禁忌《狂化》~キサラギ サヤside~
お兄ちゃんは、邪竜に1人で向かって行った。
お兄ちゃんなら大丈夫ですね。
それよりも、私は私たちの戦いに集中するべきですね。
元の世界では無かった、命をかけた戦い。
ルクスと戦った時も命をかけていましたが……
私は、私たちの前で笑みを浮かべるダージャを見る。
ダージャと対峙するだけで感じる、ルクスと戦った時には感じなかった危機感。
今すぐにでもこの場から逃げるのが得策だとわかる。
これが、命をかけて戦うということなんですね。
お兄ちゃんは怖くないんでしょうか……
私なんて、こんなにも震えてるのに……
「サヤお姉ちゃん大丈夫なのです」
「そうですよ、サヤ。私達なら勝てますよ。なんたって、信頼できる2人がいるんですから」
「リサ、それは勝てる理由になってませんよ…でも、ありがとうございます。さて、やってやりましょう!」
リサにマナも同じはずなのに、何を戦う前から逃げていたのでしょうか私は!
お兄ちゃんに色目を使うリサとマナですが、この世界に来て信頼できる人たちです!
勝てるかどうかではなく、勝つんです!
「マナ!サヤがデレましたよ!?」
「リサお姉ちゃんよっかたです」
「えぇ、サヤがデレたところで、戦いますか!もうこれは、なんでもできる気分ですよ!」
リサはそういうと、ダージャに向かい魔術を放ち始めた。
ちょ!
1人で勝手に始めないでくださいよ!
私とマナもそれに続き、ダージャに魔術を放ち始めた。
ダージャは笑みを浮かべながら私たちの魔術を防ぎながら、お兄ちゃんの戦ってる場所から離れて行った。
「ここぐらいでいいんじゃないか」
ダージャはそういうと、立ち止り魔術式を構築したと思えば、黒い煙に包まれた。
私たちの放った魔術はその煙に当たると飛散していった。
「サヤ、マナ、このままでは魔力を無駄遣いしてしまいます。ここは一度魔術を止め、相手の行動を伺いましょう」
リサがそういうと、私たちは魔術を止めた。
すると、ダージャを包んでいた黒い煙が消えダージャが現れた。
「なんだもう終わりか?では、次はこちらのターンだな。とは言っても相手は私ではないがな」
ダージャはそういうと、手を前にかざした。
私たちは、ダージャの攻撃に備え構えた。
すると、ダージャの目の前の地面に魔術式が構築された。
そこから、1匹の鴉のような黒い鳥が出てきた。
元居た世界の鴉とは見た目は似ているが、爪が異常に長く、目が大きく赤い。
「狂獣!?」
それを見ると、リサは驚いていた。
「リサ、あれが何か知っているのですか?」
「えぇ、あれは生物を魔術によって狂化した法外のバケモノですよ。ですが、生物を狂化させるなんて、正気とは思えません。狂化させる魔術そのものが禁忌とされているのもそうですが、その魔術を発動させるには人族の命が贄となるはずです。人族の命に含まれると言われる“ビドゥン”が多く必要とされ、術者すらも喰らうと言われる魔術のはずです」
えぇー
この世界禁忌多くありません!?
それも、禁忌が広まってる時点でこの世界どうかしてますよ。
「ほぉ、知っているのか。そうだ、狂獣だとも。人族は良き贄となったぞ。しかし、100以上ものビドゥンが必要もなるとは思わなかったがな。そして、この狂獣を作り出した術者も死んだよ」
「ッ!あなたは、このようなバケモノを生むためにどれだけの者を犠牲にしているのですか!?術者はあなたのお仲間じゃなかったのですか!?」
「仲間だったとも。しかし、犠牲をなくして何かを成し遂げるなんてできない」
「あなたの考えは理解できません」
「もともと、敵なのだから理解してもらおうとは思っていない。さて、無駄話はこの辺にして、始めようか。まぁ、私は高見の見物をさせてもらうがな。」
「待ちなさい!」
「安心しろ、お前たちが戦っている間はあの男に手出しはしない」
ダージャはそういうと、私たちから離れて行く。
それを追おうとリサが走り出した。
しかし、先の魔術式はまだ消えておらず、突然黒い煙が出てきた。
黒い煙が晴れると、そこには黒い虎がいた。
目が大きく赤い。
狂化されているものですか。
リサは、目の前に出てきた虎に驚き止まった。
そして、その頭上から鴉が弾丸のようにリサに襲い掛かる。
「リサ!」
リサは反応できておらず、私はリサの名前を叫んだ。




