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第1話 ある日は、突然、唐突に!

楽しんでもらえたら、嬉しいです。


 人は、生まれた時から、誰かの席を奪っていく。

 悪意、善意の話ではない。

 物事には、定数が存在するってことだ。

 自分が得れば、得られない人が出る。

 それが何かって?

 ……いや、そんな話があったなって思っただけだ。


 

 どこにでもあるような、新興住宅地。

 どこにでもあるような、一軒家。

 どこにでもあるような、家族の物語……



チュンチュン

 雀達が楽しげに鳴いて、その日は、朝から快晴だった。


7月13日 午前 6:48


 栃木県佐倉市、地方都市郊外の田んぼが広がる場所だったところに出来た新興住宅地。

 その中に、この物語の主人公、博人の家、町田家がある。

 町田家の家屋は、そんなに大きくは無い。

 だが、家族3人が住むには十分な広さの家であった。


「おはよう……」

 学生服に着替え終わった俺は、眠たげに目を擦りながら二階の自室から降りてリビングダイニングへとやってきた。


 町田 博人(16歳)

 俺は、不良と言うわけでもなく、親に反抗的でもなく……手のかからない子であると自分では思っているが、まぁ、ごくごく普通の高校一年生の男子。



「おはよう、博人、テーブルにあるから、朝ごはん食べちゃいなさい」

 忙しそうに、お弁当の用意をしながら言ったのは、俺の母さん。


 町田 朱美(42歳)

 近所のスーパーにパートで働きに行きながらも、家事をこなしてくれている。

 ムチムチしたお尻で年齢より若く見える、最高の母さんだ!

 息子として、その感想は、どうかと自分でも思うが……可愛いと思う。

 俺は、マザコンなのだろうか……。

 いや、母さんが可愛いのが悪いのだ。

 まぁ、頭がおかしいと思われるだけなので、母さんに可愛いなどとは言わないがね。


「おはよう」

 そんで、朝食を食べながらテレビを見てるのが、俺の父さん。


 町田 俊夫(45歳) 

 鳴労物産で働くサラリーマンだ。

 適当な人……会社で、ちゃんと仕事が出来ているんだろうか? 不安になる……

 でも、毎月、ちゃんとお給料が入っているから俺達3人が暮らしていけているのだろう。

 俺と母さんを養ってくれている、ありがたい人なので、感謝の気持ちは忘れない。

 まぁ、その事を口に出すってことは、ありえないけど。



 テーブルを見ると、俺の分のご飯と味噌汁、目玉焼きが用意されていた。 

 寝起きであまり食欲が無いが、せっかくムチムチ朱美が用意してくれたのだ、ありがたく頂こう!

 


 いつもの朝、いつもの風景、いつもの日常だった。

 席に着いた俺は、目玉焼きを、ホカホカご飯の上に乗せて、醤油をかける。

 半熟の黄身を割って、卵かけご飯みたいにして口に運ぶ……


モシャモシャ……


 間違いなく旨い。

 俺が卵が好きなだけじゃない、朱美の作ってくれる食事が、美味しいからだな。

 うむ、愛情がこもっとる。

 キラッとして、俺は、母さんの尻を見る。

 ムチッとした良いお尻、本日も平和なり。


「博人、もう少ししたら出るから、急げよ」

 俺の向かいに座る父さんの声が聞こ……ちょっと待て!

「まだ、7時前だよ、早くない?!」

 毎朝、このお父様に駅まで車で送ってもらっている俺が言った!

 駅へのバスは、一時間に一本、しかも電車と接続した時間帯じゃないから、次の時間のバスだと学校に間に合わない!

 つまり、車で送ってもらわないと駅まで自転車で40分近くかけて自力で行かなければならないと言うことだぞ!

 そんな……

 可愛い息子が困っているのに、貴様は、平気なのか!

 俺は、当然の如く抗議の視線を向けるが、

「今日は、会議があるんだよ、送って欲しかったら、早く食え」

 だって! じゃぁ、仕方ない。

 うん、俺は、素直だからな。

「もう! 昨日の内に言っといてよ!」

 抗議もそこそこ、時間の惜しい俺は、急いで喉に食事を押しこんでいく!


「ちょっと、博人、慌てて食べると体に悪いわよ!」

 母さん、モタモタして、この今になって言い出した段取りの悪いお父様に置いてかれたら、駅まで自転車になってしまうんだよ! ……と、説明したいが、その時間も惜しい!

 俺は、無視して食事に専念した。


7月13日 午前 7:13



 




……カッ!


 窓の外から強烈な光と爆発音!

 目の前が真っ白に……


 その時は、突然訪れた。

 日常の生活をおくる俺達家族は……




 テレビの画面に、爆発があった住宅地が映し出されていた……

「本日、T県 S市の住宅地で起きた爆発によって、重軽症者が多数出て市内の総合病院に緊急搬送されました。

 また、死者、行方不明者の数が現在わかっているだけで、23名との事です。

 現在、こちらの現場では、火災などは収まっているようですが、規制線が張られ、警察と消防では、事件事故の両面で捜査中との話です」

 現場の中継から、スタジオに画面が変わる。

「朝の住宅地爆発現場からの中継を、お伝えしました。

 次は、T市の小学校の……」



ブツッ!


