第33話 シンディー
俺は、母さんのワンボックスカーを颯爽と運転する。
運転するのは初めてだが、筋が良いらしく、まだ2回しかぶつけていない……
俺は絶賛無免許運転中だが、異世界なので捕まる事も無いだろう。
「どうだ、キャスカ、俺の運転もたいしたもんだろう!」
自慢気に助手席のキャスカに語り掛けるカッコいい俺。
「う、うん。 いいから、前見て運転しないと、またぶつけるよ」
「大丈夫だって、さっきのは、初めての運転で緊張してたからだから! もう、慣れた。 大丈夫だ」
細かい事を覚えているキャスカに言って、安心させてあげる嫁想いの夫だ俺は。
フフフ、しかし、キャスカとドライブとは……最高じゃないか!
ブロロローー……
時速40㎞程でトロトロ走るワンボックスカーだが、運転する博人は初心者なので、体感的にすごいスピードを出している気になっていた。
「ね、ねぇ、開けた道に出たんだし、もう少しスピード上げた方が……」
こんなにスピード出してるのに、キャスカが俺に言ってきた。
「お、おう」
無茶を言う嫁だが、がっかりさせたくない俺は、アクセルを踏み込む決断を下す!
メーターが時速50㎞を指した。
「こ、怖くないか? 怖かったら言うんだぞ!」
俺は、必死に前を見ながら言った!
「う、うん、大丈夫だけど……」
キャスカは、俊夫達の車に追いつくのは絶望的だと思った。
気分を変えようと車窓から外を眺めるキャスカの目に綺麗な花が咲いている場所が見えた。
「あっ、見て博人! 綺麗な花が咲いてるよ」
教えてあげるキャスカだったが……
「ばかッ! 横なんて見てる余裕ないよ!」
思わず大きな声を出した博人。
「ご、ごめんっ!」
ビクッとなったキャスカが答えた。
良かれと思って言ったのに、兎に角、博人は余裕が無かった。
大きな声を出してしまい……なんか、気まずくなって、俺は、ますます喋らなくなった。
当然、キャスカも静かになってしまった……
だが、余裕の無い俺は運転に集中していた為、やがてその事も気にならなくなっていった。
「……」
「……」
無言のドライブが暫く続いた……
「あ、あの、キャスカ…… ちょっと、休憩しようか?」
真剣に運転に集中していたが、おしっこもしたくなったし。
「え? あ、……うん」
答えたキャスカの様子が変だな。
そう言えば、キャスカと暫く会話してなかった事に気づく。
いくら余裕が無いからって…… 俺は、馬鹿だ。
「キャスカ、ごめんな、運転に集中しすぎて肩に力が入りすぎてたみたいだったね」
「……ううん、博人が一生懸命だったから邪魔しないように静かにしようって思ってたから」
うん。
つまんなかっただろうに……
バカな俺には勿体無い、最高の嫁じゃないか!
先程から嫁嫁言ってるが、別にまだ結婚した訳ではない。
自分の馬鹿さ加減に気づいた俺は、なんだが、肩の力が抜けた。
キャスカに良いところを見せようと必要以上に運転に緊張してたみたいだ。
大きな声を出したり、黙ってたり…… 馬鹿だな、俺って。
あっ!
「見ろよ、キャスカ! 虹だ! そこの丘に行ってみようぜ!」
そう言って、虹が見える丘に俺は車を停めた。
キャスカと車外にでて、見晴らしの良い丘を歩いていく。
「キャスカ、さっきは、大きな声を出してごめんね」
「ううん、でも、博人らしくなくて、ビックリした」
やっぱ、少しは気にしてたんだ。
うう…… こんなんじゃ、嫌われてしまう。
泣きそうな顔になってるんじゃないか、俺?
「見て! 博人、虹があんなに大きい!」
キャスカが言った。
俺は、顔を上げて見上げると、大きな虹が見えた。
クッキリと七色に見えた虹が、とても綺麗だった。
こうして、二人で綺麗な景色を眺めていると、この世界が終わりに向かっているなど忘れてしまいそうになる。
ガサガサ……
世界は、平和だ。
うん、争い合うなんて、バカバカしくなってくるな。
などと思いつつ、俺は、キャスカの肩に手を……
ヒュッ!
