戦いへ歩き出す
精木が色鮮やかな緑の葉に包まれた空へ昇る光となったエルフたち。
それはまるで、長年の時を守り戦ったエルフたちの旅立ちを見送るように。
風に葉をなびかせて…
何分経っただろうか。
全ての光が天に昇り終わり消えた。
地上に倒れたエルフたちの姿形はない。
「皆さんありがとうございます。エルフを代表し感謝致します。こんなにも輝かしい精木にも見送られた家族は幸せです」
エルフの少女は、俺たちに向かい頭を下げてきた。
「騎士団長!」
そんな中、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「レイ遅いではないか!」
「無茶言わないでくださいよ。騎士団長が急に飛び出して行ったんでしょう。他50名の団員もいるんですよ。騎士団長の全力についていけるはずないじゃないですか」
文句を言いながら、大勢の騎士を率い歩いてくる見覚えのある茶髪。
「仕方ないではないか。胸騒ぎがしたので、ユウに何かあったのではと思ったら止まれない!」
「はぁ〜騎士団長は、少しは考えるってことを覚えてください。っと、ユウ久しぶり。うん、無事そうだな!」
レイは、俺を見つけると手を振ってきた。
「無事そうに見えるか?服も身体もボロボロだぞ」
「先まで戦っていたのだろう。エルフの住民たちに話を聞いてきたから大体は把握してるぞ。戦闘したのだからそれぐらいは当たり前だろう。それともなんだ、ユウも騎士団長みたいに、戦闘で傷を負うのは死ぬ時だけだとでも狂気じみたことを言うのか?」
「そんな狂気のミレイヤと一緒にするなよ」
「お前らぁ〜人のこと悪く言い過ぎではないかぁ〜」
そういってミレイヤが俺たちを睨んでくる。
レイはただ笑顔だが…
「っと、魔王悪いな。早くしないと、敵が来てしまうな」
「ま、魔王⁉︎えっ!いえ、精木の清浄化に家族の天昇…普通の魔族ではないと思いましたが、まさか魔王とは…」
俺の言葉にエルフの少女が反応してきた。
あぁ、そういえば、魔族ではあるのは見てわかったみたいだが、魔王とは言ってなかったな。
「魔王様、敵が接近しています。これ以上時間を無駄にしては間に合いません」
「うむ。エルフの少女よ、戦いはまだ終わっておらぬ。これ以上被害を出したくなければ、この家を捨て逃げることを勧める」
魔王はそういうと、驚いているエルフを置いて、聖樹の外へと歩いて行く。
魔王と魔族の2人で…
2人で?
えっ!
ちょっと!
いい感じに行こうとするなよ!
てか黙って置いて行くなよ!
「兄さん、あの2人いっちゃいましたよ…」
「行ったな…もう見えないよ…」
「ちょっと、ユウ様にサヤは黙ってみてないでついていきましょうよ!」
いやいや、黙ってみていたリサに言われても…
「はぁ〜ユウの周りにはバカしかいないの…皆早く行くわよ」
ミィナは、ため息をつきながら聖樹の出口へ歩き出した。
俺たちもそれに続いて行く。




