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第19話 転移者は対戦相手

俊夫&博人の親子が間抜けにも遭難した。

そして、物語は、少しだけ時間を巻き戻し、もう一方の転移者へと……

 その世界に彼らはいる。

 あの世界でもなく、この世界でもなく、その世界に住む人達は、その場所の事をこう言った。



惑星 トロオドンーー


 その世界は、地球とよく似た気候風土をもっていたが、そこに住む人間の姿は、博人達と異なっている。


 特徴としては、全身に鱗を持ち、手の指は3本しかなく、顔は爬虫類のようなのである。

 だが、リザードマンでは無い。

 ……そもそも、種が違うのだ。


 その世界で、生物の生存競争を勝ち抜いた彼らは、高い知能を持ち独自の進化の過程を経ていった……

 そして、地球と同じように、戦争と和平を繰り返しながら、彼らの歴史をたどり、独自の高度な文明を築きあげていた。



7月18日 午前 6:48


 郊外に建つ、その住宅にいつもの朝が訪れ、いつもの日常が始まろうとしていた。

 姿が違おうと、地球に住む人類と同じように、幸せを願う普通の日常を送る人達である。



……カッ!



 その日、その家庭に「その時」が訪れた。

 そう、どの世界にも、その時は平等に訪れるのだ……



 博人達のいる世界に、突如出現した白の建築物。

 トロオドン人の平均的な住居である。



「デイル! セガン! 大丈夫か!」

 住居の中、大柄なドロオドン人の男が、目の前にいる息子である双子を見ると、尻餅をついていた。 そして、驚いた表情を浮かべている……

 それは、無理の無い話である。

 突然の閃光と爆発音をうけたのだから……


「うん、大丈夫だけど、なんだったの今の?」

 少し落ち着いたデイルが、父親のラッセルに答え、弟のセガンを抱き起こす。

弟のセガンは、もうすぐ17歳になるのに……大変な目に遭ったと思った。


「解らない……二人とも、ここにいて」

 ラッセルは、二人が無事であった事に安堵しつつ、現状を確認しようと外に向かった……

 嫌な予感……

 二人の息子を生んで死んでしまった妻の為にも息子だけは、何としても守らなければならないとラッセルは、意を決して玄関のドアを開けた。


「なっ、何だここは……」


 外に出たラッセルが目にしたのは、広大な湿地帯。

 そして、自宅が湿地帯の傍の陸地に建っている。


 昨日までは、乾燥した大地が広がっていたのに……一晩で? 

 いや、そんな事が起こる訳が……


 ラッセルは、激しく混乱する。


 広大な湿地帯に住居? が点在して……集落を形成しているのか?

 ん? 人が……


 ラッセルの居る場所は、リザードマンの集落がある場所だった。

 そして、その集落から、板のような物に乗る人物がラッセルの元へと向かっていた。


 水面を切るように滑らかに進む、その板のような小舟に乗るのは、この集落の族長の息子 ジェイク。

 彼は、突如出現した奇妙な建物を調べようと父親である族長の許可を得ぬまま向かっていた。

 それが、次期族長たる自分の使命と信じて……


「そこの者! 俺は、ジェイク! ここの族長の息子だ! お前は、何者だ!」

 ラッセルの姿を確認したジェイクが叫ぶ。

 

 板のような物は、舟か? 手にしたあの棒で進んできたのか……そう思いつつ、ラッセルは持ってきていたハンドガンの安全装置を解除してから、会話しやすいようにジェイクの近くへと移動を開始した。

 

 もうすぐ、ジェイクとか言う若者が陸地に到着しそうだ……


「俺は、ラッセル! ディノサウス共和国所属の軍人だが、一体ここはどこだ?! ディノサウス……じゃないよな? ガラバ国のクロブス湿地か?」

 トロオドンで有名な湿地の名称を伝えた。


「ガラハ? クロブ…… 何を言っているんだ、アイツ」

 ラッセルの言う言葉を訳が分からないと思いながらも、陸地に到着したジェイクが、乗ってきた板を持ち上げる。

 それは、大きな盾だった。

 ラッセルが、ジェイクに近づく……


「お前、止まれっ!」

 不用意に近づくラッセルに手にした長槍を構えるジェイク。

 ラッセルは、立ち止り、ハンドガンに手をかけた。

 だが、ラッセルは戦闘になる事を避けたい……状況を知る、情報が欲しいからだ。


「落ちつけ、俺も困っているんだ……ここが、どこなのか、教えてくれ」

 ラッセルは、目の前の男が早まった行動をしないように出来るだけ静かに、落ち着いて話した。

 そして、ジェイクと言う名の青年をみると……

 ……鎧を纏い、その顔は……トカゲ……先祖返りしたような風貌だった。


「怪しい奴! そんな建物、昨日は無かった! どこから来たたたたたたったたたた……」

 ジェイクが頭を小刻みに揺らしながら……明らかに様子がおかしい!

 ラッセルは、ハンドガンを両手で構えるっ!


