第15話 友達が部屋に来た。
もうすぐ家に到着だ。
家に友達呼ぶ日がくるなんて……
誰だ! 寂しい奴と思った奴は!
うん。
……いいじゃん、俺にも友達出来たんだから。
鉄の塊が、止まった。
どうやら、博人の家に到着したようだ。
俺達は、この不思議な乗り物から降りる。
とても速く、そして乗り心地も馬車なんかと比べ物にならないくらい快適だった。
ただ、博人の俺に期待しているであろう、感動や驚きのコメントは、言わない。
凄く、コメントを期待しているであろう顔が、ちょっとイラっとしたからだ。
まぁ……凄いのは、認めるけど。
たぶん、魔力か精霊の力を使って動かしているのだろう……
ウィズは、車から降りてきた俊夫の姿を見やった。
「これが、大魔導士ってやつか……」
初めて見る大魔導士の姿に気後れしそうになりながら、ウィズは、呟いた。
「到着です! さぁ、カリナさん、どうぞ!」
博人が……
あんな、失礼な商人の娘に気を使う必要など無いと思うのだが……
博人は、変わってるから仕方ないか。
ウィズは、博人の家を改めて観察する。
小さいながらも、植木は綺麗に剪定されてるし、清潔感が感じられるが……
想像していたより……小さいな。
ウィズは、カリナにニコニコして、話しかけている博人に視線を移す。
博人……明るく装っているが、苦労してんだな……
「おい! ウィズ、何やってんだ? 早く来ないと、置いてくぞ! この家がデカいからって、ビビるんじゃない!」
「小さいだろ!」
博人がボケてきたので、思わず返したが、博人の父さんと目が合って気まずくなった。
「あ、すいません、冗談なんで……」
俺は、ペコペコ謝って博人を追った。
なんでボケた博人が、俺のフォローも無しにさっさと行くんだ、まったく!
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「お帰りなさい、あれ? お客さん?」
家に入ると、出迎えてくれた母さんが言った。
「ああ、博人の友達で、朱美も一緒に行った、エティゴーヤさんとこの」
父さんが、カリナさんを見て、母さんに説明した。
「ああ、あの時の! ハーブティー美味しかったわよ、ありがとね。 ハーブティー美味しいのに、博人なんて、臭い! 人間の飲み物じゃないって言うから家では中々飲めなかったから、嬉しかったわ」
母さん、余計な事は、言わないでいただきたい。
「お、お邪魔します」
カリナさんが頭を下げて家の中へ入ろうと……ちょっと!
「靴! カリナさん、家の中では、靴を脱いでね」
靴のまま、家に上がろうとしたカリナさんを止めようと、思わず手を握って言った!
「そうなの? ごめんなさい、私、知らなくて」
慌てて、カリナさんが玄関で靴を脱いだ。
俺は、カリナさんが、バランスを崩してコケないように、しっかりと手を握ってあげたままでいる。
けっして、離したくない訳では…… まぁ、あるのだが……
「ほう、小さいが、中々機能的な家のようだな、博人!」
堂々と靴のまま家に上がっているウィズが言っ……お前!
「あなた、この失礼で礼儀がなっていない、ちびっこギャングは、何者かしら?」
母さんが、ひきつった笑顔で父さんに聞いた。
不味い!
「ほら、ウィズ! カリナさんも注意されてただろう? 靴を脱いで、入れ!」
慌てて、俺は、ウィズに注意する。
もちろんカリナさんの手を握ったままだ。
「この子も、博人の友達だ。 ここの領主の、お孫さんらしいぞ」
父さんが、母さんに言って、リビングの方に歩いて行く。
「へぇー、ウィズ、ちゃんと、靴脱いで入りなさいね、後で、ジュースあげるから」
母さんも、戻って行ったが、すれ違いで、キャスカが走ってきた。
うーん、何度見ても可愛い。
「お兄ちゃん、お帰り! ……あっ! お前は、この前、お兄ちゃんにやられた……」
キャスカが、ウィズを指さしてる。
「こらっ、指を指すんじゃないよキャスカ。 ウィズと俺は、親友になったんだから」
「そっか、子分にしたのね!」
キャスカが笑顔で言っ
「誰が、子分だ!」
当然、ウィズが言った。
「キャスカ君、遊びに来ちゃった」
カリナさんがキャスカに言うと、キャスカも嬉しそうにしている……やっぱ、男のフリをしていても、同性の子と一緒が良いのかな?
「お兄ちゃん、部屋に行こう!」
キャスカが俺の腕に抱き着いてきた。
んん? 普段こんな事しないのに?!
「お、おお、そうだな。 カリナさんもウィズも、俺の部屋に行こうぜ!」
キャスカに引っ張られて、カリナさんと手が離れちゃった……
どうした? 今日は積極的だけど……一人で寂しかったのかなキャスカ?
リビングを通り、キッチンの方にいる母さんに、飲み物を頼んで、俺達は、2階の俺の部屋に行った。
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俺の隣にキャスカが座って、向かいにウィズが座り、カリナさんは、興味深そうに俺の部屋を物色している。
俺のコレクションは、ちゃんと別の場所に隠してあるので、大丈夫だ。
親や、キャスカにまでバレて、辱めを受けた俺であったが、ちゃんと別の場所に隠したから、家族に対しても安心だぜ。
しかし……俺の部屋に、このメンバーでいるのも変な感じだ。
「ね、ねぇ、博人君、見たことの無いものばかりあるけど……あなた、何者?」
「おい、貴様! それ以上、詮索しない方が、身のためだぞ!」
俺が焦る前にウィズが、詮索するなと言ってくれた?
