第14話 子供の浅知恵、恋と友。
僕の考えた、アイデアで、一攫千金、ウヒョヒョヒョ、ヒョ!
そんで、モテモテやったるぞ!
俺達そんな、お年頃。
次の日、俺は、父さんに車でハーヴェストの町まで乗せてもらった。
「博人、エティゴーヤさんの店に寄ってから帰るから、何かあったら、電話してくれ」
そう言って、父さんが走り去って行った。
もはや、車を隠そうとかしないんだ…… まぁ、楽でいいけどさ。
この町の人も、雑と言うか、お気楽と言うか、鉄の塊が走ってるのに驚かないものかね?
俺は、昨日、ウィズに頼んでいた事を実行しようと、町の広場に向かった。
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「博人ー! こっち、こっち!」
ウィズが自転車を持って立っていた。
その周りに、この前の取り巻き連中がいる。
「流石、ウィズだな。 仕事が早いぜ」
俺は、頼んでいた物が、ちゃんと設置してある事に感心した。
「ああ、こいつ等に手伝ってもらったからな、それに、空いた時間で自転車の乗り方も教えといたぞ」
ウィズが取り巻きを指差して言った。
「そうか、みんなありがとう! 稼いだら、今日のバイト代支払うから、今日は、ガンガン働いてくれ!」
金をもらえると聞いて、取り巻き連中が喜んだ。
ちなみに用意した物とは、受付カウンターと看板だ。
看板には、「 自転車体験! 君も、話題の最新移動手段 自転車に、たったの銅貨 1枚で乗れる! 」と書いてある。
フフフ、そう、俺達がしようとしてるのは、自転車に人を乗せて、金をもらう事……
料金は、広場一周で、銅貨1枚の格安価格…… いや、所要時間 1分くらいだから、安いのか微妙だな。
いや、ネガティブな事は考えずに、とにかく、やってみよう!
「そしたら、ウィズ! いっちょ宣伝に行くか!」
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チリン、チリン!
「広場で、乗れる、自転車に! 広場で、やってる、体験会! お代は、銅貨が、1枚だ!
一度乗ったら、やみつきに、新感覚を体験だ! 行こうよ、乗ろうよ、自転車に!」
キャッチ―なCMソングを叫ばせながら、自転車に乗って町をゆっくり一周させる。
その自転車の周りでは、楽器をもった奴が音を奏でて、まぁ、チンドン屋だな。
とにかく宣伝させた。、
俺と、ウィズは、広場で待機だ。
かっこ悪いし、やりたくないので、取り巻き連中にやらせている。
誰もいない広場に置いた、受付カウンターと言う名の机に二人並んで座って、客を待つ……
こっちも大概、かっこ悪いが、受付に人が居ないのも駄目なので、大人しく座って待つ、俺と、ウィズ。
「……」
「……」
暇だな……
始める前は、すぐに客が来るって思ってたが…… 考えが甘かったか?
なに、初日だし、駄目で元々、焦る事は無い。
自分に言い聞かせつつ、暇なので、ウィズと話をして、時間を潰していた。
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「なんだ、博人? 童貞なの?」
ウィズのバカが言ったが、俺達の年齢ってほとんど童貞でしょうが!
まったく、下品な奴だ。
プンスカー!
「悪かったって、博人、そんな顔するなよ! よっしゃ、今日は沢山稼げたら、行くか?」
「行くって、どこだよ?」
俺は、ウィズにバカにされたので、むくれっ面して聞いた。
「そりゃ……フフフ、女と遊べるとこだよ……」
ウィズが、いやらしい顔をして言った。
まだ、16歳だと言うのに、まったくけしからん!
「ウィズさん! 俺、初めて!」
気がついたら、両手でウィズさんの手を握っていた。
やっぱ、持つべきは、親友だぜ!
「任せとけ! 良い店があるって、取り巻き連中に聞いた事があるから、場所確認してくる!」
あれ? 聞いた事がある?
「……もしかして、お前も、そう言う店、初めてなの?」
ウィズに聞いたら、顔が真っ赤だ。
「ば、ばば、馬鹿野郎、そんな訳ないぞぞ」
明らかに挙動不審…… 図星だなと思ったが、ちゃんと場所を確認してきてもらいたいので、これ以上追及しないぜ、チェリーボーイ。
なんか、ウィズが童貞でホッとした。
そんな時、カリナさんの姿が見えた。
「楽しみだなぁ、おい博人、お前、おっぱいい大きいのが好き? 小さいのが好き?」
鼻の下をだらしなく伸ばしたウィズの馬鹿野郎、カリナさんが傍まで来てるってのに!
