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第六十四話 風斬と雷斬

暗闇の中。



『異物が混入したようだな。(いかずち)よ』


『ああ、私達の邪魔になる存在だ(かぜ)よ』



声が聞こえる。

何かの声が。



『こやつも取り込んでやろうか』


『こいつは輪廻の守護者だ。それもよかろう』



俺は体を這いまわる何かの感覚で目を覚ます。

緑色の髪の少女と黄色の髪をした少女が俺の体を拘束していた。

おい、お前ら、放せ。



『フン……そんなことを言っていられる立場ではなかろう』


『お前こそ何しにここに来た、輪廻の守護者よ』



俺は『輪廻の守護者』なんかじぇねえ。

俺はお前らに認められるためにやって来たんだ。

そして刹奏(せつか)の意識を返してもらう。



『刹奏……この娘のことか』



緑髪の少女が指さす方向には蔦に絡まれて眠り続ける裸体の刹奏の姿。

……なんて恰好にしてんだよ。



『フン……ここは精神世界だ。服なんてあって無いようなものさ』



まぁ良いけどよ……。

いや、あんま良くないけど。

で、どうすればお前らに認めてもらえるんだ?



『ククク……『輪廻の守護者』を我らが認めるとでも思ったか?』



黄色の髪の少女は含み笑いをこぼしながらそう告げる。



『我らに認められたければその力を示すがいい』



やっぱそうなるのな。

それなら。

神明、力を貸してくれ。



『やれやれ……我はめんどくさい事は嫌いなのだがな』



俺の言葉に神明は姿を現す。



『こうして話をするのは何千年ぶりかな、雷に風よ』


『さぁな。我らが生まれて以来ではないかな、神明よ』


『神明よ。そんな人間に力を貸さずに我らと共に行かぬか』



緑髪の少女は神明を勧誘し始めた。



『ふむ。それはそれで魅力的な話ではあるな』



おいおい、神明、それはないだろう?



『冗談だよ、始。我はこいつらの話に乗ったりはしないよ』


『それでは交渉は決裂だな、神明よ』


『さて、それでは勝負と行こうか』



黄色の髪の少女の声と共に三人は刀を召喚し斬り合いを始める。

二人の剣閃を神明は軽く受け流していく。

切り結ぶたびに神明は余裕の表情で二人の少女を圧倒する。

焦りの表情が二人の少女の顔に浮かぶ。

なんだ、神明の奴、全然余裕じゃねえか。



『く……何故だ?何故、我らが貴様に及ばぬ』


『簡単な話であろう。貴様らの刀には使用者の気持ちが乗っておらん。そんな刀なぞ我には及ばぬよ』


『そんな戯言っ!!!』



神明は、なお攻めたてる二人を軽くいなす。

……あいつらは神明に任せとけば良いか。

俺は刹奏を助けよう。

俺は刹奏にかけより、絡まった蔦をはぎ取っていく。

と同時に、露わになる刹奏の裸体。

気恥ずかしさを覚えながらも、刹奏を自由にしてやり俺は上着を刹奏にかけてやる。



「おい、起きろ、刹奏っ」


「うん……始お兄ちゃん?」



良かった。

案外簡単に目が覚めたな。

このまま目が覚めないのかと思ったぞ。



『安心するのはまだ早いぞ。こいつらを屈服させねばならぬのだからな』


「ああ、分かってる。刹奏ここでじっとしてろよ」


「うん。ありがとう、始お兄ちゃん」



しかし屈服させるってどうすれば良いんだ?



『なに、簡単な事だ。私の真の力を引き出せればそれで良いのさ』



神明の真の力。

それは何だろうか。

こいつらを屈服させる力。

……いや違うな。

こいつらを認めさせる力だ。

こいつらを認めさせる力……。

それは……。



「神明っ」


『ああ、分かった。我が主よ』



神明はそう告げると刀の形に変化する。



『人間ごときが我らを防ぎきれると思ったか』


『斬り捨ててくれるっ』



二人の少女が俺に向かって斬りつけてくる。

その剣閃を俺は柳のように受け流しながらあてみを食らわせる。

一閃二閃三閃。

繰り出す攻撃のことごとくを俺は弾き飛ばす。



『くっ』


『くそっ』


「まだ続けるか?」


『いくら続けても無駄だと思うぞ、風、雷』



神明は刀のままそう告げる。



「待って、始お兄ちゃん」



刹奏が俺達の間に割って入る。



「風さん。雷さん。もう一度。今度こそ私の力になってくれませんか?」


「何言ってんだ、刹奏。お前はもう『刻の番人』である必要はないんだ」


「ううん。私はこれからも『刻の番人』でいたい。それがお母さんの血を引き継いだ証だから」


『また、我らがお前を支配するとしてもか?』


「ううん。今度はあなた達の好きにはさせない。絶対に」


『ならば我らの手を取るがよい』


「うん。これからもよろしくおねがいします。風、雷……」



言いながら刹奏は二人の手を取る。

同時に二人の姿は二振りの刀へと変化していった。

そして刹奏の背中には真っ白な羽が生えていた。



「おい、おまえ、大丈夫なのか?」


「うん……なんか平気みたい。むしろ何かが軽くなったような……」



まぁ刹奏が平気って言うなら平気なんだろう。



「まぁ、帰るか」


「うん。始お兄ちゃん」



刹奏は俺の手を取り双翼をはためかせ飛び立つ。

そうして俺達の意識は真っ白な光に包まれていった。

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