 その時、ジェイクが手にした長槍を手放した。


「!」

 ラッセルは意味が解らない……ハンドガンはジェイクに向けたままだ。


「うん、ここが何処か解んないよね? ここは……そうだね、君達の言う所の異世界って奴?

 僕が、君達を呼びました」

 何を言い出す? ラッセルが指に力を……

「おっと、撃っても良いけど、僕は別に死なないけどこのジェイクが死ぬだけだから、辞めた方がいいんじゃない?」

「なに? お前は……ジェイクじゃないのか? 誰だ! 俺達をもとの世界に戻せ!」

 ハンドガンを向けたまま叫ぶラッセル!


「おめでとう! 君達家族は、トロオドン人の代表に選ばれました!

 そして、先にこの世界に来ている地球人と戦ってもらいまーす!」

 嬉しそうに言うジェイク……

「何を言っている! 戻せと……!」

 言ったラッセルの真後ろに立つジェイク……移動が見えなかった。


「解んないかな? しょうがないね……」

 ジェイクが言うと、ラッセルの頭を両手で掴むと、ラッセルの頭に情報が一気に流れ込んだ!

 音と映像が一体に光と色が混ざり合った感情が体を突き破り破裂しそうに……処理しきれないデータによる浸食!


 最後に、前回のトロオドン人が世界の存亡をかけた戦いに挑む姿の映像が微かに見え…… 



 そして、ラッセルは理解した。


 ゆっくりと、ラッセルの目が開く……


「……やるしかないのか」

 そう呟いたラッセルの目は、国を、星を守護する軍人の……いや、自分の世界の命運を握った男の顔になっていた……


「ククク……わかったみたいだね、それじゃ、僕は、君達がこの世界に到着した事を伝える為に、対戦相手のトコに行くから!

 そんな顔しないでよ、僕は公明正大だからね。

 消滅しないように、頑張っ……んー、どうでもいいや、タイムリミットが過ぎたら、みんな消滅出来るしね」

 そう言うと、ジェイクがガクッと膝から崩れ落ちて、気を失ってしまった。


「……」

 ラッセルは、気を失ったジェイクを抱き上げると、デイルとセガンの待つ自宅へと戻るのだった……



7月26日 午前 10:20 


森の中ーー


ズザザァーー!


 巨大なワイルドボアが、何かから逃げるように現れた!


 その後ろから自動小銃を手に、俊夫が走ってくる……


「ピギィィィーー!!」

 叫び声をあげ、ワイルドボアが俊夫から逃げるように走り出す!

 そして、その進む先にいる人物が、手にしたグロック19の照準を合わせる。

 

パァーーン!


 ワイルドボアの額に弾丸が命中した!

 だが、ワイルドボアの突進は止まらない!


「だよね、知ってた」

 博人が、グロック19をズボンに差すと、ワイルドボアへと向かって走り出す!

 このままでは、衝突は免れない!


ダッ!


 衝突の寸前に博人がジャンプしながらワイルドボアの顔を駆けあがり、その背中に飛び乗った!

「ピギィィィーー!!」

 激しく叫び、博人を振り落とそうするワイルドボアだが……


「落ち着けよ、うまく入れれねぇだろ」

 博人が手にした手りゅう弾のピンを抜きながら言うと、ワイルドボアの耳にソイツを突っ込み、ジャンプしてワイルドボアの背中から飛び降りる。

 ワイルドボアが自分の背中から降りた博人に向かう為に体を回転させようとしたが、手りゅう弾が爆発して、頭を少し吹き飛ばし絶命した。


 博人と俊夫 親子が、遭難7日目の昼食を手に入れた瞬間である。



「人間、死ぬ気でやれば、変われるもんだね」

 遭難し、モンスターやら動物に襲われ、何度も死の淵から生還して強くなっていった自分に言った博人。

 思えば、必死に良く頑張ったと自分を褒めてあげたいと思った博人だったが、ひょこひょこ歩いてくる俊夫を見て、アイツがこんなところまで来たせいだと思った。


「母さんに連絡した?」

 近くに来た父さんに聞いたが、

「お前が、もう少し強くなってから、連絡するから!」

 などと、何時もの返事だった。

「……あ、そう」

 ……以前、こっそり母さんに電話したら、着信拒否されてたし……なんなの、この親達。


 しかし、この短時間に強くなるなんて……おかしいよ。

 おかしい! 絶対なんか変だ!


「なぁ、父さん…… おかしいよ……こんな急に強くなるなんて」

 ワイルドボアを解体しながら、聞いてみた。

「なんだ? なんか困る事でもあるのか?」

「いや、ないけどさ……変じゃない?」

「困らないなら良いじゃないか」

 適当だな、父さんは…… まっ、ここで生きてくのに都合が良いからいいか!


 博人も大概、適当だった……

町田一家とラッセル一家……

姿も生まれた場所も違う二つの家族。

だが、互いに同じ宿命を背負う……それは、自分達の世界を守る事。

今は、互いの存在を知らないでいる彼らだが……

って事で、次回も、乞うご期待!

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