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第11話 喧嘩は嫌だし、したくない

嫌な予感……

俺は、女の子達と仲良くしたいだけなのに……


7月15日 14:52



 この地域を治めると言う領主の孫のウィズが俺達の傍へと近づいてくる……

 チンピラ的風貌及び取り巻きを引き連れて……俺とは違う人種の、そうクラスで言う所の目立つグループに所属する方の人種……うん、合わねぇタイプの奴だと思う……

 俺は、一般人、その他大勢ですから、どうぞ気に留めないでください……


「おい、お前!」

 ウィズが博人の前で立ち止まって言った。


「そうだ! 父さん達が待ってるかも! キャスカ、カリナさん戻ろうか!」

 お父様を待たせるなんて、出来ない! 俺は、模範的な息子だから!


 博人は、立ち上がって立ち去ろうとした。


「貴様に言ってるんだ。 なぜ、行こうとする?」

 チンピラチビが俺に言った。

 俺は、用がないので、軽く会釈してその場を立ち去

「だから、ちょっと待て! なぜ行こうとするんだ! 俺が呼んでいるのに!」

 嫌な予感しかしないからです! ……とは言えない小市民の俺。

 仕方ないか……


「なんだよ? 俺は、お前になんか用がないぞ?」

 俺は、丁寧に聞いてやった。

 このカスが!

 何様だ! 領主の孫様か? 知らねぇよ! 俺は日本人で、お前のクソジジィの領地の領民でもなんでもないからな!

 ぶっ殺すぞ!


 ……とは、顔に出さずに、ニコニコして聞いた。


「博人君、不味いよ……領主様の……」

 カリナさん、解ってるよ。

 でもね、コイツは、孫だろ? 領主じゃない。

 そいつが、爺さんの権力を背景に圧力をかけてきてるんだ。

 頭にこないの?


「貴様……俺が誰かを知らないのか?」

 チンピラチビが口角をヒクヒクさせながら言ったが、知るか。

「ああん? 領主の孫か何か知らねぇけどな、偉いのはお前の爺さんであって、お前じゃないし、そもそも、俺はお前の爺さんの領地の人間じゃないしな! 大体、お前いくつだよ?」

 俺は、腕組しながら、生来の育ちの良さから丁寧に聞いてやった。

「お前なぁ、物の言い方ってあるだろ? 相当育ちが悪いんだな…… まぁ、いいさ。 俺は、16歳だが? それより……」

「なんだよ、やっぱ、歳が近いと思ったけど、同じ歳かよ! 俺は、博人、町田 博人だ、宜しく!」

 同じ歳だと解ってなんだか親近感が出た俺は、握手を求めて手を差し出す。

「おお、俺は、ウィズだ、宜しくな! って、違うだろ! お前! ここらで見ない顔だが、何者だ! それに、その恰好……」

 確かに、俺の恰好は、ここらの人と違うから、目立つのかもね。

 うん。


「俺は、一般市民だ! それじゃ!」

「おう! ご苦労さん!」

 俺が言ってウィズが答えたので立ちさ


「だから、ちょっと待て!」

 ウィズが俺を呼び止めたが、……なんだ? まだ、何か用?


 博人が嫌々振り返る。


「だから、お前は、何をしに……なんだ、その顔! 露骨に嫌な顔をするな!」

 ウィズが言うが、……だって、嫌なんだもん。


「痛い目に合わないと解らぬようだな……」

 なぜそうなる? ウィズが理不尽な事を言い出した。


「ウィズ様、俺達が……」

 ウィズの取り巻き連中が言い出した…… カリナさんもキャスカも不安そうな顔をしてるし……嫌だなぁ……


「おい、ウィズ、暴力で、しかも、家来みたいなのに頼ってどうこうしようなんて、凄くカッコ悪いぞ? 弱いからって、お前、そんなんじゃ、人に嫌われるから止めといた方が良いと思うけど?」

 人の良い俺は、忠告してあげた。

「何だと、貴様!」

 なんだか知らないがウィズが凄く怒りだした。

 多分カルシウムが足りないのだろう。

 煮干しを食べると良いんじゃないかな?


