第29話 生きてるなら!
敵を倒す!
ぶっ殺す!
そして、管理者に、文句を沢山言って、ぼっこぼこにして、ぶっ殺ーーす!
そんな訳で、俺達は、サウルスへ向かう。
森の中を荷台に幌を付けた軽トラックが走っている。
町田家の地下駐車場に置いてあった軽トラックだ。
ヴォルフ国の王都から少し離れた森に隠しておいたソレに乗って、俊夫と博人の親子は、転移者が居ると思われるサウルスを目指していたのだった。
「今回の情報が正しければ……転移者がそこに居るはず……
博人、母さん達の仇を討つのも……もう少しだ」
悪路を運転する父さんが言った。
俺は、必死に掴まりながら、転移者も逆恨みされて大変だと思ったが、同情する事はない。
管理者に復讐する為に、奴等を殺さなければいけないからだ……
しかし、よくこんな道を運転しながら喋れるもんだな? 慣れてるのか?
……奴等?
ガコンッ!
タイヤが道のくぼみに入る度に車体が上下して助手席の俺は、頭を車内のどこかしらにぶつけそうになるので、気が抜けない。
この道じゃ、父さんに気をつけて運転してくれと言う方が無茶だ。
やがて、ぬかるんだデコボコ道を抜けると、少し走りやすそうな開けた道が現れた。
「父さん、俺達の敵の転移者って、一人なの? 何人居るんだろ?」
「……さぁ? お前とずっといるのに敵の数を俺が知ってる訳ないだろう?
まぁ……怪しいのバンバン殺して行けば良いんじゃないの?」
「殺してって……」
父さんが、犯罪者的思考で答えてくれた。
俺は……偽善者なので、敵の転移者以外は殺したくないし、傷つけたくもないと思っているのだが……
どうせ、この世界は崩壊するので俺達が手を下さなくても、みんな死んでしまうのだけれど。
父さん的には、死んだところで早いか遅いかの違いだろうって思ったのだろう。
「父さん…… 母さんが死んだからって、自暴自棄になってもそんな考えじゃ駄目だよ!」
目を覚まして、父さん!
「……博人、ここは、日本じゃないんだ…… 何人殺そうが、関係ないし……俺は、法の外に生きると決めたんだ……」
なっ、なんて悲しい事を言うんだ。
「法とかじゃなくて倫理観の話をしているんだよ!」
流石に頭に来て俺は、父さんに怒鳴った!
ピロリロリーピロリロリーー…!
「うわっ!」
バックに時計代わりにポケットに入れてたスマホが突然鳴りだした!
着信?!
誰?
俺は、けたたましく鳴るスマホをポケットから取り出して表示をみた。
ピロリロリーピロリロリーー…!
「っ母さん?!」
画面に母さんと表示されている!
少し迷ったが……
ピッ!
「もしもし……?」
俺は、恐る恐る出てみ
「ちょっと、博人、早く出なさいよ! お父さんにかけても、全然繋がらないし!」
母さんの怒声…… 間違いなく……母さんだ。
「母さん! 母さん! 母さん! 生きてたの?!」
俺が電話に向かって言ったら、軽トラが急停車した!
おかげで俺は、シートベルトに体を押し付けられ、スマホを落としそうになった。
「博人! 貸せ!」
「ちょっ、ちょっと焦らないで」
父さんが、俺のスマホを奪いにかかって俺と揉み合う……少し、落ちつけ!
「今、スピーカーにするから、待って……だから、待ってって言ってるでしょ!」
俺は、父さんの体を片手で制しつつ、スマホを持つ手でスピーカーモードに切り替えた。
「ちょっと、あなた達、何してるの? 無事なの? どこにいるの?」
母さんの大きな声が車内に響き渡る。
無事かって? それは、こっちのセリフだよ、母さん。
「朱美……」
父さんが……泣いていた。
「母さん! 一年もどこに…… いや、どこにいるの? キャスカは? キャスカもいるの?」
「何言ってるの? 私達さっき戻ったばっかりよ! それと、キャスカちゃんも隣にちゃんと居るわよ? ちょっと待ってね!」
どう言う事……
キャスカが生きている?!
俺は、頭がパニックに……
「お兄ちゃん!」
キャスカの声が聞こえた。
キャスカの声だ。
キャスカが生きていた。
「キャスカ! キャスカ! キャ○×△○×□△○×~~!!」
俺は、言った。
自分でも何を言ってるのか解らないが、考えに口が追いつかないで、とめどなく出てくる言葉を叫んでいた。
「落ちつけ、博人!」
父さんに言われ……貴様にだけは、言われたくない!
「朱美! こっちは、大丈夫だ! とにかく合流しよう! それに、転移者の目星もついたしなっ!」
「えっ?! ホント? 流石、俊夫ね! 博人なんて、あんなに取り乱しているのに」
……この夫婦は…
感動的な瞬間だったのに、熱が冷めて……
でも…… キャスカが生きていてくれた事が、嬉しい。
こんなにも……嬉しい!
「あー、朱美、そしたら、俺達、そっちに帰るからな。 遠い場所だから少し時間かかると思うけど、待っててくれ」
父さんが言った。
うん。
……サウルスは?
「父さん、敵を確かめに行かなくても良いの?」
「バカだな、もう、見つけたようなもんなんだから、何時でも殺れるだろ? だから良いんだよ。 朱美達に早く会いたいし」
父さん! ……だよね。
俺も、キャスカに早く会いたいし!
