第四十六話 転入生
翌日。
学園の生徒は全員体育館に呼び出された。
校長の仰々しい挨拶に続いて、壇上に上がったのは制服に身を包んだ白く長い髪の少女。
昨日俺達を襲った少女、テナ、その人だ。
「私の名はテナ=オオヒルメ。この国の皇女テラスの第一子である。私の目的はただ一つ。それは霧島姉妹。お前達に復讐することだ」
その言葉に体育館がザワリとどよめく。
「ひ、姫様そのようなことはお控えください」
そのセリフに校長が慌てて止めに入る。
「黙れ。お前に私の何が分かるっ!祖たる原初の木霊よ、馳せ来たれ。そして我が呼び声に応えよ、風呼!」
テナの呪言が完成すると共に校長は壁まで吹き飛ばされる。
巻き起こる悲鳴。
教師たちも慌てて壇上へと向かっていく。
校長先生相手に呪言使うなんてなんちゅうやつだ。
「霧島姉妹よ、覚悟しておけ」
テナはそう告げてスタスタとに壇上を降りていく。
「そ、それでは皆さん。くれぐれも失礼の無いように。仲良くしてくださいね」
ボロボロになった校長が壇上のマイクでそういうものの、体育館のざわめきは収まらない。
そりゃそうだろうな……。
復讐する為だけに学園にやってくるような奴と仲良くなんてできるはずがない。
めんどくせーことになりそうだ。
―――
その日の昼休み。
俺達は陽依を交えて今後の対策を考えていた。
「いやー……まさか、お姫様自ら学園に乗り込んでくるとはねぇ」
「パパ……面白がってませんか?」
「あははは。ばれたか。いや、でもなかなか強烈な自己紹介だったじゃない。復讐するために学園にやって来たとかさ」
「復讐される側はたまったもんじゃないんですけどね」
陽依がため息をつきながら呟く。
「私は良いんですよ。まだ呪言が使えますから。でもサクラは使えない」
「まー、その辺は教師がカバーするからさ、安心してよ?」
「じゃあ聞きますけどアカリ先生。先生達で私の呪言、防ぎきることできますか?」
「あはははは。何言ってんの、陽依ちゃん?絶対無理。そんなの無理無理無理に決まってるじゃない」
「……駄目じゃないですか」
アカリ先生の答えに半目でぼやく陽依。
ほんと役に立たねえ教師だな、おい。
「はぁ……いざとなったら俺がサクラを守るから安心しろ」
「まぁ……そうね……。あんたくらいしか頼れる奴いないわね」
陽依は渋々ながらも俺の言葉を肯定する。
そう、俺の天地神明刀ならある程度の呪言は防ぎきることはできる。
俺が知ってる呪言の範囲でなら、だが。
「私も……サクラちゃんの為に頑張る」
「刹奏は無理しなくても良いのよ。あんたの能力は戦闘向きじゃないんだから」
「あれ……。陽依ちゃんは刹奏ちゃんの能力誤解してない?」
「へ……?どういうことです、アカリ先生」
「刹奏ちゃんの能力は戦闘にも使える割と万能能力なんだけど……」
は?
そうなのか?
描いた犬とか猫を呼び出すだけの能力じゃなかったのか。
「例えば、宝貝を描いて呼び出せばその能力を発揮できるし、人物なんかも描いて呼び出すことができる割とチート能力なんだけど」
「へぇ……それってつまりテナを描けばコピーテナを呼び出すこともできるってことですか?」
「そ。陽依ちゃん賢いじゃない」
へー……そんな使い方があったのか、刹奏の能力って。
ただわんこを呼び出して腹を空かせるだけのポンコツ能力かと思ってたぞ。
「そっか。なら刹奏と始でサクラを守ってあげてちょうだい」
「おう、任せとけ」
「はい。分かりました」
「お姉ちゃんはどうするんですか……?」
「私は自分で何とかするわよ。私の強さは分かってるでしょう?」
陽依は無い胸を張りながらそんなことをのたまう。
サクラの顔を見ると明らかに不安気な表情をしている。
はぁ……ほんとめんどくせー姉ちゃんだな。
できればサクラは刹奏に任せて、俺は陽依のサポートに回りたいけれど……。
刹奏一人じゃ絶対に無理だろうなぁ……。
うーん……どうしたもんか。
「とりあえず、陽依ちゃんにサクラちゃん。あなた達二人はできるだけ離れないようにしなさいな。その方がリスクも少ないだろうし」
「めずらしくパパが良い事言いました」
「めずらしくじゃないでしょー。パパはいつも良い事しかいってないよ、灯花ちゃん」
言いながら灯花に頬ずりをするアカリ先生。
ともあれテナとの対決は避けることは出来なさそうだ。
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