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第六十六話 悪役令嬢は変わらない。

「姉様っ。今日は何に致しましょう?」



テナの元気な声がカフェ神楽耶(かぐや)に響き渡る。



「うざい。それにあんたに姉様呼ばわり筋合いはないっ」



面倒くさそうにテナを引きはがしながら陽依(ひより)はぼやく。

刹奏(せつか)が元に戻って以来、テナは気兼ねなく陽依に付きまとうようになった。

その様子を見ながら俺達はのんびりと昼食をすませる。

それが最近の日課になりつつある。



「そんなー……。あ、それじゃあ今日も始さんをいたぶるのはどうでしょう?」


「ふーん。それは良いアイディアね。テナ、やっちゃいなさい」


「分かりましたわ、姉様」



……勘弁してくれ。



テナは陽依達にとっては無害になったが、俺にとってはとてつもなく有害になった。

ことあるごとに、呪言で俺を吹き飛ばしに来る。

それが一体なぜなのか、いまいち俺には理解できない。

せっかく、姉妹の仲を取り持ってやったというのに。

何がなんだかさっぱりわからない。



「テナ様。毎日毎日、呪言で吹き飛ばされてたら始さんの体がもちません。やめてくださいませんか」



サクラが俺の前に立ち助け船を出してくれる。



「サクラ姉様は黙っててくださいませ」


「嫌です。私はどきません」



二人の間にバチバチと火花が飛び散る。

何なんだよ、一体。



「はぁ……わーったよ。俺が呪言で吹っ飛ばされれば済むだけの話なんだろ、ひとおもいにやってくれ」



俺はサクラを下がらせて前に進み出る。



「そうですか!それじゃひとおもいにやってしまいます。祖たる原初の五精霊(ごせいれい)よ、我が神命(しんめい)に応えよ。そして我が力と成せ。空の静寂打ち砕き、新たな(ことわり)の下に力を示せっ!!!」



……だーかーらーふっとばすつっても限度があるだろうがよっっ!!!

何でよりにもよってその呪言なんだよ。

普通の人間だと死ぬぞ?



「我が呼び声に応えよ、そして我が力と成せ、天地神明刀!!」


天地開闢(てんちかいびゃく)っ!!!」



俺が天地神明刀を召喚したと同時にテナの天地開闢が俺を襲う。

俺は刀を一閃し天の震えを沈め、二閃目で地の揺れを沈める。

そして三閃目で猛り狂う雷を受け止める。



「おみごとです、始さん」


「なーにが、おみごとだ。テナ。お前は手加減つーのを知らんのか?普通の人間なら死ぬぞ?」


「始さんは普通の人間ではないでしょう?」



ああいえばこういう。

ぶっちゃけこういうとこは陽依とテナはよく似ていると思う。

ほんとため息しかでない。



「まぁあんたが普通じゃないのはよく分かってるわよ。うん。爆ぜろ」


「うわっち」



テナと向かい合ってる所に陽依は茶々を入れてくる。

その無詠唱は防げないんだよ!

どこに攻撃が飛んでくるのかすら読めねーし!!

今の攻撃も対応できず俺の手元に瞬間的に火花が散って刀を落としかけた。



「やれやれ、始もまだまだね。『輪廻の守護者』の力って言うのはそんなものなの?」


「お前の無詠唱に対応できるやつなんていねーよ、ボケーーーー」


「ふーん……。そっかそっか。よっぽど吹っ飛ばされたいわけね。じゃあ吹き飛べ」


「お、おわああああああああああ!!!」



陽依の言葉で俺の体は宙を浮きそして天井へと激突しそうになる。

その瞬間時間が止まる感覚。



「大丈夫?始お兄ちゃん」



刹奏が時間を止めて空中で背中の羽を広げ俺の体を抱きかかえていた。



「ああ……まぁなんとかな」



刹奏は時間を再度動かしながら俺を地面へと降ろしてくれた。



「ちぇ。余計なことを……」


「陽依お姉ちゃんもやり過ぎ。いくら天使の力を持ってても始お兄ちゃんは純粋な天使じゃないんだから……」


「ふーん。まぁそんなのどうでも良いんだけどね」



陽依はぼやきながら席につき昼食をたべだす。

テナもそれに続いて席について昼食を食べ始めた。


はぁ……まったくこの姉妹は……。

俺は刀をしまいながら深くため息をするしかなかった。


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