望まぬ再会
森を駆ける。
森の中は嫌に静かだった。
魔物の群れに近づくまでは。
近づくにつれて、魔物の足音が大きくなってくる。
そして、魔物を視野に入れると俺は2本の剣を抜いた。
「“リミットフル解除”」
今度は、ミィナによる強制解除ではなくリミットフル解除を自分で行った。
ミィナの時は、強制的があるが故に解除しきれない部分もあったが、今回は違う。
「これが俺の全力だ!魔物どもその身に俺の強さを刻め!如月 悠全力で行く!」
右足が地面についたと同時に全力で土をける。
目の前に魔物の顔が迫る。
魔物の目の前に来ると、左足で地を蹴り横回転しながら魔物の首を撥ねる。
1体1体一撃で殺る。
((ユウ、今の状態は保って5分よ。それ以上は、ユウの身体が保たない。風の抵抗とか魔物の能力は私が対処するから、目の前の魔物本体だけをユウは気にしていて))
5分かぁ。
まぁ、それだけあれば強そうな魔物はほぼほぼ斬れる。
風の抵抗がない分、自分のスピードがいつもの比じゃないくらいに出る。
これならいける。
「魔物半分ぐらいならいけそうだな」
((ユウあまり調子乗らないで。戦闘中よ))
そんなことを言っていると、ミィナに怒られた。
一直線上に並ぶ強そうな魔物は、すぐに倒れていく。
5000もの魔物を1分で斬った。
よし、あとは5体。
あと、4。
3。
2。
1…
その1体で剣が止まった。
((ユウ!何やってるの!))
俺の剣の先は、ケガした小さな子を守る大きな魔物の姿だった。
俺を威嚇しながら、決してその子から離れない。
「なぁ、ミィナ魔物が2体ぐらい逃げても大丈夫だろう。それに、ほら襲ってこない」
俺はそういって、剣を鞘に納めてから両手を広げた。
((バカ!戦闘中に無防備になるな!))
俺にはわかっていた。
嫌にでもわかる。
この魔物は人間と同じ生あるもの。
親なんだ。
子を守ろうとする。
「ここは危険だ。ここを早く逃げてくれないか?」
俺はそう魔物に言った。
「“悠くんダメだよそんな甘ちゃんじゃ”」
すると突然声が聞こえてきた。
そして、目の前の魔物は空から落ちてきた雷によって焼かれた。
目の前には、黒く焦げた塊が転がっている。
肉が焦げたにおいを残し…
「会わないうちに何でそんないけない子になっちゃのかなぁ~」
先ほど聞こえてきた声が次は近くで聞こえてきた。
聞いたことのある声。
会いたいと願った人の声。
俺を救った声。
俺を強くした声。
今一番この場にいてほしくない人の声…
「し…し、師匠…」
「やっほー元気にしてたかい悠くん」
声が聞こえる空を見上げる。
そこには、赤い長い髪を靡かせながら優しい笑みでこちらを見つめる女…師匠がいた。




