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第十三話 あんた誰?


初等部に入園してから三か月ほど。

俺は大体のタカマガハラ語を話せるようになっていた。

ひより達の日本語の勉強も大体は終了し、園内ではタカマガハラ語で話すのが一般的になっていた。

ので、これからは大体の言葉はタカマガハラ語という事になる。



真夏の日差しが照り付けるある日の事。

俺と刹奏(せつか)陽依(ひより)、サクラはそれぞれ迎えを待って園外で待機していた。

因みにアホ教師は今日は灯花(とうか)ちゃんの習い事があるからーとか言ってとっとと帰って行ってしまった。

ほんと、親バカすぎんだろ、あのアホ。


そんなわけで初等部の門で日差しに晒されていると。

黒塗りの車に乗ったいかにも怪しい黒服姿の男二人組がやって来た。



「キミが陽依ちゃんだね?」


「おじさん、誰?」



物怖じしない態度で陽依はそう返す。



「おじさんはパパのお友達だよ」


「……違う。陽花(ひはな)さんにそんな友達いない」



黒服姿の男の言葉を即否定するサクラ。

何でそんなことが即答できるのかよく分からないが、まぁサクラがそう言うならそうなんだろう。



「ふーん。じゃおじさんたちは悪い人なんだね。祖たる原初の……むぐ」


「はいはいお嬢ちゃんは黙ってようね」



そう言って黒服姿の男は陽依に猿轡(さるぐつわ)をかませる。



「陽依お姉ちゃん!」


「おっと、こっちのお嬢ちゃんも大人しくしてようね」


「むぐ……」



刹奏にも同じように猿轡をかませると黒服姿の男は陽依と刹奏を抱えて車へと押し込む。



「ちょっとお前ら何やってんだよ」


「お前らには用はないからおねんねしてな、ボーイズ&ガールズ?」


「はぁ?何言ってんだ!そんな誘拐みたいな事してただで済むと思ってんのかよ!!」



俺は男の手に噛みつくと意地でも離さないといった感じで食らいつく。



「いててててっ!!」


「おい、ちんたらしてんな置いてくぞ」


「お、おう」



男は俺に噛みつかれたまま車の後部座席へと乗り込んだ。

そしてもう一人の男も運転席に乗り込み車を急発進させる。



「お姉様!!」



そう叫ぶサクラただ一人を残して俺達を乗せた車は走り去って行った。


―――


廃屋のビルの一室。

俺と陽依と刹奏は手を縛らて同じ柱に括りつけられていた。

陽依と刹奏には猿轡をはめてる用意周到ぶり。

これはこいつらの能力を知ってる奴らの犯行とみて間違いないか。



「で、あんたらの狙いは何なんだ?身代金でもふんだくろうってのか?」


「それも良いんだけどなぁ」


「こっちにも事情ってもんがあんだよ。坊主は巻き込まれ損だけどな」



という事は、やっぱり狙いはもとから陽依と刹奏か。

身代金狙いなら危険度が低いヒルノや薙の方が効率良さそうだしな。

とりあえずここが何処か分からんが脱出する方法考えないとなぁ……。

今頃サクヤさん達も必死になって探してくれてそうだけど。

現状分析をまずしてみよう。


犯人は今の所、二人組。

口ぶりからすると恐らくその上にもだれか主犯格がいる可能性大。

対してこちらはカムイを無力化されてる陽依に、あまり役に立たなそうな召喚能力を無力化されてる刹奏。

そして何のスキルもない俺。

うーん……陽依の猿轡外せればなんかやりようがありそうなんだが……。

どうしたもんかと陽依に視線を移すと、睨むような視線が俺に帰って来た。

あ……こいつ、自由になったら絶対おっさん達殺()る気満々なやつだわ……。

それならそれで話は早い。



『おっさんー……トイレ行きたいんだが―』



俺は試しに日本語で話しかけてみる。



「坊主、何言ってんのか分かんねえぞ」


「あ、ごめんごめん間違えた。ちょっとトイレに行きたいなと思っただけだよ」


「なんだー?トイレだ?我慢しろ我慢」



ふむ……どうやらこいつらには日本語は通じないらしい。

