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第27話 あの日から

隕石によって、愛する人を失って、1年の月日がたった……

 

 ヴァリオス大陸を二分する大国がある。


 東のエスタディス国と、西のヴォルフ国だ。


 西のヴォルフ国、その領土内に新たに樹立された、新興国家があった。


 その名は、サウルス国。


 当初は、小さな反乱と思われていた。

 取るに足らない地方の反乱と高を括ったヴォルフ国は、ザウルスと名乗る反乱分子の鎮圧に兵を送るが返り討ちにあう。

 ヴォルフ国は、次々と軍を差し向けたが、ザウルスと称する反乱軍は圧倒的戦闘力をもって、ヴォルフ国の軍を退けつつ瞬く間に周辺地域を平定していく。

 そして、ザウルス国はヴォルフ国を滅ぼさんと、その領土を拡大していき、この世界第3の勢力として人々に認知されるに至る。



 城の中から、ラッセルが外に整列している軍の様子をみていた。 

 次の戦地へと向かう兵士達……

 ジェイクを国王とした俺達の国、ザウルス国は、ヴォルフ国を呑み込む勢いで進軍を続けている。

 ヴォルフ国、ザウルス国……双方に被害を出しながら、戦いは俺達に有利に動いているようだ。

 両国の主だった戦いには、戦の申し子ともいえる俺の息子二人の活躍が目覚しく……ザウルス国の軍神などと、人々から称えられるまでになった。


 ザウルス国やヴォルフ国からは、ラッセルの息子の事を、雷光のデイルと電光のセガンと呼び、恐れ敬っている。

 兄弟の戦果は凄まじく、ヴォルフ国の将軍クラスが次々とその手によって排除されていったのだ。

 そして、いつしか……二人が戦場に立てば、ザウルス国の兵士達は、勢いを増して、ヴォルフ国の兵士達は震えあがり、戦意を喪失して、死を覚悟すると言われるまでの存在となっていたのだ。

 謎の多い、ザウルス国 ジェイク国王の背後には、常に一人の男がいる。

 デイルとセガンの父親であるラッセルである。

 ジェイクの判断、考えは、全てラッセルの助言を元に決定、遂行されていたのだ。


 ……こうして、1年の月日を経て、ザウルス国は、ヴォルフ国を二分する勢力にまで成長した。



サウルスの本拠地 トロオドン城ーー


 ヴァリオス大陸 ゲーター地方、元々、ジェイク達の部族の集落があった場所に造られた城……



 あれから、1年あまりたったが、敵の存在が掴めない……この国や、ヴァリオス国に俺達の名も知られてきているハズだが……、

 豪華な造りの椅子に腰かけたラッセルが思った。

 

 このまま、何事もなく、後数年、いや、数十年もこの状態が続くのか?

 ふとした瞬間に、そのような事が頭をよぎる……


 だが、この世界は消滅する……


 その予兆が見え隠れしている……


 隕石の落下が周期的に続いているのだ。

 その被害によって、ザウルス、ヴォルフ共に、多くの住民や国土をうしなった。

 月に一度程度の頻度だった、隕石の落下が月に二回になり、現在、隔週敵な頻度にまで多くなって来ている……


 多分、この事が世界を……この地の文明と生きる者たちを根絶やしにすると言う事…… これからは、もっと短い周期で隕石の落下が行われると思われる。

 残された時間が少なくなってきているのだろう……


 ラッセルは、焦っていた。


 このままでは、勝敗はドロー、俺達の元居た世界も、この世界も消滅してしまうのではないか?

 それは、向こうの転移者も同じなハズ……

 俺達は、俺達の兵器を戦場で使った。

 この世界に存在したいであろう、破壊力、攻撃力、そんな話は、沢山の人へと伝わったハズなのに……

 それもこれも……俺達の存在を敵に知らせる為だったが、なぜ、俺達の前に姿を現さない?


 ……こうなれば、奴らが、ヴォルフ国に存在していないと考える方が自然だ。


「……東か?」

 ラッセルの脳裏に東の大国 エスタディスの存在が浮かぶ。

 かの地にも、自分達の存在を知らしめなければいけない!

 ……その為にも


「一刻も早く、この国を取らねばならぬ………」

 ラッセルは、手にした銃を壁に向けて呟いた。



ヴォルフ国 王都ーー


 この街にやって来た、二つの影が酒場に入っていく。

 フードを深くかぶり、大きな荷物を背負っている姿は、この街では異質に映る為か、店内にいた客が二人に一瞬視線をやったが、二人が席に着くと店内は元の喧騒を取り戻した。


 席に着いた二人に気づいた給仕が、注文を取りに傍へと向かう。


「なんになさいますか?」

 そう聞いてきた給仕に無言で答えない二人。

 聞こえなかったのだろうか?

 給仕が、注文が決まったら知らせてくれと言おうとした時、

「……父さん」

 若い男の方が目の前に座る男に言った。

 言われた年配の男が、若い方の男の言葉に気づいて、給仕を見た。

 給仕は、二人の会話から、親子だと思ったが、どうでも良いから注文を早くしてくれと、二人を見る。

「なにか、腹に貯まるものをコイツに頼む。 俺は、酒と何か見繕って持ってきてくれ」

 年配の男の方に言われて、給仕は二人の姿を確認して経済状況を想像して、厨房に入れる注文をアレとアレで良いかな? などと少し悩んだ表情になったが、解りましたと答えて、奥にいった。



 父さんと、俺は、旅を続けて、この国に着いた。

 先に来ているハズのウィズとここで落ち合う手筈になっている。

 まぁ、食事でもして、ゆっくりと待つさ。


「おい、見ない顔だな、どこから来た?」

 俺達に声をかけたのは、近くのテーブルの男。

 ひどく酔っているようだ……

 関わり合いになるのは、面倒だ。

「……」

 俺は、声をかけてきた男から視線を戻して、無視する事にした。。


 無視された酔っ払いの男が、立ち上がった。

 父さんの酒を運んでいた給仕がその様子を見て、面倒な事になりそうだと小走りに寄ってきた。

「面倒事なら、外でやってくれ、迷惑だ!」

 父さんの前に酒を置いて、給仕が酔っ払いに言ったが、その事が頭にきたらしく酔っ払いが給仕に掴みかかった。

「なんだと、この野郎、俺は客だぞ!」

 酔っ払いが給仕を殴りつけようと拳を……


バシッ!