ウィズが、俺を……凄い見てる……
「不思議な奴だと思ったが……そう言う事だったんだな博人……」
ニヤリと笑って、ウィズが言った。
なんだコイツ、気持ち悪いな。
「どういう事?」
カリナさんがウィズの隣に座って聞いた。
「フフフ、馬鹿な女だな…… この家に入って、色々おかしいと思わなかったのか?」
「確かに、変わってるし見た事ない感じだけど……何が言いたいのよ、あんた!」
カリナさんが、慣れてきたのか、ウィズに「あんた」って……身分差とか大丈夫? まぁ、ウィズは気にしてないし、気づいてないみたいだけど……
「部屋の中が明るかったろう? 見たか? あの壁一面のデカいガラスを! あのデカいガラスの壁のおかげで光を部屋に取り入れ明るい室内に……
そして、この部屋にも…… あの窓を見ろ! あれだけ透明度が高く、大きなガラスを使用している……
そこの本棚にも多くの書物があるし、その精巧に作られた像! どれもが、俺達の常識を凌駕している……」
したり顔で、ウィズが言ったが……
リビングの窓ガラスや、この部屋の窓に本棚の漫画や机の上の美少女フィギア…… バカにしてるの?
「博人…… もう、隠すな…… お前の親父、魔導士……錬金術もかじっている……そう、なんだろ?」
ウィズが真剣な顔で言ってきた。
「そうか……そうよね……」
カリナさんが納得している。
「……お兄ちゃん」
キャスカ……
「……ウィズ」
俺は、組んだ指を額につけて考え事をしているようなポーズをとる。
みんなの視線が俺に集まる。
「ウィズ……カリナさん……父さんの事、この家の事は、秘密にしていただきたい……でないと……大魔導士である父によって……」」
俺は、もったいぶって言った。
めんどくさい事を解決出来るワードをウィズが教えてくれたしな! ラッキー!
魔導士、魔導士、大魔導士! ウヒョーー!
「フフフ……やはりか。
心配するな。 少なくとも俺は、秘密を守る事が出来る男だ」
「私だって、誰にも言わないわよ!」
二人が、言ってくれたので、安心だ!
コンコンッ!
「博人、入るわよ」
珍しくノックしてくれた母さんが、ジュースを持ってきてくれた。
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「見ろよ、このガラスの器を! 普通の家庭にガラスのコップなんてあるか? 貴族じゃあるまいし!」
ウィズ……
「そうね! しかも、こんな絵付けしてあるし!」
カリナさん……
可愛い小鹿の絵が描かれたコップについて、あれこれと二人で話している……
そんなもんで? ……恥ずかしくなってきた。
「お兄ちゃん、いいの?」
キャスカが耳元に囁いてきた。
「いいんだよ! 都合がいいから」
俺も、小声でキャスカの可愛い耳に向けて喋った。
「ぐおっ! なんだコレは! 喉がっ! 喉がっ!」
ウィズ? どうした今度は?
俺が見ると……ああ、コーラを飲んだから……
「毒じゃないから、シュワっとして、スカッとするだろ!」
飲んで見せて言った。
「うん、シュワっとくるの解ってて飲んだら、平気ね。 甘くてシュワっと……美味しい!」
カリナさんが、飲んで感想を言ったので、ウィズは、負けていられないと思い、もう一度チャレンジする!
「何コレ! 最高じゃん! 甘い! 甘いよ!」
ウィズが、コーラの良さに気づいて、がぶがぶ飲みだし、ゲップしてた。
お前達……そんな物で、満足か? 満足しちゃうのか?
「キャスカ、下のお菓子置いてるとこから、アレをもってきなさい」
「アレね! コーラには、アレだよね!」
キャスカが元気に部屋を出て行った。
コーラには、ポテトチップが一番……合う!
「ウィズに、カリナさん、キャスカがそのコーラに最高に合うお菓子を持ってくるから!」
俺は、笑顔で二人に言うと、空いたコップにペットボトルのコーラを注いであげる。
「その入れ物……」
ウィズが、ペットボトルに気づいて聞いてきた……
俺は、そっとウィズにペットボトルを渡す。
ペコペコ……
「柔らかい……これって?」
「ああ、魔導錬金術師の父さんが作った」
説明がめんどくさいのと、面白いので、そう言ったのだが、ウィズもカリナさんも信じてくれた。
「なぁ、博人、キャスカって、なんで男の恰好してるの? 女だろ?」
「はぅ?」
ウィズがいきなり言うので、変な声が出てしまった。
「ちょっと、ウィズ、可愛いし綺麗な顔してるけど、キャスカ君は、美少年よ」
カリナさんがウィズに注意するように言った時、キャスカがポテチを手にして戻ってきた……
……どうしよう、どうすれば良い?
なんで、こんな事だけ鋭いんだ、お前は!
俺は、驚愕の眼差しでウィズをみる……
どっちだ? どっちが正解なんだ!
キャスカ…… お前は、どっちが良いんだ?
って事で、次回も、乞うご期待!