結構結構、好都合。



『おい、陽依よく聞け』


『むぐ』



俺の意図を組んだのか日本語で陽依も返事してくる。

物分かりが良い奴で助かるな本当に。



『あいつらの隙を見てお前の口にはめられてるの取ってやる。そしたら一発痛いのかましてやれ』


『むぐむぐ』



言いながらコクコクと陽依はうなずく。

よし、それじゃあ、あのおっさん達の隙を見て陽依の猿轡外す方法考えないとなんだが……。

この体の距離で自由の効かない手足……となると方法は一個しかねーんだよなぁ……。

出来ればやりたくないが、いつ状況が変わるとも分からないしやるしかないな。



「おい、ちょっとトイレいってくるわ。ガキども気を付けて見張ってろよ」


「分かってますよ兄貴」



そう言って黒服の男の一人は去って行った。

もう一人の男は何やら懐から取り出したデバイスを弄り始めた。

よし、チャンス到来とはまさにこの事。



『陽依、こっち向いて出来るだけこっちに体寄せろ、早く!!!』



俺は小声で陽依にそう告げる。

俺も体を出来るだけ陽依の方へと向け顔を陽依の方へと近づける。



『むぐー……』



お互いの顔が近づいたところで陽依は真っ赤になって顔をそっぽ向ける。



『おいっ!!それじゃお前の口のやつ外せないだろうが!!!』


『むぐー、むぐー!!!』


『騒ぐな、気付かれたらどうすんだっ!そして早くこっち向け』



小声でこちらを向くように促す。



『むぐー……』



陽依は観念したのか真っ赤な顔をこちらへと向ける。

目の前には陽依の真っ赤な顔。

これから俺は何をするのか。

それは決まっている。

俺は迷わず陽依に口付けをするように口で陽依の猿轡を引っ張り下にずらす。

そして。



『祖たる原初の土霊(とれい)よ、馳せ来たれ。そして我が呼び声に応えよ、乱岩弾(らんがんだん)!!!』



自由になった陽依の口から日本語で呪言が紡がれる。

陽依の声にハッとして黒服の男はカードを構えるが三手遅い。

男はカードを手にしたまま乱岩弾の岩が次々と直撃して昏倒するのだった。

相変わらずえげつないな、コイツのカムイ。



「まったく、始!!あんたなんてことしてくれんのよっ!!わ、私のファースト……」



一息ついたのも束の間、陽依は真っ赤な顔をして俺に文句を言ってくる。



「しゃあねえだろ。これしか方法なかったんだし。もう一人も戻ってくるかもしれねーから早くおまえのカムイで縄斬ってくれ」


「むうううううう……あんたのお仕置きはその後だからね!!!」



俺のお仕置きは確定ですか、そうですか。

まぁしょうがないか……。

ファーストキスだったんだろうしな……。

しかしそんなことを意識するなんて最近のガキはマセてんなぁ……。



「祖たる原初の火霊(かれい)よ、馳せ来たれ。火呼(かこ)!」



俺達の手や体を拘束していた縄を燃やし尽くす。



「相変わらず便利だよなぁ……おまえのカムイって」



自由になった俺は涙ぐんでいた刹奏の猿轡も外してやる。

その様子を見ながら陽依はフンッと鼻を鳴らして倒れ伏した男の方に近寄って行く。



「始ちゃん怖かったよー……」


「まだ安心するのは早いぞ。あと一人いるんだからな」


「う、うん……」



そう答えると刹奏は俺の背に隠れ、スモックの背を引っ張ってついてくる。

陽依はあんなに強気なのになぁ……。

同じ神童でもこうも違うもんかね。



「祖たる原初の木霊(もくれい)よ、馳せ来たれ。そして我が呼び声に応えよ、蔦縛(つたしばり)!」



陽依の発動させた蔦縛で黒服の男は体中蔦で拘束されて無事戦闘不能。

その辺に落ちてたカムイのカードも念のために俺は懐に回収しておいた。

さて……後はもう一人が来るのを待つばかりなんだけども……。

それにしても妙に遅いな……ウ●コかウ●コだったのか?

ウ●コかー……ウ●コならしょうがないな。

うん。

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