声がでかいよ!
「ウィズ君! 君は、また、そんな下品な事を言って! 恥を知りなさい! そう言う事を考えている暇があるのなら、本の1つでも読みたまえ!」
俺は、男らしく注意をする! 見ててくれてますか? カリナさん!
「なっ、なんだよー、そんな言い方しないでも良いじゃないか! もういいよ! 俺、場所探してくるけど、お前に教えない!」
ウィズが、走って行った…… よし、後から聞き出すとして……
「博人君」
カリナさんが、俺に声をかけてきた!
「あれ? カリナさん、いらっしゃったんですか? 全然気がつきませんでした!」
あくまで、偶然を装う俺。
「良かったの? ウィズ様、走って行っちゃったけど?」
「ああ、彼が、聞くに堪えない卑猥な事を口走ったもので、ガツンと注意してやったんですよ。 たぶん、僕の気迫に押されて、反省しにいったんじゃないかな?」
「そうなんだ…… 大きな声で広場がどうのこうのって聞こえたから、見に来ちゃった」
相変わらず、可愛いぜ、カリナ。
そんな事言って…… ホントは、俺の事が気になって来てくれたんだろ?
「カリナさん、ウィズ君と二人で、なんとかやっています。
ただ、彼、もの覚えが悪くて……
ほとんど、僕が一人でやっているようなものですよ。
……でも、駄目な人間であるウィズ君の事を見捨てられないんだなぁ、そんな僕って、お人よしですよね?」
ウィズが居ない事を良い事に、俺はカリナさんに、自分がいかに仕事が出来る人間であり、優しさも兼ね備えている人間だと言う事をアピールした。
「ううん、そんな事ないと思う、偉いよ、博人君。
それにしても、ウィズ様も博人君に出会ってから、ずいぶん性格が丸くなった見たいね」
なんか知らんが、褒められた。
よっしゃ! 良い感じ!
「僕は、彼に言ってやったんです。 暴力からは、何も生まれないと! 生まれ変わって、社会に、コミュニティ―に愛される人間になれと!」
勿論、そんな事は、びた一文、言った事などないが、まぁ、良いだろう。
「そうなの?」
「ええ、彼は、涙を流して、僕に言いました。 師匠と呼ばせて下さい……と」
……決まった!
「ふーーん、で、ここで、何やってるの? 私が、最初のお客さんになってあげる」
まったく俺の話を聞いてないね、カリナさん。
「えっと、自転車って乗り物に乗って、後ろの広場をぐるっと一周してくるんですよ」
俺は、こっこり教えてあげたのだが、自転車は、1台しかないので、宣伝から帰ってくるまで、お客さんを待たせる事になってしまう。
カリナさんだけなら、言って待ってもらうんだが……カリナさんの後ろに2~3人並び始めた。
ちょっと焦る。
こんな時に、ウィズが居てくれたら、二人で対応出来るのに……
泣きそうになっていた俺の目に、救いの神が現れた!
「博人さーーん!」
ウィズの取り巻きが帰ってきたのだ!
良かった!
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「最初は、俺が運転する!」
カリナさんがお客さんだからな! その後は、こいつ等に任せるとして……
「ささ、カリナさん、後部座席に着席して下さい」
自転車の後部キャリアに座布団が置かれて席としてある。
ちゃんと踏み台を用意して、スカートでも横乗りしやすくなっております。
「ちょっと、怖いわね」
「大丈夫! 僕を信じて下さい。 しっかりつかまって!」
ぽにゅっ
カリナさんが俺に抱きついた、今、この瞬間……俺の背中に、世界中の幸せが集まった気がした。
ずっと、このまま…… いや、行かなきゃ駄目だな。
「い、いきますね!」
俺は、気持ちを切り替えて、自転車を走らせた。
この広場を選んだのは、平坦な道で、デコボコが少ないからだけど、やっぱ、アスファルトと違って、結構衝撃がくるな……
「思ったより、スピードでるんだね」
カリナさんが言った。
「沢山漕いだら、もっとスピード出ますよ! スピード出します?」
少しでも衝撃が少なくなるよう、ゆっくり走っていたのだが……
「うん! 博人君、飛ばして!」
カリナさんのご要望とあれば!
「了解!」
俺は、ペダルを漕ぐ足に力を込める!
「もっと、もっとーー!」
カリナさんが喜んでくれてる!
