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召喚先は魔王城!?  作者: Ryo
召喚編
2/29

Ⅱ「魔王様から説明されました。」

早くもブクマと評価を頂きました!

感謝です!

 異世界へ召喚されてから早3日が経ちました。

 謁見の間での一件の後、私はこの城のメイドさんらしき人の案内で一つの部屋へと案内された。

 さすが城なだけあって、そりゃ広かった。ワンルームに一人暮らしだった私だが、それの5倍くらいあるんじゃないの?

 部屋にある調度品も明らかに高そうで、ベッドなんて天井付きフリル付き、触り心地は神。フッカフカのモッフモフです。

 ちょっと乙女チックというか、私としては若干恥ずかしいデザインだけど、寝心地は最高だったから文句はない。

 城内を歩くのはさすがに駄目らしく、この部屋でゴロゴロして運ばれてくるご飯を食べるのみ。

 そして、このご飯がまた格別だった。

 「魔族だし、何食べんの? 人間?」とか疑っていたけど、普通にフランス料理みたいな見た目だったし味は美味かった。もう一度言います、美味かった。

 そしてただ今、本日のお昼を頂いております。メニューはデミグラスソースのかかったお肉です。何の肉なのかは分からないし、そもそも本当にデミグラスソースなのかも分からないけど。異世界だし。