「お前ら、下がってろ! 俺がやる!」

 ウィズが、取り巻き連中に言った。

「ウィズ様! 無茶しないでくださいよ!」

「あんな野郎、ぎったぎたにしてやってくださいウィズ様!」

 取り巻き連中が、ウィズに言って……お前ら、止めてやったりしないんだ……


「お兄ちゃん、何してるの? 危ないよ……俊夫さん達、呼んでくるよ」

 キャスカが、言ったが、子供の喧嘩に親を巻き込むのもどうなんでしょうね?

「キャスカ、良いから……お前は、カリナさんを連れて、店にもどってな! 直ぐに俺も行くから」

 俺は、キャスカに、カリナさんを無事に家に送り届けるように頼んだ。

「でも、お兄ちゃん……」

「良いから、早く行けよ!」

 キャスカがケガなんてしたら……俺がケガするより嫌だからな! 頼むから、早く行ってね!


 キャスカが、カリナさんの手を引っ張って走りだした……ありがとな。



「よっしゃ、嫌だけど、絡んでくるお前が悪いんだからな」

 俺は、ストレッチしながらウィズに言ってやる。

「うるせぇ! この不審者め! おじい様に代わって俺が成敗してやる!」

 ウィズが言っ……誰が不審者だ!


 見せてやるぜ、体育の授業で覚えた柔道を!


「うおおおーー!」

 ウィズが飛び込んできた!

 怖ぇぇぇ!


 来るんじゃねぇ!

 

ガッ!


 俺は、左足によるローキックで、ウィズの突進を止めると、腰を回転させて、右のハイキックをウィズのこめかみへと叩き込んだ!


「ぐあっ!」

 ウィズが崩れ落ちる。

 ローとハイが綺麗に入った。

 自分でも驚きだ…… なんで? 体が勝手に動いたような?


「ウィズ様!」

 わわわっ! 取り巻き連中が騒ぎだした!

俺は、すかさず寝てるウィズに駆け寄り、抱き起す! 寝てんじゃねぇ! 取り巻きが俺に襲い掛かる前に起きろ!


「……うっ、う~ん……もう、食べれないよー!」

 ウィズが、寝ぼけて……


「あほかー! 起きろっ!」

 俺は、ウィズにビンタして必死に起こす!

 ほらぁ! お前の取り巻きが、俺に向かって来るから! 早くしろ!



富山県 黒部峡谷ーー

7月15日 15:12


 地下深くにその施設があった。

 その施設は、黒部ダムで発電された電力を使って稼働している。


 施設の中の一室、机が一つ置かれ、壁には、大きなモニターが幾つかあり、施設内を表示していた。


「所長、第4セクションからの要請の件は、いかがいたしましょか?」

 白を基調とした制服に身を包んだ女性が、所長と呼ぶ男性に声をかける。 

「ああ、それなら、三枝君に、予算の申請書を作成してもらっているから」

 部屋に置かれた机に着席している男性は、書類に目を通しながら答えた。


「わかりました。 それと、所長、栃木支部の町田さんの件ですが……」

 女性の言葉に、所長の手が止まり、顔を上げた。


「俊夫……いや、町田の行方が分かったのか?」

「いえ、以前、行方は不明ですが、あの事件は、例の……」

 所長は、女性が言おうとした事が自分への質問であると分かり、再び書類に目を落とす。

「君が、知ることではないよ、下がって良いから」

「……はい、失礼します」

 女性が、所長に一礼して、部屋を出て行くと所長は、電話を手にした……




「ウィズ様を放せ! こいつらが、どうなっても良いのか?」

 ウィズの取り巻きが、キャスカとカリナさんを拘束しているのが見えた。


「ふ、ふ、ふざけんなっ! キャスカもカリナさんも関係ないだろう!」 

 あ、頭が沸騰しそうだ……


「お、お兄ちゃん、ごめん」

 ああ、キャスカ……お前が、なぜ謝る……悪いのは、そいつらだ!


