敵ですか?味方ですか?
ダージャの背後にはいつの間にか、2人の魔族が立っていた。
1人は、ダージャの胸を貫いているおじさん。
体格が大きく、なんとも言えぬ風格がある。
もう1人は、おじさんの横に並び立つ眼鏡をかけた細身の魔族だ。
「ま、魔王…なぜ、なぜあなたがここに!」
魔王⁉︎
恐らくおじさんの方が魔王だろうな。
って、いきなりラスボスきたんじゃないのこれ⁉︎
「ダージャよ、お主は大胆に行動しすぎだ。儂等が何も気づかぬとおもったか」
魔王の冷たく低い声が響く。
「ガハッ……」
ダージャは、力を失いその場に崩れ落ちた。
魔王は、腕についた血を払うと、俺たちに近づいてきた。
俺たちは、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっていた。
こんな経験は初めてだ。
今まで、格上の強者とは何度も命をかけた死闘を行なってきた。
それでも、恐怖はあっても、完全に動かなくなるのはまずない。
虚勢をはる為に、全力の闘気と殺気を魔王を含めた2人の魔族に向けて放つ
「ッ⁉︎これは…凄まじいですね…ここまでの闘気と殺気を放てるものとは」
「これは、これは。さすがじゃのう。だが、そこまで警戒しないでくれ。儂等は敵ではない」
一瞬2人が、止まり驚き目を見開いたが、直ぐに感心したように笑みを浮かべてからまたこっちに近づいてくる。
敵じゃにって言っても、信用はできない…
2人は目の前まできた。
「お主が、サエキ ユウじゃな。後ろにいるのが、サエキ サヤかのう」
魔王は、俺と沙耶を見ると、突然手を伸ばしてきた。
ヤバイ!
そう思った途端、強い風が急に吹いた
パッシ!
「私のユウに何をするつもだ…」
風になびく青い髪が目の前に突然現れた。
「なんで、ミレイヤがここに!」
「攫いにきたぞ!何か嫌な予感がしたから、ユウの後直ぐに出たんだぞ。それが、まさか魔王とはな」
魔王から目を離さず、片手は魔王の手を掴み、もう片手で剣を魔王の首筋に当てていた。
「これは驚いた。気配すら感じなかったではないか」
「魔王様、少々警戒心がなさすぎます」
魔族2人は、慌てた様子もない。
「お主は、キサラギユウの恋人か何かか?お主のユウと言っていたようだが?」
魔王は、首筋にあたる剣を気にせずに話してくる。
「婚約者だぞ!」
「嘘ね」
「堂々とした嘘ですね」
「嘘なのです?」
「可愛そうな子…」
ミレイヤの発言に今まで固まっていた、4人が反応する。
「グッ…予定だぞ…婚約者になる予定だもん!というか、知らない子供に、裸の女の子が混じってる!」
えっ!
今気づく…
ミィナも何か着て欲しい…
裸で戦っていたとか、ミィナよく堂々としてるな…
「私は知ってるよ。騎士団長のミレイヤ=フランジェスよね。ユウに言い寄って振られてる可愛そうな女の子」
「振られてないぞ!」
この子達、目の前の魔族無視して盛り上がってるんだけど…
目の前魔王だよ魔王。
ミレイヤの掴んでるの魔王の腕だから。
そんなにブンブン振らないで。
「お主ら、儂等を忘れておらんか?」
魔王がおずおずした様子で話を挟んできた。
「うるさいぞ!」
「敵対しないんでしょう!なら、黙ってておじさん!」
「そうです!年寄りは引っ込んでいてください」
「です〜」
「可愛そうな魔王」
5人は、話しかけてきた魔王を睨むとまた話始めた。
「えぇ〜と、なんかごめん」
俺はとりあえず、可愛そうな魔王に謝った。
「か、構わんよ。敵対する意思がないことが伝わったようで何よりじゃよ」
魔王優しい…
なんか、一瞬で魔王の印象壊れたな。
さっきまで、体動かないとか言ってたのに、もう元気に動くよ。
「ミレイヤ、とりあえず魔王の腕だけは離してあげよう?」
ミレイヤそっと言った。
「ごめんなんだぞ!」
ミレイヤはそういうと、魔王の腕を投げ離した。
そして、また5人で話し始めた。
「うん、なんか色々とごめん」
一様、まだまだ緊張状態にあるはずなのに…
もう、戦闘なんて感じさせられないな。




