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第十二話 そうなんです。

砂山を上り始めて四半時。



「みてるだけじゃつまんないわねー」



俺とヒルノが汗水たらして砂山を登ってるのを眺めていたひよりはそうのたまう。

因みにサクラと刹奏(せつか)は心配そうな眼差しで俺達の姿を見つめている。



「お前、俺達がどんだけ苦労して登ってるかわかってないだろ!」



砂山って登るの大変なんだぞ!

足の力の賭け具合ですぐに足元から砂が崩れ落ちていくし。



「はい、げんてんー。1と2と3どれがいい?」


「……それ、なんか意味あんのか?」


「さぁなんでしょうね?」


「じゃあ1だ」


「はい。それじゃ、そたるげんしょのすいれいよ、はせきたれ。そしてわがよびごえにこたえよ!こううしょうらい!」



ひよりの呪言とともに掌が青く光り俺達の頭上から雷雨が降り注ぐ。

おいいいいいいいい。

砂山の上でそんなことすんなよ、このクソガキがああああああ!!!

俺は慌てて砂山の砂を掘り穴ぐらを作り上げて避難する。



「おい、ヒルノもこっちに早く来い」


「おー……ありがとな、おっちゃん」


「気にすんな。ていうか、いいかげんそのおっちゃんは止めて欲しいんだが」


「んー?じゃあ始やからはじやん?はーちゃん?はっつん?どれがええ?」



はじやんはなんかやだなぁ。

なんか恥かいてるみたいだし。

はーちゃんもなんか却下。



「じゃあはっつんでいいぞ」


「おう。じゃあ改めてよろしうな、はっつん」


「あらあら。ずいぶんなかよくなったじゃない。あめふってじかたまるとはこのことね」



俺達のやり取りを聞きながらクスクスと笑みをこぼすひより。

くそー……他人事だと思って調子こきやがって……。

いつか仕返ししてやる。

穴ぐらの中でヒルノと身を寄せ合ってぼんやりとそんな事を考えていると。



陽依(ひより)ちゃんー、サクラちゃんー、刹奏(せつか)ちゃんー。昼御飯ですよー」



教卓で舟をこいでいたはずのアホ教師の声が聞こえてきた。



「はーい、おうかせんせー。それじゃ、あとはがんばってねー」


「ちょ、おまえ!俺達放置かよ!」


「ちょうじょうについたらもどしてあげるから」


「頂上って……まだ倍近くあるんだが……」


「おとこのこでしょ。がんばりなさいよ」



そう言ってひらひらと手を振ってひよりは去って行った。

サクラと刹奏も俺達に軽くお辞儀をしてひよりについていってしまった。

そして砂山にとり残されるヒルノと俺。



「まぁなんだ……お前も災難だったなヒルノ」


「んー?ひよ姉のストレス解消はいつもの事やからなぁ。別に気にしてへんよ」


「ストレス解消って……」



これがストレス解消で済むレベルなのかよ。



「ひよ姉もな。神童神童もちあげられとるからあんま迂闊なことでけへんのよ。だからたまにこうやってストレス解消してやらんといかんわけなんよ」


「まさか今までもヒルノがストレス解消につきあってやってたのか?」


「んー?まぁなぁ。ひよ姉とこうやって遊ぶのもそれなりに楽しいしな。ちょっとしんどいことも有るけど」


「……おまえ、ホント苦労してんのな」


「でもこれからは、はっつんもつきおうてくれるんやろ」



ニハハという笑みを湛えてヒルノは俺に笑いかける。

むう……ホントのとこはこんな事に付き合うのは御免こうむりたいとこだが。

ヒルノ一人にこれを押し付けるのも何だか気が引ける。



「はぁ……しゃあねえから付き合ってやるよ」


「ありがとな。はっつん」


「しかしな……この雨、いつ降りやむんだ?」


「ひよ姉のカムイの効果が切れるまでやろうなぁ……」



ほー……効果時間とかあるのか。

それならわざわざ汗水たらしてこんな砂山登んなくても良かったんじゃねえの?



「効果時間切れはだいたい丸一日やな。ひよ姉が解除せん限り」



ダメじゃん。全然駄目じゃん!



「なぁそれだと俺達ここから身動き取れなくないか?」


「そうとも言うなぁ……」



二人で掘った穴ぐらの中から空を見やると局所的に集中豪雨に雷が降り注いでいる。

こんな中、山登ったらまず死ぬよな……。

はぁ……どないせいちゅうねん。

こんな街中の公園の砂山で遭難なんて笑えねーぞ、おい。



「まー、ひよ姉達が迎えに来てくれるまで待つしかないんやないかなー」


「いつ迎えに来てくれるかが問題だな……」



砂山に降り注ぐ豪雨でこの穴もいつ崩れるかもわからんし。

出来れば早急に回収して欲しいもんだが……。

というか、あのアホ教師も昼飯に俺達が帰ってこないんだったら探しに来いよ!

ひより達だけ回収していきやがって。

ホント、教師としての自覚あるんかね……あのアホ教師。


ヒルノと穴ぐらで過ごすこと一時間。



「始ー。ヒルノくんー。どこー?」



アホ教師の声がようやく聞こえてきた。



「ここだここー!!」



俺は声を上げて助けを求める。

しかし俺の声が聞こえていないのか、アホ教師の声は遠ざかっていく。



「おいいいいいい!!!ここだって言ってんだろおおおおおおお!このアホ教師!!!」



「お、今何か聞こえたような……でも気のせいかなー……?」



絶対聞こえてただろ、あんにゃろう。

くそー……あの不良教師の下手に出るのも癪だが仕方ない。



「桜花先生様、ここです、お助けくださいーーー」


「え、何だって?」



おまえどっかのハーレムラノベの主人公様かよ?

そんなベタな返し今時流行んねーぞ、おい。



「桜花大先生様、お助けくださいませっっ」



俺はやけくそ気味にそう叫び声を上げる。



「はいはい。まったく……うげ……二人共砂まみれじゃないの」



言いながら俺とヒルノをひょいひょいと手に摘まみ、指で軽く体をはたく桜花先生。

はぁ……助かったー……。



「楽しかったなぁ、はっつん」



びしょぬれになった頭をふるふると振りながらヒルノはニハハと笑いかけてくる。

ぶっちゃけ俺はもう勘弁してほしいけどな。

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