 俺は、給仕の目の前に来ていた拳を右手で受け止めた。

 ……目立ちたくないのに……仕方ないか。


「博人、銃は使うな。 弾がもったいない」

 父さんが酒を飲みながら言ったが、解ってるって。


 酔っ払いの拳を掴んだまま背中の方へと捻りあげた。

「いだだっ! やめっ、やめろっ!」

 うるさい。

 最初に手を出したのは、お前だろう?

「折る?」

 俺は、殴られそうになった給仕に聞いた。

「……は?」

 給仕は、何を言われているのか判らない。


「おっさん、静かに食事させてくれよ」

 俺は、給仕が答えないので、酔っ払いに言って手を放してやった。

 酔っ払いが捻りあげられた手をかばいながら俺を睨んで自分の席に戻っていく。

「俺の分、早くね」

 ぼさっとしていた給仕が、俺に言われて奥へ走って行った。


「あんまり、目立つような事は、するな」

 席に着いた俺に父さんが言ったが、銃は使ってないから構わないだろう?

 俺は、黙って食事が来るのを待つことにした。



 俺は、17歳になった。

 キャスカと母さんを失った日から父さんは、口数が減った。

 ただ、俺とウィズを真剣に鍛えてくれた。


 ……あの日、ハーヴェストの町も被害を受けた。

 ウィズのデカい家も被害にあったが、町の方の被害が酷かった。

 被害を受け崩れた建物の中に、エティゴーヤの店もあった……。

 ……瓦礫の中から発見されたカリナさんを……俺とウィズの手で埋葬したあの日から、ウィズの時間が止まったのだ。

 死んだように全ての希望を失ったウィズ。

 ……俺と父さんは、ウィズに話した。

 この世界が消滅する事、俺達が異世界から来た事、復讐すべき相手の事を……

 そして、ウィズの時間が進みだす。

 俺達と共に、管理者を殺す為に生きる道を選択したのだ。

 家を飛び出した俺達は、敵を探した。

 どんな些細な情報でも、その場に行き確認したが、全て徒労に終わる。

 しかし、俺達が周った各地に隕石が飛来している事実を知った。

 その現象は、今も世界のどこかで起きているのだろう……

 そして、被害も沢山出て、俺達のような境遇の者が沢山生まれている事だろう。

 世界は……ゆっくりとだが……確実に……滅亡へと向かっている。

 情報が欲しい俺達は、エスタディス国の王都へ向かった……



ガタッ……


「博人、すまん、仕事が片付かなくて……」

 昔の事を考えていた俺の目の前に、この国の兵士の姿をしたウィズが着席した。

「いや、俺達も来たばかりだから」

 ウィズに答えていると、目の前に料理が置かれた。


「お待たせいたしました! あと、こっちの魚は、店からのサービスです」

 俺の前に、結構なボリュームのパンとサラダと煮込み料理の他に、魚の焼いたのが置かれた。

 父さんの前には、何か野菜の炒め物が置かれたようだ。 

「ん?」

 俺が、給仕の顔を見ると、先程の礼だと言って笑っていた。

 大した事をしていないのに……なんか、得した気分になった。


「おっ、博人、俺にもくれよ」

 ウィズが俺の料理を見て言ってきた。

「しょうがねぇーな、ほら」

 やりたくないが、パンをちぎって渡す。

 こっちは、魚もあるし食べきれないかもしれないし。

 自分の炒め物があるのに、父さんが俺の魚をちゃっかり自分の所に持って行って既に食べ始めてた。


「……」


 ……何も言うまい。

 俺は、腹が減っているのもあって、黙々と食べ始めたが、中々美味しい。

 やっぱり、都会の方だけあって、食べ物屋が多いから、競争原理で料理の質が上がったのかな?


「俊夫さん、やっぱり、例のが、アレで間違いないんじゃないかな?」

 モグモグしながら、ウィズが言った。

 俺と父さんの顔が変わる。


「戦場から帰還した兵士を見つけて話を聞いたら……ソイツは、魔法だって言ってたけど……話の内容から、俊夫さんや博人の持ってる武器なんじゃないかって思うんだよね」

「そうか…… よし、俺達は、このままサウルス国を目指すから、お前は、エスタディス国の連絡係に、適当に連絡を入れておけ」

 父さんが、ウィズに言った。


 俺達は、敵となる転移者の情報を集める為に、エスタディス国の諜報員になった。

 人と情報が集まるそこが俺達にとって都合が良かったからだ。

 ただ、組織の中で情報を閲覧、取得する為には出世しなければならなかった。

 その為、俺達三人は、国に言われた汚い仕事も沢山するハメになった……

 

 そして、今は、ヴォルフ国とザウルス国の実情を調べに来たのだが……


「今度こそ……」

 俺は、嬉しくて身震いして……言った。 

今回の、情報は正しいのだろうか?

いや、悩んでどうなる? 行動あるのみ……

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