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第一話 プロローグ

「オタクな私の就職先は異世界で、再び学園生活をおくる事になってしまいました。」

https://ncode.syosetu.com/n1795eg/


「同人作家は少女の記憶を求めて異世界を巡る」

https://ncode.syosetu.com/n9665em/


の続きの話になりますが、読まなくても全然問題ありません。たぶん。


というわけで、新しい異世界物語の始まりです。

地獄だ。

この夏の猛暑っぷりを一言で表現するならこうだった。

どこぞやでは毎日のように気温が40℃を超えただのなんだのとニュースをにぎわせている。

ここ東京もその例には漏れず40℃に近い気温を連日叩きだしていた。

そんな気温が続く最中、俺は早朝から大規模即売会にやって来ている。


照り付ける太陽。

コンクリートの地面から照り返してくる熱気。

そしてそこにたむろする人々からあふれ出る、むせかえる様な汗の匂い。

ここはまさに生き地獄としか言いようがない。

列の前方を見やると綺麗に整列した人々から発散された蒸気で景色が歪んで見える。


はぁ……。

まだ開始まで後四時間もあるんだぜ?

朝っぱらからこの調子じゃ死人が出るだろ、本当に。

待機列の横をうちわで仰ぎながらカートを引いていくサークル参加の連中を恨めしそうに眺めながら心の中で俺はぼやく。

今日の目的地はただ一つ。

サークル『アール』の新刊をゲットすること。

『アール』の主催、ユズキ先生は女性向け・一般向けの同人誌を頒布(はんぷ)するので男女から高い支持を受けている。

ユズキ先生の何が凄いかって言うと、女性向けのBL本と一般向けの本とでは全然絵柄が違うという事だ。

女性向けのBL本も買ってみたけどなんというかイケメン男子やマッチョな男子があんなことやこんなことを……と考えるだけでむさ苦しいからやめておこう。

一般向け本はそれに対して、一言で言うならめちゃくちゃ可愛い絵柄なのだ。

ユズキ先生の描く女の子は天使そのもの。

それはまるでその可愛い女の子がそこに存在するかのようなリアリティのある絵なのだ。

ユズキ先生、マジ天使……。


俺はユズキ先生の本を買う為ならマジで死ねる。

そう断言できるね、うん。

にしても今年の夏は本当に暑いな。

この暑さの中、連日参加してるから何だか頭がクラクラしてくる。

俺も年をとったなぁ……大規模即売会に参加し始めて二十年、そんなこと一度も無かったのに。

いやいや……ここで倒れたらそれこそ元も子もない。

俺はユズキ先生の新刊を買って帰るんだ、うん。



「というわけで、あなたは死んでしまったわけなんですよ」



救急搬送されていく自分の死体を呆然と見つめていると、いつのまにか横に居た黒い和服を着た白い天使の羽の生えた金髪少女が俺にそう告げる。

その金髪少女はユズキ先生の描く絵から抜け出てきたような美少女だった。




「……まじか」



自分が死んでしまったことが信じられず金髪少女に問い返す。



「まじですよー?それじゃあなたをニヴルヘイムに御案内しますんで付いてきてくださいねー」



見た目と違い慈悲も無い言葉を告げ、金髪少女は力なく肩を落とした俺の手を取ると俺の意識は白い空間へと飲み込まれていく。

広大な真っ白な空間。

延々と広がっている真っ白な世界。

ここがニヴルヘイムとやらなんだろうか。



「瞬よっ!!!!!」



突然、怒鳴り声が真っ白な空間に響き渡る。



「あれ?どうしたんですか?天の神様」



金髪少女……瞬という名前らしい……と上空を見上げると真っ白な髭をたたえたじいさんが空中に浮いていた。



「おぬしっ!!!連れてくる人間を間違えておるぞっ!!!!!」


「へ……?」



天の神様とよんだじいさんの言葉に瞬は眼を白黒させている。



「おぬしが連れてこなければならなかったのは、田中一郎と言う男じゃっ!!!!!」


「え……あのー……あなた、田中一郎さんですよね?」


「……俺の名前は、春日野(かすがの)(はじめ)なんだけど……」



瞬に問われ、俺は自分の名前を一言一句、違えずに教えてやる。

そう俺の名前は春日野始だ。

断じて田中一郎なんてダサい名前なんかじゃない。

そして頭に『R』なんてつけたら、駄目だ。絶対に。



「あ、あれ……?あはははは……」


「……」



俺の言葉に瞬は顔を引きつらせながら綺麗な金色の髪の毛を弄り始める。



「瞬よっ!!!この手違い、おぬしが就任して以来何度目じゃっ!!!」


「……よ、十四度目です……」



天の神様の気迫のこもった言葉に瞬は肩を落として泣きそうな声で呟く。

ていうか手違い?俺が死んだのって手違いなの?

