依頼失敗?
俺たちの目の前に広がるのは、太い木々が道のようにかかり、そこに木でできた家とかがいっぱい並んでいた。
そして、俺たちを見下ろす形で見ているのはエルフだ。
数は、ざっと見た感じだと、80~90人だ。
弓を構えている者、剣を構えている者もいる。
「沙耶、リサ。魔術でマナを守っていてくれ」
そういうと、沙耶とリサは頷き、魔術を展開した。
「俺たちは、争いに来たわけでわない!話を聞いてくれ!」
俺はそういって、3歩前に出た。
すると、エルフたちが矢を一気に放ってきた。
速い!
違う!魔術がかけられてるんだ!
矢に魔術が込められている!
俺は迫りくる矢を薙ぎ払っていく。
あぁ、これは間に合わないな。
掠る程度の矢は見逃しながら、深手になりそうな矢だけを薙ぎ払っていく。
数が多い!
ここは仕方ない。
多少、こちらも手を出させてもらう!
「静流《風弾斬》!」
俺は、迫りくる矢を受けから回避に切り替え、矢を避けながら剣を振るう。
俺の剣は空を斬った。
いや、俺は周囲の風を打ったという方が正しいか。
斬ではなく打へ。
モノではなく空を。
すると、俺を中心に暴風が吹き荒れた。
その風に矢は全て落ち、エルフは風に耐えるために木にしがみつく者もいれば、飛ばされるものもいた。
この斬撃は、相手に直接ダメージを与えることはできないが、使い勝手はいい。
俺の結構気に入ってる剣技の一つだ。
これ、剣術じゃなくても魔術で普通にできそうだけどな!
だが、剣で放つからカッコいいものがあるだろう!
分かるだろう!
って、俺は、何自分に言ってんだか。
と、さすがに使うのを躊躇いすぎたか。
俺には、数か所かすり傷があった。
エルフたちは態勢を立て直してるな。
「「フッフフフ…… 」」
急に後方からものすごい殺気を感じた。
エルフたちも絶望を目にしたような顔をしてるぞ!
「お兄ちゃんに傷をつけるなんて…… 」
「ユウ様が血を…… 」
「「殺す!」」
そういって、ゆっくり俺の前に歩いて出たのは、殺気をガンガンに放つ沙耶とリサだ。
「いやいや、ちょっと待て!人族の背負う罪背負って話すんじゃなかったのか!」
「そうですね、殺してはいけませんね。少しお話をしましょうか」
その話し合いって、どんなのですかね!
殺気おさめてくれませんかね!
「あぁ、よく見ればよく燃えそうじゃないですか。木でできた村ですか。これにないほど、燃やしてくれって言ってるんですよね」
「なら、お言葉に甘えて燃やし尽くしましょうか。私が火を担当します」
「私はよく燃えるように風を起こしましょうか」
「「死なないでくださいよ。これは話し合いなのですから」」
沙耶とリサがそういうと、右手を上にあげると2人の上に魔術式が構築された。
デカッ!
いや、死ぬから!普通に死ぬから!
というか、俺が死にそう。
「ご主人様大丈夫です?」
マナは俺に近寄ってくると、魔術を瞬時に構築し、俺の身体が光に包まれ傷が治っていく。
マナ魔術使えたのか。
「って、マナは良いのか?あの2人ここ燃やそうとしてるぞ?」
「う~ん、大丈夫なのです~お姉ちゃんたちなら殺さないと思うのです~それに、お話を聞かない人にはお説教が必要だってサヤお姉ちゃんが言って行ったのです~」
いやいや、あの2人普通に殺すって言ってたぞ!
それに、サヤ何をマナに言い残してるんだよ。
「私たちの負けだ!燃やすのはやめてくれ!私たちはもう抵抗しない!」
すると、エルフの1人が叫んだ。
「何を言ってるんでしょうか。聡明で知性豊かな種族とは思えませんね」
「お兄ちゃんがそう言ってるのにも関わらず攻撃してきた人たちの言葉とは思えませんね」
「「燃えなさい!」」
沙耶とリサがそういうと、魔術式が神々しく輝いた。
「ヒッ!」
「守りを固めなさい!」
エルフたちは、怯えていながらも防ぐために魔術式を構築した。
そして、沙耶とリサの魔術式が弾けると、光が周りに散った。
「冗談ですよ。これで少しはお話しできますね。まぁ、次はありませんが」
「さぁ、お兄ちゃんどうぞ」
むっちゃドキドキしたんだが!
というか、エルフたちもポカーンとしてるじゃないか!
「え、えーと、俺たちは敵対しに来たわけじゃない!話をできる奴はいないか!」
「俺が話を聞こう」
一人のエルフが俺たちのもとまで来た。
「俺は、アレク=アクレンだ。エルフの長をやっている」
長だと?
どう見ても、30代ぐらいの若さがある。
長って言ったらヨボヨボの爺かと思ったのに…
「お、俺はキサラギ ユウだ。で、右にいるのがサヤで、左にいるのがリサだ。後ろにいるのは、マナだが、マナはお前たちは知ってるんじゃないか?」
そういうと、マナは俺の前に出た。
「キミは!?マナ=ウォークではないか!他の者はどうした?」
アレクがそういうと、マナは人族と魔獣に襲われ、奴隷として売られたこと、俺に助けられたことを説明した。
俺のことをちょっと美化しすぎて、話しているがまぁいい。
「マナも、他の者たちは残念だったが、よく戻ってきてくれた。
そうか、ユウ、サヤ、リサ。マナを助けてくれてありがとう。
そして、無礼な行い申し訳ない」
ゴォォー
すると、凄まじい地響きが鳴り響いた。
「すまない、ユウ達の依頼は分かったが、それをかなえることは今はできない。申し訳ない。
精木は今枯れているのだ」
枯れている?
マジか!ここまで来て依頼失敗かよ!