 博人は、ウィズをポイっと捨てると、立ち上がり、キャスカとカリナを拘束している取り巻き連中を睨みつけた。


「すぐに、二人を放せ……」

 でないと、お前らを……射殺する。


 博人は、ズボンに差していたグロック 19、自動拳銃に手をかけていた。


「馬鹿が! ウィズ様に手を出した、お前が悪い! これから、お前をボコボコにした後、こいつらを可愛がってやるんだからな!」

 取り巻き連中……うん、殺ろう!

 俺は、拳銃を


「やめろっ!」

 声がした。


「……ウィズ?」

 声のする方を見ると……ウィズだった。

 邪魔すんのか? もう俺は、我慢しないぞ、拳銃でお前らを……


「お前ら、俺に恥をかかせるんじゃねぇ! 俺は……兄さん達に比べて、出来が良くないが……女、子供を使うようなクズじゃ…… そう、俺は、貴族の誇りまで捨てちゃいない! お前らも、貴族なら、そんな真似は、やめろ!」 

 ウィズが言った。

 そうか……少し、見直した。


「おいっ! だ、そうだけど、どうすんだ?」

 言ってやると、取り巻き連中がキャスカとカリナを解放した。

 アイツらも、根っから悪人じゃないんだろう……ただ、イキがってただけか……


 人殺しにならなくて、良かった。



「博人! お前、強いな。 俺が喧嘩で負けるなんて……しかも、秒殺って」

 ウィズが言ったが……俺も不思議だ。

「……まぐれ、もう、やりたくない」

 ホントに、喧嘩などしたくないので、正直に言った。

「ぷっ! またまた! 今日は、すまなかった。 でもな、そんな恰好でいたら、不審に思うのも解ってくれ」

 ウィズが俺に謝って、行ってしまった。

 謝罪を受けたら、俺は、何も言う事がない。

 それよか、カリナの話と感じが違うな? 多分、イメージが先行して地域の人からレッテルでも貼られてるんだろうと思った。

「……そんなに悪い奴じゃないな」



ブロロローー……


「その時ね、お兄ちゃんが、ばちーんって、キックしたの!」

 父さんのオフロード四輪駆動軽自動車の中で、キャスカが、俺の事を父さんと母さんに興奮して喋っている。


 フフフ……もっと言え!


 俺は、気分が良い!


「ふうん」

 父さんの感想は、それだけだった。

「博人、キャスカに何かあったらどうするの? ちゃんと、考えて行動しなきゃダメよ!」

 母さんに至っては、俺に注意する始末。


「それでね、相手が、だだだって来た時……」

 キャスカが興奮して、また、最初から話し出した。

 キャスカ……みんな聞いてないぞ。


 まぁ、可愛いカリナさんと仲良くなれたし、キャスカから尊敬と信頼を得たので……町に行ってよかったな。

 俺は、車窓から、外の風景を眺めながら、そう思った。



町田 宅、博人の部屋ーー


 町で買ってきた お土産を広げた。


「……」

「……」


 キャスカと俺は、無言で買ってきた物を眺めている。


 木彫りの気持ち悪い人形や、ワイルドな動物の牙とかで作ったネックレス、変な太鼓? と、何だコレ? 楽器? よくわからない物……

 テンションが上がって色々買ったが……こんなもん、要るか?


「お兄ちゃん……」

「言うな、キャスカ! ちゃんと、飾るから! いやー、最高のインテリアだなぁ、部屋が狭くなるけど」

 俺は、泣きそうになりながら、自分に言い聞かせるように言った。


「……」

「お風呂入ってくる!」

 博人は、キャスカの視線に耐え切れず部屋を出て行く。



 キャスカは、一人部屋に残され、椅子に座るとズボンのポケットに手を入れる。


「……博人、ありがとう」

 ポケットから取り出した髪飾りを大事そうに握ってキャスカが呟いた。


喧嘩に勝った。

思いの他、勝負があっさりついてしまったので、俺の必殺柔道をお見せする事が出来なかったが、何で、俺は強いんだ?

まぁ、キャスカとカリナさんを守る事が出来たんだ。

強いに越した事はないので、気にしない。

10話を超えたしな!

って事で、次回も、乞うご期待!

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