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第七話 この世界の事

午前の授業という名の自主学習は終わりを告げ、昼食時間。

俺達は机を中心に寄せ親から持たされた弁当箱を思い思いにつついていた。

因みに俺の弁当は刹那さんが作ってくれたものだ。

永久(とわ)のやつ、面倒見る気無いならなんで俺をひきとったんだろうな。

ほんと、訳わからん。


弁当はいわゆる普通の一般的な日の丸弁当にタコさんウィンナー他もろもろ。

刹奏(せつか)の弁当も同じものだ。

刹那さん、元天使とか言ってたけど何でこんな日本食に詳しいんだろうか。

今度時間がある時にでも聞いてみるか。


他のメンツの弁当箱を覗いてみると。

まず一番に目を引くのが小さい重箱に様々なおかずが入っている灯花(とうか)の弁当箱だ。

魚やてんぷら、肉団子に野菜がぎっしり。

そして食後のスイーツまで完備。

……娘甘やかしすぎだろう?

こんな小さいうちから食わせすぎるとそのうち太るぞ?


ため息をつきながら視線を他のメンツの弁当箱に移す。

ひよりとサクラの弁当も普通の和食メインの弁当だ。

ヒルノの弁当は流石定食屋の弁当と言った感じの盛り付けのされた弁当。

一番悲惨だったのは薙の弁当だった。

普通に白ご飯にふりかけ。

それだけだ。



「なぁ……薙?おまえの弁当っていつもそんななの?」


「んー?まぁ母さんも父さんも忙しいからね。しょうがないよ」



そう言って爽やかに返答してくる。

幼児のくせに妙に達観したこと言いやがって。



「……しょうがないな。ほれ。これくれてやるよ」



俺はそう告げてタコさんウィンナーとデザートのリンゴを半分に割って薙の弁当箱に乗せてやる。



「わ、良いの?ありがとう、始君」


「始でいいぞ。君はいらねえ」


「えー……それはちょっとなあ……。じゃあ始ちゃんのほうがいいのかな?」


「始君でいいわ、やっぱ」



深くため息をついて幼児の相手ってやっぱめんどくせーと心の中で思う俺だった。


昼食が終わって午後は自由時間。

ヒルノや薙に一緒に外で遊ばないかと誘われたが今日は用事があるからと断った。

部屋に居るのは飯事をしている幼女4人と俺と桜花先生だ。

てか普通、何しでかすか分からない幼児を野放しにするか?

まぁこの教師の場合、自分の娘さえよければそれで良いんだろうな。



「さてさて、じゃあこの世界について何が知りたいのかな、キミは」



言いながら上から目線で俺に問うてくる桜花先生。

先生だから上から目線なのは当然ちゃ当然ではあるのだが……。

おまえ俺の歳下だかんな!

そこのとこ忘れんなよ!

心の中で俺はそっと毒づく。



「この世界が近未来的な異世界だってのは聞いてるんだけどそれ以外さっぱり。さっきヒルノが言ってたこの世界の人間は神様の子孫だってのも初耳だったな」


「はぁ?まずそこから話さなきゃなんないの?めんどくさいなぁ……」


「あんた教師だろ、教師!」


「んーじゃあまずはそこのとこからかー。ええと簡単に言うとここは神の子孫が住まう国の一つ。私達の世界はこの世界の人間たちによって救われながら存在してるの」


「……なるほどよう分からん」


「むー……わかりが悪い子ね。例えば大きなとこでは隕石の衝突やら、細かいとこでは疫病の蔓延やら、そういうものからコッソリ人類を救ってきたの。神話に出てくる神様とか、世界のあちこちに残ってる救世主の伝説っていうのはここの人達の祖先のことなのよ」


「分かったような分からんような……。そもそもどうやってそんなもんから世界を救って来たんだ?」


「ふふふ、よくぞ聞いてくれました。まぁ見てなさいよ」



桜花先生はそうほくそ笑むと懐からクレジットカードのようなものを取り出し何やら念じ始める。

するとカードが淡く白い光を発し始める。

そして俺の目の前に小さな光の塊が現れた。



「おお……なんだこれ」



率直な感想を俺は述べる。



「これは蛍火(ほたるび)っていうカムイ。カムイっていうのはこの国の人達が使う魔法みたいな力の事ね。基本的にこの国ではこのカードを媒介にして超常的な力を操る事が出来るのよ」


「へー……そりゃ便利だな。そのカムイって俺でも習得できんのか?」


「さぁ?どうかしら」


「さぁ……って……桜花先生は普通に使えてんじゃねーかよ」


「カムイには才能、主に家柄がめっちゃ影響受けるのよ。だからあんたにその素養があるのかはあんたの家柄次第。それにカムイの勉強は日本で言えば高校生になってからだし」


「……さいですか」



超常的な力を手に入れるには家柄次第なんて世知辛い世の中だな。

俺の家柄かぁ……そんな大層な家に生まれたわけでもないからなぁ……。

俺には身につけられないかもしれないな。



「まぁ、私もカムイを使えると言ってもそこまで強力なものはさっぱりなんだけどねぇ」


「そんなんでよく教師が務まるな」


「だからこそよ。私の勤めてる会社、高千穂(たかちほ)のタカマガハラ課には他に優秀な……っていうかこの国二位と三位のカムイの使い手がいるからね。めんどくさい面倒事はそっちに丸投げ。私みたいな下っ端はお子様たちの子守ってわけ」


「へー……あんたの会社ってすごいんだな。二位と三位の使い手がいるなんて」


「まぁね……すごいわよ、あの二人のカムイは。天使だった頃の永久(とわ)とも()りあったりしてちゃんと生きてるんだから」


「永久と()りあったりって……あいつ何か良からぬことでもしようとしてたのか?」


「はぁ……それも話してないのね……めんどくさいなぁもう」



桜花先生はかぶりを振って本当に面倒臭そうにそう告げる。



「永久はね。刹那さんを殺して世界を滅ぼして一からやり直そうとしたのよ。それを防いだのが奏さんや刹那さん達」


「へー……そうだったのか」



俺の知らぬ間に世界は滅びかけてたらしい。

しかもあの永久のやつの手によって。

それにあいつも元天使だったなんて初めて知ったぞ。

どうりでどこか浮世離れしてるはずだ。



「その時の戦いで永久と刹那さんと奏さんは死んじゃってさ。それで生き返ってからは仲良く暮らしてたって訳」



「よくあの二人は敵対してた永久と仲良く暮らせてたな」


「まぁねぇ……その辺あの二人も変わり者だからね。それに永久も昔に比べて随分丸くなったし、天使だった頃の力もほとんど使えないみたいだしね」


「……あれで丸くなったのか」



永久のあのぶっきら棒な言いようがねぇ……。

まぁ世界を滅ぼそうとしたような奴が俺を引き取るとか言うのも丸くなったって事なんだろうか。

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