ⅡⅩⅥ「ギルドに登録しました。」
「ところで登録はこれで終わりですか?」
「ああああと、登録証を発行いたしますので、しょ、少々お待ち願いますでしょうか!」
相変わらずアワアワしながらも、私が書いた紙を持ってギルドの裏手へ駆けて行った。
小動物、可愛い。
微笑ましく思いながら、ジェスさんを待つ間に周囲を見渡してみる。
意外と男女比率は同じくらいなんだなぁ。危険な仕事だろうし、男の人が多そうだと思ったんだけど。
剣以外にも名前のよく分からない武器がたくさん。いかにも魔法師といったローブを着ている人も何人かいるな。
私くらいの年齢の子もいれば、50代くらいに見える人もいる。
まぁ、冒険者に年齢制限とかないだろうし、戦えれば現役か。
「おおおお待たせいたしましたでございます!」
裏に下がっていたジェスさんが、手に一枚のカードを持って戻ってきた。色は初心者の白。
「ではっ、こちらをどうぞ! 失くした場合は、も、もう一度費用を払っていただければ!」
「はーい。じゃあ、こちらが登録費用で」
「ははははいっ、確かにお受け取りいたしましたでございます!」
初期費用である銀貨3枚をジェスさんに手渡し、カードを受け取る。
カードには名前と役職である魔法師、そして登録日が書かれていた。
「いいいい依頼をこなしていきますと、ランクが上がっていきますっ! 受けられる依頼にもランク制限がございますので、登録ランクの一つ上までの依頼は受けられます! 依頼ランクは登録証と同じ色で区分けされておりますです!」
「なるほど。じゃあ、私は緑までは受けられるんですね」
「そうでございますっ」
「今日からでも受けられるんですか?」
「それは、だ、大丈夫でございますが……その、そそそ装備などは……?」
私の服装は普段の服の上からフード付きコートを着ただけ。荷物も小さな鞄のみ。
魔法師といえど、接近された場合を想定して短剣を所持したり、補助のための魔道具を持っているものらしい(宮廷魔法師談)。
「あー、私はいつもこのスタイルなので、お気になさらず」
「そそそそうでございますかっ。では、あちらが依頼板となりますので、お受けになるいいい依頼書をお持ちくださいませです!」
ジェスさんの指差す方には、大きな木板にハガキサイズの紙が何枚も重ねるほど貼られている。
色の割合は冒険者として一人前とされる青が多いかな。それより少ないのが緑、白、紫は数える程しか見えない。
一流とされる赤は貼り出されることは基本的になくて、ギルドから個人指名で依頼されたりするらしい。
依頼板の前には少ないくない人集りができていて、ジェスさんに断ってからそれに混ざった。
うーん、みんな体格がよろしくて……。
「ちょっと失礼しますよ、っと」
ヒョイヒョイと人混みを縫って、人垣の前まで出る。そして適当に緑色の紙を数枚ひっぺがした。
「ふぅ。取れたのは4枚か」
中身を確認すると、どれも魔物の討伐依頼だった。
魔兎が10体、魔犬(魔狼よりも小柄、力は弱いが動きが更に素早い)が8体、魔猫(尻尾が3本の猫、小規模の幻覚魔法が得意)が5体、魔鼠(猫並みのサイズ、そして主食が猫)が20体。
どれも人の住む土地に発生しやすい魔物だ。元の動物が小柄な分、魔物になってもそれほどの脅威ではないね。
ここに来るまでにも何体か倒してきたけど、魔狼とかに比べれば確かに緑にはちょうど良い。
「ジェスさん、とりあえずこの4枚受けるね」
「ふぇぇ⁉︎ さ、最初からままま魔物討伐でございますか⁉︎」
「駄目ですかね」
「ききき規則的には問題ございませんが、最初は、け、経験者についてもらったり、白の雑用などをされたりっ」
「あぁ、なるほど。大丈夫、私は魔物討伐は経験あるので」
「そ、そうなんですか……?」
おおう、ウルウルした瞳で見上げてくるジェスさん、小動物感が増して可愛い。
思わず手を伸ばして頭を撫でた。
「ふぇぇぇ⁉︎」
「ジェスさん可愛いなぁ」
「か、か、か、かわいぃ……⁉︎」
恥ずかしそうに照れてる姿はとても庇護欲がそそるものです。
「それで依頼は受けられるんですか?」
「ふぁぁぁ…………はっ! だだだ大丈夫でございますですはいっ!」
我に返ったジェスさんによって、依頼書に受諾の印が押された。
あとは魔物退治を終えたら、その横に満了の印が押されて依頼達成になる。
「と、討伐依頼は必要となる魔物の部位が必要となりますので、おおおお忘れのないようにお願いしますです!」
「了解です。じゃあ、行ってきますね」
「ただいまー、ジェスさん」
「ふぇぇぇぇえええ⁉︎」
討伐を終えてギルドの受付に討伐対象の部位の入った袋を置くと、ジェスさんがひどく驚いた声をあげた。
何事かとギルド内から視線が集まるが、ジェスさんはそれどころではないようで。
「だだだだって、いいい今さっき、ふぇ⁉︎」
「あはは、今さっきって、依頼を受けてから1時間も経ってますよー」
「いいい1時間しか経ってないんですぅぅぅ!」