第十七話 降格ですか?いいえ解雇です。
「というわけで、桜花先生は解雇になりましたー。今日から私、霧島月依が皆さんの担任になりまーす。月依先生って呼んでくださいー」
教卓の前にはスーツ姿の月依さん……もとい月依先生が凛とした姿で立っていた。
「だーかーらーーーー。私は副担任でしょっ」
「これから皆さんよろしくお願いしますね」
教室の後方から非難の声が聞こえてくるが、あえて聞こえないふりをする月依先生。
昨日の事、まだ怒ってんのなぁ……この人。
そういう根に持つとこは陽依とそっくりかもしんないな。
今朝も陽依のやつに俺はお仕置きをされたばかりだし。
「月依先生。どうせママは授業中にソシャゲしかしないんだし、もう解雇でもいいんじゃないかしら?」
「ふーん、そうなんだー……ご報告ありがとうね、灯花ちゃん」
「ちょ、灯花ちゃんそれ言っちゃ駄目っ!!」
「後でみっちりお話ししましょうかー、お・う・か・せ・ん・せ・い♪」
「は、はいー……」
桜花先生は月依先生に目で威圧されて、幼児たちの後ろの椅子に座って小さくなっていた。
まじでつええな、月依先生。
このアホ教師をここまで黙らせるなんて。
さすがタカマガハラで三位の実力者……。
「それじゃ今日はこの世界の歴史について学びましょうか」
そう言って月依先生は授業を始める。
おお、なんかすげー教師っぽい。
ほんと、後ろの席のアホ教師もう解雇で良いんじゃね?
そう思って振り返ると早速アホ教師はソシャゲに勤しみ始めた。
……やっぱもう手遅れですわ、このアホ教師。
「それじゃ、薙君、この世界の始まりについて知ってることを言ってみて?」
「はい、月依先生」
指名された薙は立ち上がりこの世界の始まりについて語り始める。
「この世界は天の神・天之御中主神様がお創りになられました。そしてこの世界各地に様々な神を作り、神々はそれぞれ国を作り治めるようになりました。それが八百万の神と言われる神々です」
へぇ……そうなのか。
天の神っていやあの背景に集中線入ってそうなじじいと会ったけど、あれが天之御中主神だったんだろうか?
「はい、よくできました。それじゃ、灯花ちゃん。この国の成り立ちを言ってみて?」
「はい。この国は天照大御神様がお創りになられました。そして天照大御神様は様々な神を作りこのタカマガハラという国をお創りになられました。私のご先祖様の天火明命様はこの時に生まれたそうです」
「さっすが灯花ちゃん。物知りー」
桜花先生は指を口にあてヒューヒューと口笛を鳴らす。
「桜花先生うるさいです」
そんな桜花先生を冷めた視線で月依先生は見つめる。
「良いじゃない。我が子の功績を褒め称える位」
「授業参観じゃないんですからやめてください」
「はーい……。……頭堅いなぁ……ほんと」
ぶつくさと言いながら再びソシャゲを興じる不良教師。
ほんと授業の邪魔しかしないのな、この人。
「気を取り直して。サクラちゃんのご先祖様やヒルノ君のご先祖様もこの時生まれました。それじゃヒルノ君、この国のカムイの成り立ちについて知ってることは?」
「んー……ようわからんけど、ご先祖さんは今の陽依みたいにカムイを呪言だけであやつれとったらしいなぁ。でもいつの頃からか悪用する奴らが出てきたもんやからカムイの力を自由に発動でけへんようにカムイを管理するサーバとカードで管理するようになったんやったかな?」
「そうです。だから私も桜花先生もカードを介してしかカムイの力を行使することができません。あなた達がカムイを使う事が出来るようになるのは高校生になってカードが支給されてからね。陽依がなんで呪言だけでカムイを使う事が出来るのか、今のとこ分かっていません」
「ひよ姉ばっかずるいよなー。ワイらも早くカムイ使いたいわ」
「それまでは私が最強だから分かりやすくて良いじゃない」
そう言って陽依は椅子の上でふんぞり返る。
ん……?あれ?
もしかして昨日気絶した後の事、陽依は聞かされてないのか?
怪訝な顔をして月依先生の方を見てみると唇に人差し指を立てて俺に合図を送っていた。
つまり刹奏の事は黙ってろという事らしい。
まぁ……そうだろうなぁ。
本人も制御できていない訳の分からない天使の力とやらを刹奏が持ってると知れ渡ったら、刹奏が普通に生活できるか怪しいもんな……。
「そうね。だからと言って陽依は呪言をむやみやたらに使用しないこと。そしてあまり上から目線で他の子を見ないこと」
「はーい。わかってますー」
本当に分かってるのか分からないような口ぶりで陽依は月依先生に返答する。
あのー……今朝も俺に呪言でお仕置きしたのはどこのどちらさまでしたかねぇ?
絶対隠れて使いまくるに決まってるんだよなぁ……こいつの性格上。
俺も陽依に負けないように天地神明刀を早く操れるように修行しなきゃなぁ。
やれやれだ……。




