負けるわけにはいかない(1)
「リサ!」
サヤの声が遠くから聞こえた様な気がした。
そして今私の目の前には、狂獣が迫っていた。
私は自分の行動が馬鹿だってことに気づいた。
敵はあのダージャという魔族だけではないのに、周りを見ずに動いてしまった。
それも、仲間であるサヤやマナのことを気にせずに…
頭に血が上ってたにしろ、なんて軽薄な行動なのでしょうか…
我ながら、馬鹿すぎますよ…
頭の中には、私がとった行動の後悔ばかりが埋め尽くしていた。
こういう時に頭によぎるのは、後悔と諦め…
って、私は何を諦めてるんでしょうか!
こんなことで諦めていては、ユウ様に嫌われてしまいます!
サヤの友人として対等に立てません!
ユウ様なら…
サヤなら…
こんなのをピンチとはしないはずです!
動きなさい私!
ユウ様を想う…
サヤの友人でライバルであるリサ=ミラージュは弱くありません!
私の思考が一気に変わった。
瞬時に2つの魔術を構築した。
爆炎を私氏から少し離れた後方で展開した。
発動した魔術はすぐに爆発した。
私はその爆風を背に受け、一気に前方に飛んだ。
狂獣の攻撃はこれで避けれました。
ですが、爆風で飛ぶ私の勢いがすごく、受け身をとれそうにないです…私一人なら!
サヤなら、私の魔術式を読み取り、やろうとすることを理解しているはずです。
信じていますよ、サヤ。
私はそう考え、飛んで行きながらサヤを見る。
サヤはすでに魔術を展開し終えていた。
「包み込みなさい。優包風」
私の体は、温かく優しい風に包まれ、勢いを落としていった。
そして、そのままサヤの目の前まで運ばれた。
「サヤ、ありがとうございます」
「ありがとうございますじゃありません!心配させないでください」
「あら、サヤがデレましたか」
「バカ言わないで下さい。ここでリサに死なれると、あの魔族を私とマナの2人で対応しないといけなくなるじゃないですか。さすがに厳しいですよ」
「サヤお姉ちゃんツンデレなのです〜」
「そうですね、サヤはツンツンですね」
「なっ!もう知りません。それよりも、あの化け物どうかしないといけませんね」
サヤは顔を赤くしながら、私たちから目をそらした。
そして、狂獣を見た。
よくこちらが話してるの待っててくれましたね!
ですが、いつまでもこうしてるわけにはいきませんよね。
「精水縛からの精水檻、精水刃線なのです〜」
虎のような狂獣にマナが魔術を放った。
その狂獣は、一瞬のうちに縛られて、檻に閉じ込められた。そして、檻の中では、水が鞭のように狂獣に襲った。
一気に3つの魔術を同時展開⁉︎
マナの適応属性は水ですね。
ですが、水の魔術式でも見たことのない術式を使用しています。
通常の魔術式よりも複雑に見えますが、それを同時に3つですか…
私やサヤでも、3つの魔術を展開しようとすれば、マナよりも1秒多くかかるでしょうね。
「リサ、私たちも負けてられませんね!」
「えぇ!私たちだってやってやります!炎星」
「氷王!」
サヤが構築した魔術で一気に空気が変わった。
正確には一定の領域の空気だけだ。
ヒューラと戦った際にも同じ魔術を使ってましたが、今回は力を制限し魔術の適応領域を絞ってますね。的確に相手の空間を制圧してますね。
威力を落とさず、領域だけの制限。
容易に行えることではないでしょうね。
多大な情報を処理しきっているのでしょうね。
私はチラっとサヤを見る。
いつもながら、サヤが使っていると、簡単にできるように思ってしまえるほど余裕に見えますね。
狂獣は少しづつ凍り始めた。
そこに私の放った巨大な焔がぶつかり派手に爆発した。
「空壁」
サヤがそう言うと、私達3人を爆風から守った。
爆煙が晴れると、そこには鳥の狂獣がその場に倒れていた。
おそらく私達の魔術が直撃して倒すことができたのでしょう。
あとは1体…
先までマナの魔術に囲われていた場所を見ると、そこに狂獣はいなかった。
いない⁉︎
一体どこに!
私はサヤとマナの方を見た。
すると、マナの後方に狂獣が迫っていた!




