見送り
魔王に続き外に歩いていく。
歩く道は、戦闘後の跡が残り壁や地面はあちらこちら崩れている。
しかし、エルフたちが見当たらない。
最初ここに来た時は、確かに何にものエルフが亡くなり、倒れていた。
なのに、エルフが一人もいない。
戦闘中は気にしている余裕がなかったし、激しい戦闘だったから吹き飛んだか?
全部が?跡形もなく?
そんな馬鹿なことがあるわけがない…
まさか生きていたとか⁉
まぁ、それもないか。あの時確実に生命力が見えなかった。
ならどこに?
俺はそんなことを考えながらゆっくりと歩いていた。
そして、その考えの答えは外に出たらすぐに出た。
明るく差し込む日に目を細め、外を見るとそこには一人の少女が力なくし動かないエルフたちを精木の周り並べていた。
一人を置いたら、また一人を運び置く。少女は涙を流しながらも一人でそれを繰り返していた。
「お兄ちゃん」
沙耶が声をかけてき、こっちを見てきた。
何を言いたいかすぐに分かった。
「あぁ。魔王悪いが少し待っていてくれ」
俺はそういうと、倒れているエルフのもとに行き、少女がやっているように運び並び始める。
そして、俺に続き沙耶達5人も運び始める。
「あなた達は⁉ご無事だったのですね!」
エルフたちを運ぶ俺たちに気づいたエルフがこちらに駆け寄ってきた。
この少女は…
確か、ダージャと戦っていたから逃がしたエルフじゃないか!
「なんとかな。話は後だ、早く皆を運ぼう」
「はい!」
エルフたちを運びながら、次に迫る戦いを考える。
魔族が増援できたとして、いったい何人来る…
どうやったら、皆を生かし勝利を手にできる…
周辺国も敵である可能性が高い。そんな中で魔物5万を倒せばすべてが終わるのか?
しかし、5万の敵に余力を残せるか?
おそらく無理だろう…
俺は、先の戦いでリミットをフルで1回解除してしまっている。
もう一度解除はするが、どれだけ保つか…
3時間でおそらく気絶してしまうだろう…
その間に決着は無理だとしても、できるだけ強いて敵を倒しておかないだな。
ならまず俺は、戦闘が始まる前に強い魔物がいるルートを見出し突っ込む。
よし、これで行こう!
後は、増援を頼りにさせてもらおう。
この考えは、沙耶達に気づかれてはいけない。
絶対反対するからな。
ミィナには口封じしないとだけど…
と、あれこれ考えているうちにエルフを運び終えた。
「あの、ありがとうございます!よくご無事で!」
運び終えると、またエルフの少女が駆け寄ってきた。
「まぁ、倒したのは俺たちじゃないんだけどな…」
「?それはどういう…」
あぁ、この子がいる時にはまだ、ミィナとか魔王はいなかったもんな。
俺たちが倒したと思うよな。
俺は周りを見て魔王を探した。
魔王とリューザは精木を見ていた。
俺は、少女を連れては王のほうへ歩いていく。
「魔族⁉どうして⁉どういうことですか⁉あなた達も敵なのですか⁉」
少女は、魔王の元まで行くと驚きこっちをみて叫んできた。
「うるさいですね。私たちが敵ならあなたはとっくに死んでますし、まず助けてすらいないでしょう」
おぉ、今度は沙耶が怒っている。
目つきがきつくなってるよ沙耶…
「っ!それはそうですが、でしたらなぜ魔族が…」
混乱している少女に俺は、戦いの顛末を説明した。
「申し訳ございません!」
そして、今少女は俺たちに全力で頭を下げていた。
「仕方ないですよ。先まで戦っていたのも魔族ですし、いきなり魔族が目の前に現れれば、敵に思えますよ」
リサが少女にフォローを入れる。
「お主、ここにおるエルフたちは此度の戦いで?」
魔王が少女に話しかける。
「そうです…」
そしてまた、少女に影が落ちる。
「そうか」
魔王はそう一言いうと、精木にい手を当てた。
すると、魔王の手が光り輝きだした。
「こんな寂しい木下では寂しかろう。この地を守り抜いた英雄たちは、明るく見送ってやらねばな。リューザよ、エルフたちを」
「はっ!」
先まで枯れていた精木に緑が生まれ、輝きだした。
そして、並べられたエルフたちも光出し、体が光の粒子になり天に昇っていく。
「さぁ、英雄たちの見送りだ」
魔王がそういった。
そして、俺たちは皆でエルフたちを静かに見送った。