「へ?」
俺がキャスカの肩に手を回そうとした時、俺の頬を何かがかすっていった。
なんだろ?
俺は、頬を手で触ってみ
「血ーーッ?」
手にべっとりと血が付いていた。
「博人、後ろ!」
俺が自分の頬から血が出ている事に驚いていると、キャスカが叫んだ!
……後ろ?
「うわあああっ!」
大きな仮面をつけた奴が、こちらに弓を構えて立っていた。
なんなの?!
取り敢えず俺は、手を上げて、抵抗の意思が無い事を知らせる!
キャスカも俺を真似て手を上げる。
「動くな! 動くと、撃つ!」
仮面の奴が言った。
いや、もう撃ったじゃん! と思ったが……
女か?
露出が激しい衣装だな……
おっぱいも、デカい。
いや、俺は、攻撃してきた奴に対して何を考えているんだ?
「おいっ! 撃つな、俺達が何かしたってのか?」
訳も分からず殺されてたまるか!
「お前達、怪しい……鉄の塊に乗ってた、魔物! 空から降る岩もお前らの仕業!」
なんか、興奮して言われた。
「空から降る岩…… 隕石の事か? んなもん、俺達が出来る訳ないだろ、バカ!」
当然の主張だ!
「うう……バカッて言ったーー!」
不味い。 仮面女が……
「嘘、嘘、バカじゃない! なぁ、キャスカ!」
キャスカがブンブン頭を上下に振った。
「とにかく、車見て俺達を怪しいと思うなら、それでいいから、その物騒な物を降ろせって! ちゃんと、話をしような? なっ?」
俺の言葉に仮面女が考えているようだ。
いや、仮面つけてるから表情が解らないけど、黙ってるのが証拠だ。
隙あり!
ダッ!
俺は、素早く飛び込み前転して距離を詰める!
「う、動くなと言っただろう!」
俺に標準を合わせようとするが、遅い!
博人は、低い姿勢のまま走って仮面女の両足を抱え込むように低空タックルを仕掛けた!
「キャッ!」
俺は、仮面女を倒す事が出来た。
デカい仮面なんてつけてるから視界が狭いんだよ。
「よっと!」
俺は、そのまま仮面女の上に跨り、マウントポジションについた。
これなら弓は射れないよな?
「博人!」
キャスカが心配して俺の名前を呼んだが、大丈夫だ。
「キャスカ! こいつから弓を取って!」
俺は、暴れる仮面女を押さえつけながら叫ぶと、キャスカが走ってきた。
「止めろ! 離せ! 殺してやる!」
だーー、暴れるな!
キャスカが必死に弓を仮面女の手から、剥ぎ取ろうとするが、指をがっちり閉じて握ってやがる!
「そんなら……」
コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ……
俺は、仮面女の脇腹や脇をくすぐる! くらえ!
「や、やめ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、ヒーー!」
仮面女が笑って、指の力が抜けて、キャスカが弓を剥ぎ取った。
よし!
「よーし、良くやったキャスカ!
おいっ、仮面女! 武器は奪ったから、大人しくしろ! 俺達は、お前みたいに乱暴じゃないから手荒な真似はしない。
ちゃんと、大人しくお話できるか? 出来るなら、拘束を解いてやる」
女の胸が柔らかくて退きたくないのだが…… 俺は言ってやった。
「……わかった」
仮面女が言ったので、俺は立ち上がった。
「死ね!」
仮面女が、腰のナイフを掴んで俺に!
「ずるいッ!」
キャスカが抗議の声を上げたが、その時には、ナイフが俺の所まで来ていた。
だが、残念。
想定内だ。
仮面女のナイフを持つ腕を脇腹に抱えて、ホールドしている。
「お前な、抵抗するなって言っただろ? 取り敢えず、そいつを取ってやる!」
男だったらぶん殴っているところだがな。
「やめろ! 仮面に障るな!」
あーー、ギャーギャーうるさい。
俺は、仮面を剥ぎ取ってやっ
「え?」
俺は、その顔を見て固まる。
「ひ、博人……」
ああ、キャスカ……
「カリナさん!」
仮面女の仮面をとったら、カリナさんが出てきた。
「何を言っている! 放せ!」
……カリナさんじゃ……ない?
