣いてるし……マジか!


「……先生、俺、目標が出来たよ… まずは、村の清掃からやってみようと思うんだけど、どうかな……へへっ」

 照れくさそうにモヒカンが言った。

「……うん、いいんじゃないですか? 俺、もう行くんで……」  

 俺は、モヒカンに言って、店に戻る事にした。


ブロロローー……


 父さんが、村での情報収集を終えたので、俺達は、自宅への帰路についた。

 なんか、非常に疲れた。

 キャスカとイチャイチャしたり、良いところを見せたかったのに……

 店で、日本円が使えなくて困ったが、酔っ払いを追い払った礼だと、ばあさんが、許してくれたが、危うく無銭飲食になるところだったし……

 カッコ悪いったら、ありゃしない。


 情けないなと思いながら、外をボケっと眺めていた。


「お兄ちゃん、ありがとうね」

 

 ん? キャスカが言ったが、なんだろね?

 俺は、自分が情けなくて、黙ったまま外の景色を見ていた。



 俺達は、自宅に到着した。


 ……家の前に馬車が止まっているが、なんだコレ?


 もう、辺りは真っ暗だし、お腹が空いた。

 とにかく疲れた。


「ただいまー、朱美、帰ったぞー!」

 父さんが、元気に言ったが、俺は、無言で家に入る。


「おおーー、ご主人! おかえりなさい……って、貴方は!」

 父さんを見て、小太りの髭の親父が驚いている。

 だれだ、てめぇ、人の家で……

「なんで、あんたが、家に!」

 父さんが言っ、知り合い?! って、事は、この小太りのが、エティゴーヤか!


 てか、何で家に上げてるんだよ、母さん!

 俺は、リビングにいる母さんを見た。



「まさか、俊夫殿のお宅だとは……これは、正に、神の思し召しですな!」

「エティゴーヤさん、どうして家にいるんですか?」

 父さんが、不思議そうに聞いた。

「今まで無かった家が、突如あったので、不思議に思って訪問させていただいたのですが……奥様が招待してくださったのです!」

 

「母さん……父さんが居ないのに、良かったの?」

 リビングにいる父さんとエティゴーヤを見ながら、キッチンの母さんに小声で聞いたが、いいからとだけ答えられた。 

 キャスカは、母さんからもらったジュースを美味しそうに飲んでいる。


「この度は、貴重な物を分けていただいて、申し訳ない!」

 エティゴーヤが、父さんに胡椒の瓶を見せている……

 母さんが、余計な事を言うなと言う顔をしている。


「胡椒? そんなもん…… 貴重なものです」

 父さんが、母さんの物凄い顔に気づいて、言った……


「しかも……私のような、一見の商人に……奥様は、代金は、後日で良いと、この貴重な、胡椒を分けてくださったのです! このエティゴーヤ、感服いたしました! 明日、一緒に店に来てください! 出来るだけの金額で買い取させていただきます!」

 エティゴーヤが目に涙をためて感謝している。


 あぁ、母さん……


 人は、こんなに悪い顔が出来るのかと、母さんの顔を見て思った。 

母さん……

普通にスーパーで買える胡椒を高く売りつけるつもりだな……

きっと、そうだ。

あの顔を見ればわかる。

そんな些細な事より、俺がキャスカに良いところを見せて、好意をもってもらえるのは、いつになるのだろうか……

って事で、次回も、乞うご期待!

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