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第28話 キャスカの秘密

博人達がザウルス国へと向かっている頃……

場面は、日本に移る……

「キャスカちゃん」

 朱美さんの声が聞こえた。


 僕が目を開けた時、朱美さんの顔が傍にあった……

 少し驚いたが、朱美さんのホッとした表情を見ていると、なんだか僕は、安心が出来た。

 それから、ゆっくりと体を起こした。


「……ここは?」

 僕は、……知らない部屋にいた。

 


「キャスカちゃん、気が付いてよかった、って、私もさっき気が付いたんだけどね……」

 朱美さん……


 あっ……


「朱美さん、大丈夫ですか?! 僕達……」

 思い出した。

 博人達が帰ってこなくて……僕は、朱美さんに料理を教えてもらっていた時……


 キャスカの脳裏に爆発音と爆風、体の焼ける匂いがフラッシュバックした!


「ウグッ!」

 吐きそうになったキャスカは、手で口を押えて我慢した。


「大丈夫? 吐きたかったら、我慢しなくていいからトイレに行く?」

 朱美は、キャスカの背中をさすりながら、キャスカも自分と同じ体験を……そう、アレは現実だったのだと思った……。

 そして、今自分達がいるこの場所の事を知っている。


「大丈夫です、もう、ひっこみましたから……」

 僕は、少し涙目になりながら、心配してくれた朱美さんに答えた。


「キャスカちゃん、ここは、私の実家。 日本よ……」

 日本? ……博人達がいた世界の? でも、私は、ここには来れないって……


 キャスカと朱美がいるのは、富山県の朱美の実家、朱美の部屋だった。

 だが、様子がおかしい……

 人の気配が感じられない。

 そして、家屋の痛みが激しいし埃っぽい……



「やぁ、気が付いた?」


 キャスカと朱美が声のする方を見ると、人の形に光が集まってきていた。


「誰?」

 言うと同時に拳銃を向けた朱美。


「誰って、僕だよ…… ほら、君達が管理者だっけ? 呼んでた」

 朱美の表情が変わるが、キャスカは、意味が解らず、朱美の後ろに隠れるようにして管理者を見ていた。


「どうして……」

 朱美が言うのに合わせるように管理者が言った。

「どうして……か? そこの女の子の力じゃないかな? 君は、2度目の挑戦だったから」

「何を言っているの? 私達に解るように説明しなさいよ! それに、ここって……母さんは?」

 朱美が叫ぶように言った。

「もう、喚かないでよ……うるさいなぁ、あんたの意識にある屋敷に転移させたんだから感謝してもらいたいくらいなのに。

 んーー、ただ、最初に転移した時から時間は、少しだけ先になったけど。

 だから、この屋敷に住んでる人は誰も居ないんじゃないかな?

 ……めんどくさい! ちょっと、ごめんね」

 管理者がそう言ったと思った次の瞬間、キャスカの後ろに移動して、キャスカの頭を撫でた。


「えっ!」

 キャスカが驚いた瞬間、沢山の映像が頭に流れ込んできた!


