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第五十四話 私なりに出来る事

「レディーーーー!!ゴーーーーーーーーーー!!!」



アカリ先生の戦闘開始の声が響く。

私は精神力の全てを使って呪言を唱え始める。



「祖たる原初の五精霊(ごせいれい)よ、我が神命(しんめい)に応えよ。そして我が力と成せ。空の静寂打ち砕き、新たな(ことわり)の下に力を示せっ!」



特殊戦闘服に身を包んでるなら小細工なんて抜きだ。

始めから私の全力をぶつけてやるっ!!!

いつも始に使ってるような中途半端な威力じゃない。

完全版の呪言を唱えるっ!!



「祖たる原初の五精霊(ごせいれい)よ、我が神命(しんめい)に応えよ。そして我が力と成せ。空の静寂打ち砕き、新たな(ことわり)の下に力を示せっ!!!」



テナも私と同じ考えのようだ。

さすが、私の妹ってことか。

そういうとこだけは似てるんだろうな。

悔しいけれども。



「「天地開闢(てんちかいびゃく)っ!!!」」



私とテナの呪言が同時に完成し、天が震え、地が揺れる。

そして稲妻が私達の中心で炸裂する。



「おおっと、開始早々に最強のカムイ、天地開闢(てんちかいびゃく)が炸裂だあああああ!!!」



アカリ先生の実況が聞こえるものの私は集中を切らさないように呪言を制御する。

中央付近でせめぎあっていた稲妻が次第に私の方に押し切られ始める。

クソー……やっぱ普通の呪言勝負じゃ向こうの方が威力は上かっ!!


しょうがない。

奥の手は取っておきたかったけど、今のうちに使うしかない。

取っておいて負けましたじゃ、洒落にもならない。

呪言の制御をしながら私は懐から一枚のカードを取り出す。

そして。



「祖たる原初の五精霊(ごせいれい)よ、我が神命(しんめい)に応えよ。そして我が力と成せ。空の静寂打ち砕き、新たな(ことわり)の下に力を示せっ!!!」



カードに力を込めながら私は新たな呪言を唱え始める。



「天地開闢っ!!!」


「な……二重奏(ダブルスペル)だと!?」



私の放った2発目の天地開闢の稲妻はテナの天地開闢の稲妻を飲み込みテナに命中する。



「ぐ、あああああああああああああああああっ!!」



テナは私の天地開闢を受けて膝から崩れ落ちる。



「テナ選手ダウンーーーーーー!」



や……やったのかな?

カードを構えながら私は様子を伺う。



「フ……フハハハハ……ッ」



テナの笑い声が響き渡る。

立ち上がりながらテナは高笑いをしている。

特殊戦闘服を着てるからといって直撃すれば相応の怪我をするはずなのに。

……どんだけタフなのよ、コイツは。



「フン……どんな手品か知らんが二重奏(ダブルスペル)とはな……少々肝をひやしたぞ」


「まぁね……。でもこれがどういう意味かあなたにも分かるでしょう?」


「クハハハハ……それで勝ったつもりか?陽依よ。私にはこの剣があるんだよ。神剣・天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)よ、わが手に宿れ!!」



はぁ……やっぱその剣を使うのか。

そしてそれが意味することは。



「祖たる原初の五精霊(ごせいれい)よ、我が神命(しんめい)に応えよ。そして我が力と成せ。時の流れを打ち砕き、新たな(ことわり)の下に力を示せっ!!!」



テナは時を止める呪言を唱え始める。



「祖たる原初の五精霊(ごせいれい)よ、我が神命(しんめい)に応えよ。そして我が力と成せ。時の流れを打ち砕き、新たな(ことわり)の下に力を示せっ!!!」



私も同時に同じ呪言を唱える。



「「刹化瞬永(せつかしゅんえい)!!!」」



同時に完成する呪言。

私達の体は光に包まれる。

静止する時の中でそしてテナは剣を構え私に迫ってくる。

くそー……迫ってくるのは分かってる。

分かってるのに静止する時の中で私は体を思うように動かせない。

これも一位と三位の子の差ってやつか。

悔しいな、本当にっ!!

そう思いながら、私はカードに再び力を込めて呪言を唱える。




「祖たる原初の五精霊(ごせいれい)よ、我が神命(しんめい)に応えよ。そして我が力と成せ。空の静寂打ち砕き、新たな(ことわり)の下に力を示せっ!!!」



私の目の前までテナが迫る。



「天地開闢っ!!!」



同時に私の呪言が完成するが効果が発生しない。

え……何で?



「フン……ぬかったな、陽依よ」



そうテナは告げると私の手に持ったカードを粉微塵に切り刻む。

あああああ!

私のカードがっ!!!

そして私の喉元に剣が突きつけられる。

同時に止まった時が動き出す。



「おおっと、一瞬にして状況が逆転していますっ!!陽依(ひより)選手万事休すか?今のは何が起こったんでしょう、解説の始君」


「時を止める呪言をお互い使ったけど、テナの方が一枚上手だったってとこだと思う」



アカリ先生と始の言葉を聞きながら私は唾を飲み込む。



二重奏(ダブルスペル)に頼り過ぎたな、陽依よ。刹化瞬永(せつかしゅんえい)中は新たな呪言は発生しない。そんな事も知らなかったのか?」


「くっ」



……やっぱり私じゃテナに敵わないのかな。

これが一位と三位の子供の差か……。

悔しい……。

悔しい悔しい……。

悔しい悔しい悔しいっ!!!

こんな奴の為に刹奏(せつか)ちゃんの自我は……。

こんな奴の為に始のやつは傷ついて……。

こんな奴の横暴許せるわけがない。

力が……。

力が欲しいっ……!!

こんな奴を叩きのめせる力が欲しいっ!!



「……負けない」


「何か言ったか?」


「私は……絶対に!!!あなたなんかに負けたりなんかしないっ!!!」



私の言葉と共に空気が振動し、地が震える。

何??

何か……何かが違う。

今までの私と何かが違う。

そんな気がする。



「負けて……負けてたまるかああああああああああああ!!!」



呪言をイメージし、その言葉を口にした途端、天が震え、地が揺れる。

そして稲妻がテナを襲う。



「な、何だと……ああああああああああああああっ!!!」



テナは私の天地開闢をまともに受けて再び倒れ伏した。



「何と何と再びテナ選手ダウンだーーー!!」



今の力は……いったい何だったんだろう。

自分で操っていてもよく分からなかった。

けれど、これは……これは私の力だ……と思う。



「くそ……お前なんかに……まけるものかっ」



天叢雲剣で体を支えながらテナは再び立ち上がろうとする。



「祖たる原初の五精霊(ごせいれい)よ、我が神命(しんめい)に応えよ」



再び呪言を唱えるテナ。

しかしテナの呪言が完成する前に、私は呪言をイメージしその言葉を口にする。



「刹化瞬永!!!」



周囲の時は止まり私は止まった時の中で呪言を唱えている最中のテナの背後を取る。

そしてテナの首を絞めあげる。

同時に時が動き出す。



「そして……うぐ……」


「もう、止めにしよう?テナ」



私は落ち着いきはらった声色でテナにそう告げる。



「テナ選手、完全に陽依選手に翻弄されているーーー!!解説の始君、何か一言どうぞ」


「また陽依が一歩化け物に近づいたような気がする」


「だそうです。陽依選手に告白したい諸君は覚悟しといたほうが良いぞー?」



今まで緊迫していた会場に笑いが巻き起こる。

始のやつは絶対に絞める。

テナの首を締めあげながら私はそう心に誓うのだった。

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