世界の危機だろうが、会いたいものは、しょうがないだろう。
世界の為に戦ってやるんだから、これぐらいの我儘は、認められてしかるべきだ!
うん。
俺は、誰に言い訳しているのだろうか?
どうでもいい、早く、キャスカの元へ!
・
・
・
ブロロロー―……
軽快に走る軽トラは、どんどん進むよ、どこまでも。
「いやー、二人が生きてるなんてな!」
父さんがご機嫌で、運転している。
変な薬でもやっているのか、感情の起伏が激しい……。
でも、確かに、嬉しいよね。ルンルン!
「あれ? 戻って……忘れ物でもしたのか?」
サウルスに向かって王都を出発したハズの博人達の乗る軽トラを見かけたウィズ。
ブロロロー―……
走り去ってしまった。
真逆の方角であるエスタディス国の方向へ……
「いやいやいや、おかしいだろ?! ……あ、戻ってきた」
軽トラが引き返してきた。
「降りた」
博人達が軽トラから降りた。
ウィズは、二人の元へ走る。
二人は、雑貨屋さんへと入って行った。
ヴォルフ国 王都の雑貨屋ーー
俺と父さんは、母さん達へのお土産を購入する為、雑貨屋さんに寄った。
金ならサウルス国の調査活動費として、エスタディス国からもらった金がたんまりあるしね!
おっと、これは……キャスカに似合いそうだ!
俺は、可愛い雑貨に目移りしながら、キャスカが喜びそうな物を探す。
父さんも、目が真剣だ。
バンッ!
開いたドアの方を見ると、ウィズだった。
ウィズがキョロキョロしながら店内に入ってきたぞ?
あいつも、何か買いにきたのか……あ。
完全に浮かれて……ウィズの事を忘れてた。
放置してかえる所だった。
「ウィズ、おい! こっち、こっち!」
手招きして呼んだ。
ウィズが、俺に気付いて走ってきた。
「おい、サウルスに行ったんじゃなかったのか?」
ウィズが不思議そうな顔をしている。
「すまん、事情が変わった。 エスタディス国の諜報員なんてやめだ」
俺が言うと、ウィズが俺の襟首を掴んできた!
「いまさら、辞めるのか? 俺は、カリナの仇を討つためだけに、家も全てを捨ててお前達に着いてきたのに!」
「落ち着け! 管理者を殺る為にも、敵の転移者を倒す事に変わりは無い!」
俺は、襟首を掴むウィズの手首を掴んで怒りと悲しみの混じったその目を見て言った。
「……キャスカと母さんが生きていた」
ウィズの顔色が変わった。
カリナさんを失ったウィズには悪いが……伝えたのは、親友であるウィズに隠していたくなかったから。
「う…うぅ……」
ウィズ……? 泣いているのか?
「うぅぅ…… 博人……良かったなぁ、生きてたんだ……良かった」
ウィズが俺の為に泣いてくれている…… スゲー良い奴だと思った。
「……俺は、母さんとキャスカに合流する。 お前も来い!」
俺の勘だが、敵の転移者は、サウルスの奴等で間違いないだろう。
そうなれば、エスタディス国の諜報員として情報収集も終了、あの国に用はないからな。
「わ、わかった。 でも、大丈夫なのか?」
俺の憶測で動くことがか? それとも、エスタディス国を裏切る事か?
どっちにしろ……
「心配すんな、ほっといてもこの世界は崩壊する。 諜報員になんて固執する必要なんて無いだろう?
それなら、それを救う方法を探す方が健全ってもんだぜ」
「……そりゃそうだ。 ようし、諜報員なんてやめた!」
ウィズも理解してくれたようで良かった。
「ところで、それなら、なんで俺を迎えに来てくれなかったんだ?」
「買い物が終わったら、迎えに行くつもりだったんだよ」
忘れてたなどとは言えない俺が言ったが、疑いの目で見られた。
ウィズも加わって、沢山ある金を使って日用雑貨から食料品、そして、キャスカへのお土産を買いこんでいると、父さんもやってきた。
「おー、ウィズ君、俺達いったん帰るから、体に気をつけるんだよ」
父さんの言葉に俺とウィズは、固まった。
「父さん! ウィズを置いていくなんて……一緒に帰るに決まってんだろ?!」
当然俺は、抗議をするのだが……
「ふーーん、そう、それなら、一緒に帰ろう」
ふーーんって、他人事か!
母さんが生きてた事を知ってから、父さんが変わった。
「とにかく、ウィズは、俺の大事な親友なんだからね!」
全く! この父親は!
「ひ、博人……」
ウィズは、そんな博人が好きだった。
・
・
・
雑貨屋前ーー
「さぁ! 出発だ!」
運転席の父さんが言った。
「頼むよ、父さん!」
助手席の俺が答える。
ウィズ? ウィズは、荷台だ。
軽トラだから仕方ない。
うん。
大事な、ウィズだが、ソレとコレとは話は別だ。
荷台だと、尻が痛くなるし、寒いからな!
母さんが生きていた。
父さんが喜んでいるのが伝わる。
キャスカが生きていた。
俺は、死ぬほど、嬉しい! いや、キャスカが生きてたのに、俺が死んだらダメだ。
この瞬間にも、この世界の人口は減り続けているのだろうか?
……知らない俺に関係のない誰かより……俺は、キャスカが大事だ。
って事で、次回も、乞うご期待!