 私に言えるのは一つだけ。ただひたすら美味しいということ。おかわりが欲しいです。

 だだっ広い部屋の中、ポツンと置かれているテーブルにて一人モグモグと幸せを噛み締めていると、ドアが控えめにノックされた。

 これは私のお世話をしてくれているメイドさんの合図なので、口の中のものを慌てて飲み込んだ。


「はーい」

「センリ様。魔王様がお見えです」


 なんと、魔王様ご本人がいらしたようです。説明するとは言ってたけど、魔王様直々なんですか。

 とりあえず許可を出すと、ガチャッと音を立ててドアが開かれた。

 入ってきたのは、相変わらずのイケメン魔王様。謁見の間以来です。


「食事中すまないな。今しか時間が取れないんだ」

「いえいえ。食べながらで大丈夫ですか?」

「構わない」


 既にフォークを構えている私に苦笑されつつ、魔王様は私の前にある椅子に腰を下ろした。


「お昼は…」

「そちらが良ければ済ませてしまいたいのだが」

「どうぞどうぞ。ご飯はみんなで食べる方が美味しいと思いますので」

「良い思想だな」


 外にいるメイドさんに声を掛けて、魔王様分の昼食が用意されるまで10分。仕事が早いよ。

 ささっと準備して綺麗にお辞儀して出て行くメイドさんを尊敬の眼差しで見送っていると、魔王様が不思議そうに首の傾げた。


「どうかしたか」

「いえ、メイドさん仕事早くて凄いなぁ、と」

「俺は使えない者を城にあげる趣味はないからな」

「それはそれは」


 というか『俺』ねぇ。


「先日お会いした時は『私』じゃありませんでしたっけ」

「仕事とプライベートは分けたいんだ」

「それは良い思想ですね」


 先程の魔王様と同じ返答をすると、楽しげに笑われた。

 それから暫くはお互い食事をしつつ軽く会話して、中盤を過ぎた頃。


「それで、そろそろ説明に移りたいのだが」

「はい、どうぞ」


 魔王様が手を休めたので私も手に持ったフォークを置いた。私はもう食べ終わるくらいのところ。待っていてくれたようです。

 私が居住まいを正すと、魔王様からの説明が始まった。


「まず、改めてーーー俺は第13代魔王をしている、レオンバルト・デュークランゼだ」

「魔王様は世襲制なんですか」

「今はな。昔はただ強い者を指す言葉として『魔王』という呼称が使われていたが。もちろん、今も弱い者を王とする事はないぞ」


 言外に「自分は魔王にふさわしい力がある」とおっしゃる魔王様。大丈夫、最初から別に疑ってないですよ。

 魔王といえば「力の象徴」とか「暴君」ってイメージがあったけど、何となく目の前の魔王様からはそういった雰囲気があまりないと思っていた。

 なるほど、彼はどちらかというと「王様」って感じだ。確かに。


「何故、世襲制に?」

「魔族は昔はあまり群れる事はなかったんだ。それぞれ個体が強い力を持っていたからな。ただの人間如きに遅れをとる者は少ない」

「なるほど」

「そして、これがお前を呼び出す事になった理由でもある」


 つまり「群れなければいけいない事態」というのがあると。それが私の召喚に繋がるとは如何に。

 首を傾げる私に、魔王様は優雅に紅茶の入ったカップに口をつけ静かにテーブルに置いて続けた。


「人間は、我々魔族と対抗する為に他の世界から『力ある者』を呼び出すようになった」

「それが『勇者』ですか……それにしても、不思議な言い方をしますね。まるで、“人間が勝手に魔族に喧嘩を売ってきた”ように聞こえます」

「信じるかどうかはお前次第だが、実際のところそうだ。我々魔族は元より意味のない争いは好まない。縄張り意識も薄く、己に実害が出なければ相手に手を出す事はないんだ」

「つまり、『人間から魔族が』攻撃される覚えはないと」

「個体では、さすがに把握しきれないがな。少なくとも『魔族』という括りで人間に牙を剥いた事はなかった」


 それが本当だとしたら、人間サイドは随分と身勝手な事だ。

 まぁ、分からないでもない。


 元の世界でも人間は「自分とは異なる存在」に対して、残酷で、無関心で、そのくせ臆病だ。勝手に恐れて、勝手に排除する。


 同じ人間同士ですら肌の違い、言語の違い、文化の違いで争うのだから、そもそも種族の違う魔族に身勝手な恐怖を押し付けても不思議ではない。


「魔王様で13代目ということは、かなり国として続いているんですよね。という事は、魔族への脅威は一時的なものじゃないと」

「あぁ。魔王が治める魔族の国デュークランゼは2000年以上続いている。その間、人間は異世界より勇者を呼び続けているんだ」

「……へぇ」


 思わず目が据わった気がしますね。

 2000年以上もの長い期間となれば、少なくとも20人以上はこちらの世界の人間の勝手で、異世界へ連れて来られた事になりますよ。


「ちなみに、その勇者達が元の世界に戻れた試しは?」

「…すまないが、聞いた事はないな」


 ほうほう。返す方法が分かっていないのに、呼び出し続けるとは。

 しかもその理由が「魔族が怖いから排除したいけど、自分達じゃできないから」だもんねぇ?

 さすがに一個人が魔族全体に喧嘩を売るとは思えないから、恐らくは人間の国の、それも王様主体で呼んでるんでしょう。


「我ら魔族とて、ただ蹂躙される気はない。危害を及ぼすというのなら、徹底的に抵抗しよう。一方的に召喚された勇者達を哀れと思わないわけではないが、殺されてやる程親切にはなれない」

「なるほど。それで? まだ私が呼ばれた理由が分かりません。まさか貴方達魔族も人間同様、異世界の人間を利用して相手を滅ぼそうとしてるんでしょうか。最初に言ってましたもんね、『私の配下となり、勇者を討伐せよ』と」


 これが本当だとしたら、人間サイドにつく気はない。さすがに。

 2000年以上も続けて、それでも懲りずに他力本願で魔族に喧嘩を売るなんて馬鹿だ。赤の他人の為に、何故異世界から来た私達が死力を尽くさなくちゃいけない。

 しかも、目の前に魔王様がいて、魔族の国が存在しているからには、これまでの勇者達はみな敗れて来たんだと思う。

 そろそろ自覚して欲しいですね、『喧嘩を売ってはいけない相手だった』って。


 でも、だからといって私が魔族側に加担するか、と言われれば否だ。やった事は人間側と一緒。

 これで魔族側には元の世界へ返す方法がある、とかなら少しは変わるかもしれないが。

 それでも死ぬ可能性がある勇者討伐は、はい分かりましたと安請け合い出来るものじゃない。


「ふむ、さすがに今の話で人間達の所業に憤り手を貸してくれる、という事はないか」

「残念ながら、私はそこまで幸せな頭はしてないですね」


 目を細める私に苦笑する魔王様は、一呼吸おいて真剣な表情で私と視線を合わせた。


「これもまた、お前が信じるかどうかは任そう。俺から言えるのは、これが限りなく真実である可能性が高いという事」

「何でしょう」

「ーーー人間が召喚している勇者、それは常に同じ人物であり」

「はい?」

「そして、その者の名は『センリ』という黒髪黒目の女だ」

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