無敗の師匠へ敗北を送りたい…です
師匠と剣を合わせるのも久々だ。
まだ一度も勝ったことはないが…
でも、今日は勝つ。
勝たなければいけない。
今起こっている惨劇が師匠が起こしたものだとすれば、このまま放置すれば何度も繰り返す可能性がある。
ミィナだって言ってたじゃないか。
俺が間違った道を行きそうになったら、沙耶達皆が止めるって。
なら、師匠が間違った道を行こうとしてるのを止めるのは弟子である俺の務めだ。
師匠と離れて俺は自分なりに特訓だってした。
過去とは違う。得た経験を巡らせろ。
リミット解除の残り時間は2分…
この2分で俺の全力をもって師匠に敗北を与える!
まずは先手で俺のペースにもっていく!
低姿勢から地を蹴り師匠との間合いを一気に詰める。
師匠の懐に入り無防備な横腹を狙い剣を左の剣を振り抜く。
しかし、師匠の刀はいつのまにか俺の剣を受けていた。
すぐさま右足を軸に回転し。師匠の後方を取り右の剣を振り下ろす。
またしても、師匠の刀はいつの間にか背中にあり師匠は片手で俺の全力の剣を受けていた。
師匠の態勢を崩すように足払いをするが、すでに師匠の足はその場になく…
いや、足だけではない。
姿、気配すら完全に消えた。
ただ単に避けたわけではない。
姿すらも視認させないほどの完全な気配遮断。
風や草木の自然の動きにすら影響を与えない。
まるで、師匠の存在そのものが別次元にいるかのような…
目に頼るな!
目に見えるものがすべてじゃない。
俺は目を閉じ攻防どちらにも対応できるよう剣を構える。
埃一つの掠れも逃すな。
そして、何もない空間に違和感を感じた。
「フッ!」
その違和感の場所に全力で剣を振るった。
振るった剣は何かに当たる手ごたえがあった。
それを認識すれば、師匠の姿は視認できるようになった。
「あらぁらぁ~やっぱり悠くんにこれは意味なかったかなぁ~」
剣を受ける師匠は笑顔のまま余裕そのものだった。
全力で剣を放っているのにも余裕でいる師匠に俺は焦りだす。
無駄な移動をやめ、正面から剣戟で勝負をする。
しかし、その剣戟すべてを受け止められる。
「ダメだよぉ~単調すぎてそろそろ私飽きてきたなぁ~そろそろ攻守交替しようかぁ~」
師匠がそういうと、俺の剣戟の1つに師匠は刀を斬り弾く。
師匠が放ったのはたった1斬り。しかし、その1斬りは力強く俺の態勢を崩すには十分だった。
態勢を崩した俺に師匠の刀が迫る。
俺はすぐさま剣戟を地面に放ち、師匠の刀を避けつつ態勢を整えた。
しかし、師匠の刀は俺を追ってくる。
すぐさま受けの構えに転じ師匠の刀を真正面から受け止めた。
師匠は1つの刀で俺が2本の剣で出す剣戟よりも早く鋭い剣戟を放つ。
それを防戦一方で受ける。
火を纏う師匠の刀から放たれる剣戟は熱く力強い。そして、少しでもかすれば身体は焼かれるだろう。
また、熱により視認する刀の位置が歪んで見える。
手の動きでどの位置に剣戟が来るかは予想はできるが、完全に把握することができない。
少しの位置把握のズレ。
そのズレは少しであっても、俺に違和感を与え受けるのすらキツクなってくる。
そこからは、防戦一方のまま時間が過ぎた。
俺の身体から一気に力が抜け始める。
それと同時に身体全身に激痛が走る。
「うッ!?」
リミット解除により俺のもちうる全力を使用していたが、身体が力に耐えきれなくなった。
激痛により生まれた隙を師匠は逃さなかった。
師匠は刀を鞘に収め俺に一撃を入れた。
その一撃の衝撃で俺は後方の木を投げ倒しながら数十メートル飛んで行った。
リミット解除の激痛に追い打ちをかけるような追撃が俺の意識を削ぎ始める。
「悠くんここまでだねぇ~悠くん弱くなってるの自分でも分るよねぇ?前の悠くんなら私にいくつか攻撃与えれたはずなんだけどなぁ~
まぁ~これからまた強くなればいいだけだからねぇ~ほぉらぁ~行くよ~」
師匠はそういいながら、俺の手を取ろうと手を出してきた。
パシィ!
俺はその師匠の手を弾いた。
「あのねぇ~悠くん今の状況分ってるのかなぁ~ってもういいよ。気絶させて連れていくだけでいいんだからねぇ~」
師匠は刀を鞘に収めたまま俺に振るった。