「嘘だろ……だって……」

 俺は、テレビを消した。

 今のニュース……

 この家のあった住宅地でおきた爆発? のニュースだった。

「いやいやいや、俺、生きてるし……家も別に変った所が無いようですけど?!」

 テレビに向かって叫んだ。

 いや、喚いて何になる? 考えろ、考えろ俺!

 ……あの時、強い光と爆発音に包まれ、次に気がついたら、家の中、普通に椅子に座っていた。

 一瞬の事で、特に何も無かったから、そのまま急いで飯食って、父さんと一緒に出掛けようと玄関を開けた俺……




数分前ーー


「……森?」

 家の前に広がる木々を見つめて呆然としている俺。

 アスファルトは?

 周りの家は?

 代わりにあるのは土の地面と草木が生い茂る森


「博人! その辺見てくるから、家に入ってろ!」

 父さんが俺に言うと、軽自動車で走って行ってしまった。



 俺は……落ちつこうと思って、父さんに言われた通り、取りあえず家に戻って……それから、テレビをつけると、俺達のニュースがやってたって訳だ。



 なるほど! そうか!

 朝食を食べてたら、家ごと森に引っ越してたってだけじゃん。

「おかしいだろ!」


 テレビがついたって事は、電気がきてるって事だろ? 電線もないのに?!

 ……水は?!


ジャァァァァ……


 蛇口から普通に水が出た。

 よかった……


「いや、良かったけど、良くないだろ! 何これ、凄く怖いんですけど!」

 俺は、叫んだ!

 叫んだが、部屋は、静まり返っていた……

 

 まずは、落ち着こう。

 うん、落ち着こう、こう言う場合は、冷静に対処を……あれ、母さんは?

 パニックになっていたのか、母さんの存在まで考える余裕が無かった俺。

 改めて辺りを見渡すが……母さんの姿が見えない!


「か、母さん? 母さんドコ――!」

 俺は、家の中を走り回った!


 訳の解んない事の連続で、頭の処理が追い付かない!

 トイレにも、風呂場にも居なかった。

 何処に行った?

 一階、リビングの窓の外で、母さんが緑色したゴブリンみたいなのと戦ってるし、ホントに一体、母さんは何処に行ったんだ?


「母さん、2階にいるの?」

 俺は、2階へと上が……って、うおおおおぉぉい!


ガラァーー!

 リビングの窓を開けると、母さんが、1、2、3……5匹のゴブリンと対峙しているのが見えた。

 母さんの足元に2匹のゴブリンが倒れている……

「流石、母さん、殺ったね!」

 じゃないよ! 何だ、何なんだ! 解んない、解んない、解んない!


「博人、危ないから、家から出ちゃダメよ!」

 拳銃を構えた母さんが俺を見ずに言った!

 カッコいいぜ、母さん!

「拳銃!」

 俺のツッコミの間に、素早く3匹を射殺した母さん。

 色々言いたい事があるが、残り2匹!

 母さんが始末にかかるが……

「ギギィーー!」

 ゴブリンが塀を乗り越え逃げてしまっ


ドンッ!


 家の外で鈍い音がした。


 俺と母さんが外に出ると、逃げたゴブリンが、父さんの軽自動車に撥ねられたみたいで、耳と口から血を流して倒れてた。


「おい、母さん、博人! 落ち着け、どうやら、ここは、日本じゃ無いみたいだそ!」

 車から降りてきた父さんが言ったが……

「……あ、うん。 でしょうね」

 ピクピクしているゴブリンを見て思った。


 もう一匹は?

「グギギーー!」

バッ!

 最後のゴブリンが仲間の仇を討つためか、父さんに襲いかかった! 危ない!

「父さ」


パンッ!


 額を撃ち抜かれ、ゴブリンが倒れた。

 グロい……

 うん、つまり、父さんに射殺されたって訳だ! なるほど!

「なるほどじゃねぇぇぇ! 何で? 父さんも、母さんもそんなモン持ってるの?!」

 アワアワなりながら叫んだ博人。


「お父さん、お帰り!」

「ただいま、母さん、大丈夫だったか?」

 母さんが背中からジーパンに拳銃を差して、父さんの腕に抱きついていた。


 拳銃……


「博人、家に入ろうか?」

 父さんが、真剣な顔をして俺に言った。

 この場所も、母さんにも、父さんにも、違和感しかない。

「ああ! 俺も、聞きたい事が山ほどあるからな!」

 博人は、キリッとして、まっすぐに父親を見据えて言ったが、俊夫は無視して、朱美とイチャイチャして家へと入っていった。


「なんだよ、お前ら!」


 博人は、そんな両親を追いかけて、家へと向かった。


町田一家が飛ばされた。

日本と異なる異世界に。

どこかに飛ばされた不安と共に父さんと母さんにも戸惑う博人。

って事で、次回も、乞うご期待!

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