第四話 刹那の娘
という訳で。
俺、春日野始は永久と共に暮らすことになったのは良いのだが。
この女、家事全般一切やりやがらない。
見た目、俺と背丈が20cmも違わない少女にそんな事を求めるのが間違っていたという事か。
朝飯は近くの店で売ってるカップ麺。
昼飯も以下同文。
夕食は商店街へと繰り出して生田亭とかいう美味い日本料理店で日替わりランチを食べる毎日。
結局そんな生活を見かねた刹那が毎食作りに来てくれることになった。
瞬と見た目は同じなのに本当に天使のような人だ。
実際元天使だったらしいし。
刹那さん、マジ天使。
ノノムー先生はわざわざそんなとこまで面倒見なくても良いのにと愚痴っていたが。
タカマガハラの生活にも慣れ始めたある日の事。
俺はノノムー先生に連れられて、近場にあるとある高層ビルの一室に連れられてきていた。
「ふーん……この子が永久ちゃんと一緒に暮らしてる始さん?」
見た目、二十代後半くらいの美人のお姉さんが俺の顔を興味深そうに見つめながらそう問うてくる。
「そ。見た目、五才児くらいだけど、中身は三十過ぎのオッサンだからね」
……オッサンって……。
いやまあそうなんだけどさぁ。
「でさぁ、こいつのこと、どうしようか決めかねてんのよ、私としては」
「ん?どういうこと?奏さん」
「だってさー、見た目は子供、中身はオッサン。こんな奴どう育てりゃいいのよ。永久は面倒見るっていったけど半分育児放棄気味で何考えてんのか分かんないし」
「一応、見た目は子供なんだし、高千穂学園の初等部から通わせてあげれば良いんじゃない?」
「……ユズキ、あんた本気で言ってんの?こいつの中身はオッサンなのよ、オッサン」
言いながらノノムー先生は俺の頭をくしゃくしゃに揺さぶる。
「でも、今は新しく生まれ変わって子供なんでしょ?だったら初等部から通わせてあげればいいと思うよ?」
ノノムー先生の非難の眼差しを正面から受けながら、柔和な笑顔でユズキと呼ばれた女性はそう主張する。
「はぁ……ユズキもとんだお人好しね。まあアンタんとこの子供は男の子だからいいんだろうけどさー」
「ああ……そういう心配してるんだ?まぁ刹奏ちゃんも同じ年頃だしね」
「そ。こいつが変な気起こさないとも限らないじゃない?」
……。
黙って聞いてればなんか散々な言われようだな、俺。
「流石に三十過ぎのオッサンが五歳児に手をだしたら犯罪だし!手も出すきねぇし!」
「本当にぃ?ついムラムラっとしちゃって手をだしたりしちゃわない?」
ノノムー先生はジト目で俺の方を見つめてくる。
「するかっ!」
言いながらノノムー先生に拳を振り上げるものの軽くいなされてしまう。
「ならしょうがないから、学園の入園手続きしてもらっても良いかしら」
「わかったよ。なんだかんだで奏さんも面倒見、良いよね」
「……そんなことないわよ。私はただ刹那の負担を軽くしてあげたいだけ」
「ま、そういう事にしておくよ。じゃ、明日から通えるように手続きしとくね」
「何から何まで、悪いわね、ユズキ」
「ううん。これも高千穂の仕事の一環だから当然の事さ」
そう言ってウィンクをするユズキさん。
なんかこの人、とても女性って言う気がしないな……。
見た目はすごい美人さんなんだけど、なんか中性的というかなんというか。
それにこの人どこかで見たことがある様な気がするんだよなぁ。
……どこだっただろう。
うーん……わからん。
翌日。
俺はユズキさんがその日のうちに用意してくれた園児服に身を包み、刹那と彼女を幼くしたような子供、刹奏と共に道を歩いていた。
はー……三十過ぎて園児服に袖を通すことになろうとは……。
何というか恥ずかしすぎる。
何プレイなんだよこれは。
そんな悶々とした気分で刹那の横を歩いていると。
「ねぇねぇ、はじめちゃんはにほんごじょーずだね」
刹奏は満面の笑みで俺に向かって話しかけてくる。
「まぁな。お前よりずーーーっと年上だからな」
「へー。すごいなーーーー。はじめちゃんはひよりおねえちゃんよりも、としうえなの?」
「ひよりお姉ちゃんってのがどんな奴か知らんから分からん」
「ひよりおねえちゃんは、わたしよりいっこうえのおねえちゃん。とってもやさしいの」
「ふーん。じゃあ、そいつよりもずっと年上だな、俺は」
「でも、はじめちゃんはわたしとおなじとしなんでしょ?へんなのー」
言いながら刹奏は首をかしげる。
「そういや、刹奏。お前の親父ってどこにいんの?」
「んー?パパはかなでさんだよ?」
「は?」
いやいやいや、何言ってんだコイツ。
ノノムー先生は女だろう?
刹那だって見た目通り女だ。
それでどうやって子供ができるって言うんだよ。
「いや、刹奏。それはいくらなんでも嘘だろ?」
「うそじゃないもーん。かなでさんがパパになってママとあいしあったんだっていってたんだもん!」
「……。まじか」
言いながら刹那の方を見上げる。
「刹奏のいう事は本当ですよ、始さん。奏さんに薬で男の人になってもらって生まれたのがこの子なんです」
俺の疑いの視線に応えてそうにこやかに刹那は告げる。
……女を薬で男にする?
やたら科学技術が発達してる街だとは思ったけど、ここまで発達してるとは……。
すげーなタカマガハラ。
てか、五歳児に愛し合ってるとか何ふきこんどんねん、この両親は。
更新ペースが不定期で申し訳ないです。
関わってるツクールゲーム制作のプログラム作成にのめり込んでたりしてまして……。
それでも二週に一回は更新したいと思いますので気長に見守っていただけると嬉しいです。