第六十二話 刹奏の行方
「それで、刹奏ちゃんの行方を知るためにここに来たと」
俺は高千穂のタカマガハラ課の応接室にやって来ていた。
柚木さんは7年経っても変わらず中性的な美人な雰囲気を醸し出している。
一言で言うなら、出来る美人OLっていう感じだ。
「んー……一応奏さんにも頼まれてて行方を追ってはいるんだけど、いまいち所在地がつかめないんだよね」
「どういうことです?」
「反応があちこちに出たり消えたりで。何をしてるのかさっぱりなんだよ」
「そうなんですか……」
はぁ……天の神はタカマガハラの人間に聞けって言ってたけど全然駄目じゃねえか。
天の神、マジ無能神。
「天の神の野郎が言うには天の神のいる場所に向かってるとか言ってたんですけど」
「それなら、永久ちゃんか刹那さんに聞いた方が早いかもね。あの二人は元天使なんだし」
「なるほど。それもそうですね」
という訳で。
自宅に帰って永久に問い詰める。
「生身の肉体であそこに行く方法なぞないぞ。あそこはいわば精神だけが形作っている場所だからな」
「むー……そうなのか。じゃあ刹奏のやつはどうやってあそこに行くつもりなんだ?」
「それが分かっていれば、私も世界を容易く滅ぼせていたのだがな」
クックックと永久は含み笑いをしながら告げる。
はー……どいつもこいつも役に立たねー……。
どうしろってんだよ、本当に。
翌日。
俺は何故か皇照宮へと呼び出しを受けていた。
目の前にいるのは皇女テラス様にテナ、それに侍女のキクリさんだ。
テラス様は相変わらずの幼児体系でこれで経産婦って言うんだから信じられない。
テナと並んでいるとどっちが親なのか分からなくなってくる。
「刹奏を探していると聞いた」
「ああ。でもさっぱり手がかりがつかめない」
「一つ心当たりがある」
テラス様がそう言うとキクリさんが俺に説明を始める。
「この世とあの世を繋ぐ場所。黄泉比良坂。私達はそう呼んでいます」
「そこはどこにあるんだ?」
「皇照宮の地下深くです。今は封印されていますが。私の先祖とゆかりの深い場所と聞いています」
ふむ……。
まぁその辺の話は長くなりそうだから別にスルーでいいのか。
「とりあえずここで待ってれば刹奏に会える可能性は高いって事か?」
「まぁそうなるであろうな」
ため息をつきながらテラス様はそう答える。
「『輪廻の守護者』次は『刻の番人』を相手にすることになるとはな……つくづく面倒な人生だ」
「陛下自らが戦うおつもりですか?」
「しょうがあるまい?やつに封印を破られたら終わりなのであろう」
「それは……そうかもしれませんけど」
「とりあえず刹奏のやつを戦闘出来ないようにしてくれればそれでいい。後は俺がなんとかする」
「ほう……。大きく出たな。ならばなんとかしてもらおうかな、始よ」
フフリと笑みをこぼしながらテラス様は俺を見つめる。
「陽花ちゃんや陽依ちゃんにこのことは?」
「流石に今回の事で手を貸してもらう訳にはいかんだろう。世界の危機とはいえな。とりあえず……永久がいればいいんじゃないか?」
「それもそうですね」
「母上、申し訳ございません……」
テナは借りてきた猫のようにしょんぼりとしている。
「まぁよい。娘のしでかした事の後始末を付けるのも親の役目だ」
親……ねぇ……。
親に全く見えないと言ったら反感を買うだろうからやめておこう。
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