ⅡⅩⅧ「お食事しました。」
「へぇ、1日で青ランクにまでねぇ。凄いじゃないか」
「そうなんですか?」
ジェスさんが紹介してくれたお店の女将さん、ランマさんが笑いながらテーブルに料理を置いた。
お店には私とジェスさんのみ。貸切状態です。
テーブルには所狭しと料理の載ったお皿が並んでいる。お肉の料理が多いようだけど、土地柄とかかな。
ジェスさんは私の対面に座り、モグモグと目の前の料理を頬張っている。
そういえば、最近は魔王様とくらいしか一緒にご飯を食べることもなかったな。
「そうだよ。これまでで1日で青ランクにまでいったのなんて、それこそ『勇者様』くらいのもんんさ」
「……へぇ」
「なんだい、反応が薄いねぇ。アンタ、センって言うんだろ? 『勇者様』は確か、センリ、とかいう名前だったし、アンタの名前の由来とかじゃないのかい?」
「まぁ、そんなところです」
由来どころか私の本名なので。
「それにしても、ジェスにとって初の担当になったってところかい?」
「モグモグ……は、はいです!」
「担当?」
「まぁ、受付嬢は基本的に登録をした冒険者をそのまま担当するもんなのさ。冒険者的にも、登録時に知り合った受付嬢がやりやすいってのもあんだけどね」
「なるほど」
確かに、毎回毎回知らない人を通すよりも、知っている子の方がね。私も、依頼する度にジェスさんを探してたし。
しかし……私が初の担当とは。
「ジェスさんて、受付嬢になってから火が浅いんですか?」
「そうさね、今年で3年目だったかい?」
「さささ3年と2ヶ月でございますですっ」
「へぇ……」
3年以上……。その間に、担当なし?
モグモグと料理を懸命に頬張っているジェスさんを見る。
小柄で新緑の髪と瞳で小動物感溢れる可愛さ。
「なんでこれまで?」
「こここ子供だと思われて、し、仕事を任せるのは不安だとっ!」
「これでもジェスは24なんだけどねぇ」
「24⁉︎」
「24でございますぅ……」
ションボリとスプーンを咥える姿、それが更に幼くみせているのが分かっているのでしょうか。
それにしても、24……私より6歳上……。
思わず「これが……」という思いでジェスさんを眺めてしまう。
正直に言おう。初見は小学生だと思いました。すみません。
「ふぇぇ、ななななんで頭を下げられているのでございますかぁ⁉︎」
「いえ、申し訳なかったな、と」
「ままままさか! 初の担当でううう嬉しい限りでございますっ」
見事に勘違いされたようです。
「まぁ、そんなわけでジェスは3年も受付嬢をしているのに、まだギルドでは見習い扱いなのさ」
「3年と2ヶ月でございますぅぅぅっ」
「はいはい。ほれ、これもお食べなさいな」
そう言ってジェスさんの目の前に置かれた山盛りのパスタ。
潤ませていた目を輝かせて頬張り始めたジェスさん。あの小さな身体のどこに入っていくのだろうか。
あれだけ食べても成長しないとは、人体の不思議だね!
「そそそその、まだ見習いではございますが、仕事はしっかりとさせていただきますので、ご心配ございませんですっ」
「もちろん、これからもよろしくお願いしますね。ジェスさん」
頷いてみせると、嬉しそうに笑みを浮かべられた。