自転車は、速度を上げて行く……
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「あっ、帰ってきた! それじゃ、次のお客様、もうすぐ、到着ですので、ご準備ください」
出発地点へ向かって走る自転車が見えたので、ウィズの取り巻きが、次のお客さんの準備にとりかかる。
「おい、早くないか?」
「お客さん待たせてるから、急いだんだろ?」
「いや、速いって!」
「いいから、順番待ちの列の整理に行けよ」
ウィズの取り巻きが話をしている横を、凄いスピードで駆け抜けていく自転車。
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「うおおおおぉぉぉーーー!!」
シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ……
「カリナ! 左!」
「はいっ!」
カリナが、体を左に傾ける!
ギャギャギャーー!!
自転車が倒れるんじゃないかってくらいに傾きながらも、スピードを落とさずにコーナーを曲がる!
俺と、カリナと、自転車が、一体になった感覚…… いける! 優勝は、もらったぜ!
……その後、広場を3周して、自転車が停まったのだが、その様子を見ていた客の半数が、怖がって帰ってしまい、ウィズの取り巻きから怒られる博人だった。
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「ごめんね、私の為に……」
カリナさんが、俺に言ったが、調子に乗ったのは、俺だ。 気にしないで欲しい。
「僕の方こそ、危ない運転でした。 お詫びに、どうです? 家に遊びに来ませんか? 父さんが車でこっちの方に来てるので楽ちんですよ」
ナイス俺! 自然な流れで誘えた! なんて積極的なんだ、俺!
「よし、博人の家も見てみたいしな!」
「勿論です……よ…… って、ウィズ?」
いつの間にか、ウィズが会話に参加していた。
ウィズは、いかがわしい店の近くまで行ったのだが、勇気が出ず途中で引き返して来たのだ。
「そうね……みんなで、お邪魔しちゃおうかしら!」
「う、うぅん、ぜひ……」
ああ、カリナさんが来てくれるの嬉しいんですが、ウィズの参加も決定事項なんですね……
俺は、諦めて、父さんに電話をかけて、迎えに来て欲しいとお願いした。
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ブロロロ……
「博人、もう友達できたのか? 良かったな」
運転席の父さんが、助手席に座る俺に言った。
「エティゴーヤさんとこの、カリナさんと、領主の孫のウィズだよ」
後ろの席に座る二人を、紹介したが、カリナさんは、知ってるか。
「女の子、見た顔だと思ったら、やっぱり! うん、可愛いねー、博人の彼女? それとも領主のお孫さんのウィズ君と付き合ってるの?」
父さん、何を言い出すんだ! まったく!
まだだよ…… フフ、気が早いんだから!
エティゴーヤの所と領主の屋敷に寄って、俺の家に遊びに行くと報告してきた。
電話が無いと、ホントに不便だわ。
なので、父さんが、魔導通信機をエティゴーヤの所と、領主の所に置いて、何かあったら連絡するように言った。
これで、何かあっても安心だね!
「どこから!」
父さんに言ったが、いつものように、のらりくらりと、はぐらかされた。
気にした方が、負けなんじゃないかと思うようになってきている……
「女……、俺は、領主の孫と言っても、末っ子だから、後は継げないからな、屋敷を目にして、金目当てでそう考えてるのだったら、やめとけ」
ウィズがカリナさんに失礼な事を……
「ウィズ様、お言葉ですが、そもそも、恋愛対象以前に、あなたに、興味がございませんですわ、オホホ」
カリナさんが笑顔で、怒っていて……少し怖い。
「み、みんな、家に行ったら何しようかなぁ? ねぇ、カリナさん、ウィズ!」
今から、自宅へ招待するのに、険悪な雰囲気になるんじゃないよ!
話題を変えよう!
「キャスカ君に会えるのが、楽しみだわ。 デリカシーの無い、ボンボンと違って、紳士だから」
「もう、カリナさん、やめときなよ!」
「気にするな、博人、キャスカもこんな年上女の事なんで嫌だって言うから」
「だから、やめろ、お前ら! 父さん、大人なんだから、なんとか言……って……」
この野郎! 笑ってやがる父さんを見て、頭にきた。
父さん、楽しんでるでしょ?
実業家として俺は、歩き出した。
自転車事業は、従業員( ウィズの取り巻き )に実務は任せて、恋だ愛だと忙しい、精々、自転車操業ならないように頑張るさ。
……従業員の名前くらい覚えてやった方が良いよな?
って事で、次回も、乞うご期待!