 空には、沢山の飛行機。

 焼夷弾に焼かれ真っ赤に照らされる母の顔。

 逃げ惑う人々。

 自分は、そこにいた。

 防空壕へと走る人の群れ。

 その中を母の手にひかれて走っている時、私は転んだ……

「……!」

 母さんが叫び手を伸ばしてくれたが、人の波に押されて……

 私は、遠ざかっていく母の名前を叫んだ。 

 燃え盛る炎の熱と逃げる人に踏まれ、蹴飛ばされた。

 ……私は、このまま死んでしまうんだと思った。

 ただ……どうして、私は誰にも悪い事をしていないのに、こんな目にあうのだろうと理不尽な世界に納得がいかなかった。


「大丈夫か!? 早く、起きて! 死にたくないだろう?」

 諦めた自分に声をかけてくれた人がいた……

 顔を上げると、若い憲兵さんが私に手を差し伸べてくれた。

 私も、必死に憲兵さんの手に自分の手を伸ばした。

 憲兵さんが私の手を掴んでくれた。

 そして、次の瞬間、私と憲兵さんの元に爆弾が着弾した時……違う世界へと転移した。

 そこからは、一緒に飛ばされた憲兵さんと、そして、上空にいた爆弾を投下した米兵と私達は、狂った世界を守る為に戦った。

 そして、勝った……あの戦の世界、狂った世界を救った……

 そんな腐った世界を救うために……私を救おうとしてくれた憲兵さんが、戦いの中死んだ。


 米兵は、喜んで元の世界に戻ったが……私は、この世界に残る事を願い、この世界に呼び出した者に頼んだ……

「戻りたくないのかい? 命がけで救った世界なのに? 君は、変わってるなぁ…… 面白いや」

 そう言われたが、私を助けようと逃げずに私の手を握ってくれた憲兵さんが望んだから、私は戦っただけで……

「……それと、私を元の世界に戻さないんだから、憲兵さんも転生させてあげて……彼は、私を助けてくれたから……あの時も、この世界でも……」

 ……正直、私は、私達の世界などどうなろうと良かったのかもしれない。 ただ、憲兵さんが傍にいてくれたから…… 

「うーーん、そんな事して、大丈夫かなぁ…… でも……面白そう。 どうせ、二度と会う訳じゃないし…… まっ、いっか!」

 こうして、私の願いは受け入れられ、この世界の女の子として転生した。

 憲兵さんは、どの世界、どの時代に行ったのだろうか?

 約束は、果たされたのだろうか……

 確認する術はないが……



「そっか……博人……憲兵さんにちょっと似てたから……

 憲兵さんの実家だから、私が願って……」

 前世の記憶が戻った私は、呟いていた。

 無意識の内に、憲兵さんの関連するところに転移して……

 そして、博人に憲兵さんの面影を思ったのかもしれない……


「記憶がもどった? あん時、君に便宜をはかって、それから力を与えたから、僕は、上司に凄く怒られたんだからね……

 だから、簡単に死なないでくれるかな?

 大体ね、この生存競争に何度も参加する世界っておかしいよ?

 世界が行き詰って収集が付かない未来が予測されるところが生存競争原理で淘汰されるんだから……

 生き残るけど……ちっとも良くならない世界なんだね、君たちの世界は?」

 管理者が、キャスカに言った。

「人の本質なんて、そうそう変わるもんじゃないわよ。

 ……それでも、必死に生きて、良くなろうとしてるから、勝ち残っているんでしょう? 私には、関係ないけど……」

 キャスカが言って、朱美を見た。


「キャスカちゃん、何を言って……あなたは?」

 朱美さんが驚いている……だよね。


「神様! 感謝してる……私のせいで、上司に怒られて、ごめんね! 今回また勝ったら、私の事好きにして良いからね!」

 キャスカが管理者に言うと、朱美の手を握った。

 あの、爆風の時と同じように……


「キャスカちゃん?」

「朱美さん、戻ろう! 博人と俊夫さんの所に!」

「えっ? な、なに?」

 キャスカと朱美が光に包まれる!

 そして、消えた……



「さて、どうなるのかね…… どちらにしろ、もうすぐ結果がでるし、管理台帳に経過と結果をかきこまなきゃ。

 でも……人間って面白い」

 管理者は、楽しそうに言うときえていった……



 

「……ここって?」

 言った朱美が見ているのは、瓦礫の山、自分達のマイホームのあった場所だった。


「戻ったよ、朱美さん……  家、残念だったけど……博人と俊夫さん、きっと生きてるから、探そう!」

 キャスカの言葉に、朱美は頷いた。

 この空の下、どこかにきっと俊夫と博人がいるのだろうと、朱美は信じて諦めかけていた気持ちを切り替えるのだった。


キャスカと朱美が生きていた。

前世の記憶を取り戻したキャスカ……

って事で、次回も、乞うご期待!

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