しかもそれで死んだ人間が他にも十三人もいるのかよっ!!

こ、この天使、マジで無能か……。

いや天使って言う位だから長年勤めてるんだろうし少ない方なのか?

……どっちでもいいか。


「ならこの場合の対処法は分かっておるなっ!!!ちゃんと処理するのじゃぞっ!!!」


「……はい……わかりました、すいません、天の神様……」


「では、さらばじゃっ!!!!」



天の神様はそう告げると白い空間から掻き消えてしまった。

なんつーか、あのじいさん、偉いんだろうけど……背景に集中線がはいってそうな語尾でうざかったな……。

まぁいいや。

俺が死んだのは手違いらしいし。



「というわけで、春日野始さん。不幸な手違いで死んでしまったあなたには三つの選択肢をあげましょう」



……不幸なって、お前が言うのか。

その不幸な手違いを起こしたお前が言うのか。

俺の非難の眼差しを涼やかな顔をして無視しながら、瞬は指を立てこう告げる。



「1.このままお気楽極楽に天国へとご招待」


「そっちの手違いで死んだってのにそのまま天国にご招待ってどういうことよ?」



俺の突込みに構わず瞬は無感情で言葉を続ける。



「2.何かしらの特殊能力を得てとってもファンタジーな異世界に一から転生する(能力はランダムです)」


「ちょっとまて。(能力がランダムです)ってなんだ、ランダムって」


「さぁ……私も、先代の天使たちもそういう転生をやったことないんで、どうなるかわかんないんですよ」



それって俺を実験台にしようとしてるだけじゃありませんかねぇ?

なぁそうだろ、このクソ天使!



「3.能力はあなたの努力次第ですが、今の日本と行き来が出来る近未来的な異世界に転生する」


「……実質、選択肢一択じゃねーか」


「じゃあ、1のそのまま天国にご招待という事で」



瞬はそう言って手から光り輝く刀を召喚し俺に向かって振り下ろそうとする。



「ちょ、ちょっと待てっ!誰も1だとは言ってないだろ!3だ、3っ!」



俺は慌てて手を振って自分が選んだ選択肢を提示する。



「あら……そうですか。私はてっきり1だとばかり。今までの方々は全員1だったもので」



どんだけこの世に未練が無い奴らだったんだよ、そいつらは。

普通、日本に戻れる可能性あるんなら3を選ぶだろっ、3!!

そう突っ込んでやりたいけど機嫌を損ねられて1の天国送りにされちゃたまらないのでぐっとこらえる。



「そうですねー。でもあなたの肉体はもう火葬されちゃってて、もうこの世には存在しないんです。だから新しい肉体を得て転生という形になるんですが、それでもよろしいですか?ご希望なら前の肉体そのままに転生することもできますけど」


「んーそうだなぁ……。どうせなら若い新しい肉体にしてもらうかな。あの肉体で転生なんてまったく新鮮味なんかないからな」



俺の容姿は決して悪い方でもなかったが良い方でもなかった。

けれどもう年も三十路越えだったし。

それだったら新しい若い体で転生させてもらった方が気分が良い。



「それじゃ、3の若返って転生コースってことで構いませんね?」


「ああ、それで頼む」


「了解しました。それでは、あなたの新しい人生に幸があらんことを。グッバイ、始さん!また会う日までーーーーー!!」



瞬はそう叫びながら自分の手に羽の生えたファンシーな木槌を召喚し俺の脳天に向かって振り下ろす。



「ちょ、待てっ!!!その前になんかその異世界について説明とかあるだr……」



ガッ!!!!



言いかけた俺の言葉を遮り、瞬は俺の脳天にファンシーな木槌を直撃させる。

そして、俺の意識は混沌の中へと引きづり込まれていった。

なんつー天使だ、この野郎……。


というわけで、久々の新作です。

男主人公です。野郎です。

更新ペースは一週間に一回か二回できればいいかなーな感じで……と思っています。

気長にお付き合いしていただければ幸いです。

でわでわ。

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