髪の色が緑だし……カリナさんより、胸がデカい。
それに、カリナさんより攻撃的な顔をしている……
「お前は、誰だ?!」
俺は言った!
「いや、お前らこそ、何者だ?!」
仮面女も俺に聞いてきたが、まぁ、そうだな。
他人だし。
「よっ!」
「痛っ!」
俺は抱えた仮面女の腕の関節を極めると、仮面女は痛みでナイフを落とした。
キャスカがすかさずナイフを拾い上げる。
これで、大丈夫だろう……
「すまんね、でも、お前は人の話を聞くように思えないから、武器没収だ。
これで話をする事が出来るだろ?」
仮面女の手を放してやったが、腕を手で押さえながら、凄い睨んでいる。
「俺は、博人、町田 博人だ。 そんで、こっちがキャスカ。
さっきも言ったが、隕石は、俺達の仕業じゃないし…… 俺達は、ある目的の為に旅をしているだけだ!」
仮面女に名乗ってやった。
「シンディーだ」
ふてくされながらも仮面女が名乗った。
「シンディー、お前な、不審者だからって、いきなり矢を射ってくるなんてダメだぞ! 当たったら死んじゃうだろうが!」
当然の事を説明させるな!
俺達行くから、もう邪魔をするなよ!
「私の村は、空からの岩で吹き飛んだ。
なぜだ? 何も悪い事してない! 毎日、マケマケ様に祈りをささげていたのに……
狩りに出ていた私のような者達は助かったが…… 家族も友達もみんな死んでしまった……」
行こうとしてた俺達に向かってシンディーが言った。
俺は、振り返って…… 泣いているのか?
「……」
「どうしたの、博人? 行かないの?」
キャスカが聞いてきたが……
「シンディー、着いてくる? 一人なんだろ?」
「ちょっ、ちょっと博人?! シンディーみたいな人なんて、この世界に沢山いるのに……」
キャスカの言う事も、もっともだ。
いちいち助けて仲間にしていくのかって事だろ?
そこまで、俺は博愛主義者じゃない。
「ただ、目の前にいるコイツをほっとけないと思っただけだ」
キャスカは、何か言いたげだったが自分も助けられた身なので黙った。
やっぱり、博人も町田家の人間なのだなと思ったのだ。
「殺そうとした私を……良いのか?」
シンディーが聞いてきたが、俺達に着いてくる事が本当に幸せなのか?
「構わない。 俺達の旅の目的は、隕石……空から降る岩の事にも関連する事だ。
そして、確実に危険な事になり、死ぬ確率も高いだろう。 それでも良いならな」
ホントの事だ。
変に期待されても困るからな。
「どうせ、たまたま生きのびた、この命だ! 好きに使ってもらって構わない!
空からの岩の事に関係する事ならば、こちらから願いたいくらいだ!」
シンディーが俺に懇願してきた。
……そうか。
「よし! お前も仲間だ! ついて来い!」
俺は、キリっとして言った!
嬉しそうにシンディーが駆けてくる。
上下に揺れる胸が素敵だった。
「……博人」
キャスカが殺意のこもった目で見てきた。
シンディーの胸を見ていたのがバレたようだ。
フッ……
「ごめんなさい」
俺は、怖いので、キャスカの目を見ずに小声で誤った。
・
・
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俺達は、車に乗車した。
「シンディー、マケマケ様って何? 神様?」
後ろの席に座るシンディーに聞いたら、カバンから小さい人形を見せてくれた。
「私達の村の守り神、マケマケ様だ」
誇らしげに人形を掲げるシンディ。
「……」
「……」
俺とキャスカが顔を見合わせる。
だって、コレって……こっちに転移してハーヴェストの町で買った木彫りの気持ち悪い人形じゃん!
……神様だったんだ。
ま、まぁ、旅に仲間が出来た。
旅に仲間が出来た。
巨乳のシンディーだ。
キャスカの平たい胸も良いが……
いや、そんな事より、地獄に向かうのに仲間を作って良かったのか?
でも、ほっとけなかったし……巨乳だから。
って事で、次回も、乞うご期待!




