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第三話 異世界の日本人

「この子の名前は刹那。瞬ってのは刹那の後任の天使のことよ」



黒髪の二十代位の女はそう言いながら俺の頭をグリグリとげんこつで抑えつける。



「いてててて……。はぁ?なんだそれ。ていうかお前は何でそんなことを知ってるんだ?」



げんこつから頭を防御しながら眼鏡をかけた黒髪の女性に向かって俺はそう尋ねる。



「それは、色々あったのよ……。私は日本人だけど転生者の野々(ののむら)(かなで)。あんたも瞬のこと知ってるってことは転生者って事ね」


「ああ。俺の名前は春日野(かすがの)(はじめ)。転生前は三十歳だったけど若返って転生した。つうか野々(ののむら)(かなで)って、もしかして、あの野々(ののむら)(かなで)?」


「ええ、そうですよっ。私は『あの』幼女を描きながらトラックに轢かれて死んだ間抜けな間抜けなノノムー・カナデ先生ですよっ!!」



俺の言葉に更に気分を害したのかノノムー・カナデ先生こと奏は俺の口を左右に引っ張る。

ノノムー・カナデ先生。

オタク界隈ではノノムー先生の事を知らない奴はいない。

ノノムー先生のサークル、『ノノムーのお庭』の列は毎回長蛇の列。

そんなノノムー先生が急逝したの三年前の事。

ノノムー先生が死んだ時は不謹慎なネットニュース共が何て間抜けな死に様なんだとか囃し立てていた。

そうかー……ノノムー先生、転生してたのか。



「しかしまぁ……若返って転生ってそんな転生もあんのね、刹那?」


「そうですね。たまにそういう転生を希望される方は居ましたね」


「それにしても若返るにしたって若返りすぎなんじゃないの?見た感じ五歳児かそこらなんだけど」


「俺だってこんな若返るとは思わなかったわ!!」



ノノムー先生に唾を吐きかける勢いで俺はそう叫ぶ。

普通若返って転生って、あぶらののった15~18歳くらいに転生って相場が決まってるだろう。

それが五歳児かそこらだなんて。



「まぁいいわ。で、あんたの転生理由は何?また世界に危機でも迫ってんの?」


「は?」



ノノムー先生の言葉に俺は変な声をあげてしまう。

何言ってんだノノムー先生は。



「いや、そんな大した理由じゃないんだが……」



転生にそんな御大層な理由なんているのか?



「俺が死んだのは瞬のやつの手違いで、この異世界に転生するしか選択肢が無かったというか……そんな感じなんだが……。因みに俺の前に十三人間違って殺されてる」


「へー……天使の手違いで殺されることってあるのね……」


「おまえの後任は余程の間抜けらしいな、刹那よ」



俺の言葉に永久(とわ)はくっくっくと笑いを堪えている。



「本当に申し訳ございません、始さん……」


「しかも言葉も通じないこの世界にこんな姿で放り出されたもんだから、どうしたもんかと思ってたところで、そこの永久(とわ)にあったってわけだ」


「はぁ……なんかその無能転生っぷり、どっかのじいさん思い出すわね」



ノノムー先生は頭を抱えながら愚痴っぽく呟く。



「とりあえず話をまとめると始、あんたは転生者で中身は三十かそこらのおっさん。で、今は行く当てもない日本人っと」


「まぁそういうことだな」



ノノムー先生の言葉に俺は同意する。



「はぁ……どうしようかしらね。とりあえずユズキに相談してみようかしら」


「待ってください、奏さん。始さんが死んでしまったのは私の後任の瞬のせいです。だからこの私が償いたいです」


「償いたいって……まさかあんたこの中身がおっさんのガキを引き取るって言うの?」


「はい。そうですけど……」


「待った待った!!うちには刹奏(せつか)っていう年頃の娘がいんのよ?それなのにこんな中身がおっさんのガキと同居するなんて勘弁してよ、ホント」



刹那の言葉にノノムー先生はものすごい勢いで猛反対をする。

俺も刹那の提案は嬉しいけどこんな年下の女ばっかりの部屋に体はガキとはいえオッサンが転がり込むのもなぁ……。

傍から見たらハーレムうらやまな状況なんだろうけれども。



「でも、それじゃ、始さんが可哀そうじゃないですか……」


「そりゃそうだけど……」



刹那の寂しそうな顔にノノムー先生の心は揺れ動いているように見える。



「……なら私がコイツの面倒を見ることにしよう。部屋は新しくユズキに手配してもらえばよかろう」


「は?……永久(とわ)、あんたマジで言ってんの?」


「本気だが?何か不服か?」


「いや……あんたも変わったわねと思って」


「ふむ……そうか……私は変わったか……。ふん。まぁそれでもいいさ」



自嘲気味に永久(とわ)は笑みを漏らす。



「じゃ、ユズキにそう話を通しておくわ。始の面倒をみるのは任せるわよ、永久(とわ)


「ああ。わかった」



そうして、俺はこの異世界で永久(とわ)とかいう中二病気味な少女に面倒を見てもらうことになった。


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