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第三十話 皇女テラス

俺達は皇照宮(こうしょうきゅう)……この国の中心部にある皇女陛下が住まう宮殿へとやって来ていた。

月依(つくよ)先生曰く、皇女陛下直々にお礼の言葉を言いたいとの事らしい。

謁見室に通された俺と永久(とわ)陽依(ひより)、月依先生、公主さんは月依先生を先頭に謁見室を進む。

謁見室の最奥の椅子に座っていたのは白髪の幼女と見まごうような少女が一人、侍女を一人連れて座っていた。



「やっほー。久しぶり、テラスちゃん、キクリ先生」



姿を見るなり月依先生は超フランクに皇女陛下に話しかける。

おい。

仮にもこの国の皇女様だろう?

そんな超フランクでいいのか。

つうか見た目、幼女なのに月依先生と知り合いってことは結構な歳なんだろうか。



「はぁ……おまえは変わらんの。月依よ」



ため息をつきながら苦笑いをするテラス様。

お付きの侍女もクスクスと笑っている。



「まぁそんなに人は変わらないよ。永久は随分変わったけどね」



月依先生は永久に視線を移しながらそう告げる。



「それもそうだな。というわけだ。久しぶりだな、永久よ」


「ああ……久しぶりだな、人間の王よ」



二人の間にピリピリとした緊張感が走る。



「久しぶりに勝負するか?」



テラス様は今にも何かを出して戦闘状態に入りそうな眼つきだ。



「フ……止めておくとしよう。私はあの頃の様に強くはない」



その目つきを受け流すようにかぶりを振る永久。



「そうか。それは残念だ。あの時の仕返しが出来ると思ったのだがな」



テラス様は心底残念そうに言葉を紡ぐ。

仕返しって……永久はテラス様に何かやらかしたんだろうか。



「要件はそれだけか?」


「いや。此度の事、我が国の為に力を貸してくれて礼を言うぞ」


「フン……普段世話になっているからな。当然のことをしたまでだ」


「……ほう。だいぶ丸くなったとは聞いていたが本当に丸くなったのだな」


「……勝手に言ってろ」



言いながらそっぽを向く永久。



「さて、竜吉公主殿、此度の事、誠に助かった」


「いえ……私は以前コンロンを救っていただいたご恩をお返ししただけです。……それにそこまで力にはなれませんでしたし」


「そのようなことはないであろう。霧露乾坤網(むろけんこんもう)のおかげで無用な争いを避けることができたと聞いている」


「ありがとうございます……」



公主さんは優雅に一礼する。

ほんと、この人は優美と言うか……なんというか様になる。

こういう人にお世話されてーな……まじで。



「最後に、始に陽依。お前達も幼いながらよく力を尽くしてくれた。感謝する」


「「ありがとうございます、皇女様」」



俺と陽依は二人同時に一礼した。

なんでこんな時に息が合うかなぁ……。

陽依も『うぇー』といったような表情を浮かべている。



「仲が良くて結構なことだ」



テラス様は苦笑いしながらどこか懐かしいものを見るような視線で俺達を見ている。

なんだ?この視線は。

しかしその視線の意味を俺がわかるはずもなく。

話は進んでいく。



「まぁなんだ。この辺で堅苦しい話は抜きにするか」


「今までが堅苦しかったかどうかは甚だ疑問ですが」


「五月蠅いぞ、キクリ。まったくおまえは口うるさくてかなわん」



テラス様は侍女……キクリさんにため息をつきながら愚痴る。



「はいはい、私はいつまでもあなたの先生ですから口うるさくて結構です」


「だそうだ。相変わらずであろう?」



苦笑しながら月依先生に視線を移す。



「あははは……キクリ先生もお変わりなくて安心しました」


「そうねぇ。こんな仕事だから結婚相手に恵まれなくて困っちゃうわ、本当に」



やれやれとかぶりを振ってため息をつくキクリさん。



「キクリ。お前の場合は二次元が恋人なのだろう?いつも陽花(ひはな)にBL本頼んでるじゃないか」



……なんだ、この人もオタクなのか。

つうかこの国の住人は趣味がやたら偏ってないか、本当に。



「そう言われましてもね。二次元こそ至高なんですからしょうがないじゃないですか。はぁ……ムラマサ様みたいな三次元男子どっかに転がってないかしら。ね、月依ちゃん」


「私は陽花(ひはな)お姉ちゃんが居れば十分ですので……」



月依先生は苦笑しながらそう告げる。

ん?陽花お姉ちゃんってどういうことだ?

あれ……もしかして月依先生って姉妹で子供作ったっていう事なのか?

近親相姦すぎんだろ。

でもそれだからこそ、陽依のような神童が生まれたのかもしれないな……。

その事実に妙に納得してしまった。



「月依ちゃんは相変わらずねぇ……。まあ陛下もあまり人のこと言えませんけどね」


「何を言う。陽花には日本との定期的な連絡係をやってもらっているだけだ。他意はないぞ」


「本当にそうですか?」


「う……うむ……」



その反応は明らかに不自然で、他意がありまくりなのが手に取るようにわかる。

なんだ、テラス様も陽花さんの事好きなのか。

月依先生とサクヤさんの旦那で、皇女様からも慕われてる。

どんだけもてまくりなんだろうか、陽花さんって人は。

会ったことはないけれども、一度どんな人なのか会ってみたくなってきたな。

今度、機会があったら会わせてもらおうかな……。

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