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第六話 初等部のクラスメイト

春日野(かすがの)(はじめ)です。よろしくお願いします」



刹那さん、サクヤさんと別れた後、俺は桜花先生に他の幼児たちと共に連れられて教室へとやって来た。

教室には黒髪の美形の男の子と、彼とにこやかに話すピンク髪の男の子が並んでいる椅子に座っていた。

桜花先生は他の幼女達を席に座らせると俺に自己紹介を促した。



「始はこんななりしてますが、中身は私よりオッサンなので日本の知識は豊富だから何でも聞くと良いわよ」


「だからオッサンっていうな!」


「だって事実じゃない。いやー、私の仕事が減って助かるわー」



こ、コイツ……。

なんか俺に厄介ごとおもいっきり押し付けようとしてないか?

ほんとめんどくせー教師だな、おい。

教室を見回すとそんな俺と桜花先生のやりとりを聞いて幼児たちはポカーンとした顔をしている。

いや、一人いかにもなんか楽しい事が起こりそうだというような顔をしている奴がいた。

ピンク色の髪をした幼児だ。



「それじゃまぁ、今度は皆の自己紹介ね。えーっと、刹奏(せつか)ちゃんと陽依(ひより)ちゃんとサクラちゃんはいいわね。じゃあ、まずは私の愛しい愛しい灯花(とうか)ちゃんから♪」


「先生、公私混同はメリハリつけてください」



灯花は椅子から立ち上がるとジト目で母親の桜花先生をみやる。



「えー……いいじゃん、可愛い可愛い一人娘なんだしー」


「それはそれ、これはこれです。今は学園生活中なんですから」


「ぶー……灯花ちゃんのいけずー……」


「私の名前は灯花=マスミダです。これからよろしくお願いしますね、始君」



ぶーたれている桜花先生をよそに灯花は自分の言葉でハキハキと主張する。

親は完全にアホだけど娘の方はかなりまともな性格みたいだな。

正直かなり安心した。

桜花先生みたいなアホな子だったら内心ビクビクしていたが。



「はいはい、流石、私のラブリー灯花ちゃん♪よくできました♪それじゃ、はい、次、薙君、ヒルノ君どっちでもいいわよ」



……おい。

ほんと投げ槍だな、自分の娘以外。

今の教室の壁をぶち破って1000メートル位向こうに飛んでいった感じだぞ?



「じゃあまずは席の順からして僕からかな。僕の名前は姶良(あいら)(なぎ)。よろしくね」



黒髪の端正な顔立ちの少年が挨拶してくる。



「薙君はユズキ先輩の一人息子ですので仲良くしてあげてくださいー。じゃないとユズキ先輩にチクりまーす」



あー……なるほど。

どっかで見た顔だちだと思ったがユズキさんの息子か。

端正で中性的な雰囲気は言われてみればって感じだ。

てーか、やっぱりどっかで見たことある顔だちなんだよなぁ。

んー……どこだろうか。

まぁいいか。



「じゃあ最後はワイの番やな。ワイの名前はヒルノ=イクタ。おっちゃんがよく通うとる生田亭(いくたてい)の息子や」



ピンク色の髪をした女の子のような顔をした少年は立ち上がりそう告げる。

おっちゃんっていうなや。



「ああ、あのめっちゃ美味い日本料理店か。あそこの料理はうまいよなぁ」


「やろやろ?食材もしっかし日本から直送の新鮮第一がモットーやねん」


「……ていうか、なんでおまえだけ関西弁なんだ?」


「実家の先祖が関西の神さんでなぁ。そういう風に話せって教育されとんねん」


「実家の先祖が関西の神様?どういうことだ?」


「ん?おっちゃんそんなことも知らんでこの世界に来たんか?この世界の人間は基本的にどっかで祭られてる神様の子孫なんやで」



言いながらヒルノは笑顔でニヒヒと答える。

ほー……なるほど……だからこの世界は現実の日本と繋がってる世界っていうわけだ。

しかしあれだな……。

ひよりやサクラ、刹奏(せつか)はまだ片言なのに、灯花や薙、ヒルノは結構日本語話せるんだな。

これはもしかして、ひより達はアホな子なんだろうか。

うーん……サクヤさんや刹那さん、娘にめちゃくちゃ甘そうだからなぁ。

ひより達の将来がちょっと不安になる。



「さてさて、自己紹介も済んだことだし、今日もお勉強始めましょうか。始の席は刹奏ちゃんの隣ってことで。刹奏ちゃんわからないことは始に何でも聞いてね」


「はーい、わかりました。よろしくね、はじめちゃん」


「へいへい……わかりましたよ」



はぁ……絶対、授業の手伝い俺にさせる気だろ、桜花先生。

そして刹奏はこのクラスで一番アホな子なんだな。

よーくわかった。


というわけで授業が始まったわけなのだが。

授業とは名ばかりで、基本的に自主学習。

教科書を見ながら日本語のお勉強、そんな感じだ。

日本語なんて使い慣れてる俺からしたら、ただの時間の浪費以外の何物でもない。

桜花先生は何やらスマホをポチポチとやって時折、生徒たちの様子を見て回るだけ。

これって授業とは言わんだろう……。



「なぁ桜花先生」


「何よ、クソガキオヤジ。ああああ!あんたのせいでレイドボス倒し損ねたじゃん!!」


「……」



ホント、口悪いな、この先生!!

つーか、授業中にソシャゲしてんなよ、不良教師!!!

文句の一つでも言い返したいのをぐっとこらえて俺は一つ提案する。



「ちょっとこの世界のことについて詳しく説明して欲しいんだけど。あと言葉とか出来れば教えて欲しい」


「はぁ?何それ。刹那さん達はそんなことも教えてないわけ?」


「……主に俺の面倒見てるのは永久(とわ)なんだが」


「……あー……そういやそうだったわね……」



何か思い当たる節があったのか妙に納得したような声を桜花先生はあげる。

そして、やれやれ、しょうがないわね、とばかりに一冊の教科書を本棚からとってくる。



「一応これがこの世界の言葉……タカマガハラ語を日本語に翻訳した教科書。これでも見て勉強してなさい。

この世界のことについては……そうね、午後の自由時間に教えてあげるわ」


「……あんた、まじで教師やる気ないのな」


「だってねぇ……私もともと教員免許とか持ってるわけじゃないし。そもそもこの職についたのだってこの子達がこっちの世界で生まれたからしかたなくって感じだしね」


「どうせあんたのことだから灯花に変な虫がつかないように監視するのが目的なんだろ」


「……チ……バレたか」



チ……バレたかじゃねーよ。

バレバレだっつーの。


そんな訳で、俺は幼児達が日本語のお勉強をしている間にタカマガハラ語の勉強に勤しむのだった。

たまに刹奏の妨害にあいながら。

やれやれだ。

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