人の罪…
「うぅん」
俺たちが話していると、俺の横で眠っていた少女が起きた。
「えっ…見えてます…私、ちゃんと見えてる!」
その少女は起きると、急に自分の顔をペタペタと触り始めた。
「手も足も耳もある…うっ…うぅ…」
すると、少女は静かに泣き始めた。
「あの、もういいですか?話をお聞きしたいのですが?」
沙耶がそういうと、その少女は俺の腕をギュッと掴み、布団に顔を隠した。
「お兄ちゃん、この子失礼じゃありませんか!」
「サヤが怖かったんじゃありませんか?」
「私はただ話しかけただけなのに…」
沙耶は本気で落ち込んだみたいだった。
「ねぇ、話を聞かせてくれないか?」
俺はそっとその少女の頭を撫でた。
「はいです…」
その少女は、静かに顔を出して俺を見た。
「えっと、じゃあここにいる理由わかるか?」
「それはもちろんです!ご主人様が私を助けてくれたからです!」
「「ご主人様?」」
その少女の発言に沙耶とリサが食いついた。
「はいです!ご主人様は死にかけていた奴隷である私を買って助けてくれたのです!」
「ほぉ~奴隷ですか…私達が魔力不足で倒れていたというのに、お兄ちゃんはその間に奴隷を買いに行っていましたと」
「ユウ様、これは少しお話する必要がありそうですね」
そう言って、沙耶とリサがぎこちない笑顔で見てくる。
怖ッ!目に光がないぞ!
てか、魔力不足起こしたのって、戦う必要のない敵を魔術で殲滅していったからだろ!
「そ、そうだ、キミは名前はなんていうんだ?」
「「今は良いですが、あとでお話があります」」
沙耶とリサはそういった。
あぁ、嫌だな~
お話って、確実に説教じゃん!
「私は、“マナ=ウォーク”です!」
うん、元気な子だ。
ミレイヤと被るな。
「マナはどうして奴隷として売られていたんですか?他の方とは一緒ではなかったのですか?」
「私一人なのです…何人かで森を散策していたのですが、一緒にいた人たちは、みんな殺されちゃったのです…」
マナは、の表情に影が落ちた。
まぁ、一緒にいた奴が殺されたらそうなるわな。
「ん?それは、魔獣とか魔物に襲われたのか?」
「違うのです…魔獣とかじゃないのです…」
魔獣とか魔物じゃないのか。
なら、魔族か?
だが、マナは何か言い難いみたいだな。
「そういうことですか…どこまでも救いようがないですね…」
沙耶は分かったのか、明らかに怒りを含んだ表情をしていた。
俺にはさっぱりなんだが!
「ユウ様、おそらくマナ達を襲い、マナの仲間を殺したのは、人族です」
人族?
俺たちの種族って人族だよな。
俺はマナに目をやると否定もせず、俯いた。
これは、正解だったな。
「ユウ様、王都の街とアルトリアの街でエルフを見ましたか?」
「いや、マナが初めてだな」
「エルフは、人族と対立関係にあります。なので、人族の街にエルフがいるとすれば、それは人族の誰かが所有するということです。いわば奴隷です」
「ッ!」
「ユウ様のお怒りはごもっともです。ですが、多種族が集まる中、種族の対立とはどうしてもあってしまうものです。見た目も能力も違う。それを差別するもの羨ましく欲するものはいるものなのです。
エルフという種族は、人族にとって、とても魅力的な美貌を持っている種族です。
その美貌に目を奪われた人族は、複数の国が我先にとエルフを手に入れる為エルフを襲った。
人族は持ちうる全てを使い、エルフの住まう森を燃やしては、壊し。そこで生き残ったエルフを捕え、国王や貴族の奴隷として生かされた。
エルフの被害は尋常なものではありませんでした。それこそ、エルフという種族が滅んでしまうぐらいの死者がでたのです。
そして、奴隷として生きてるエルフですが、どんな待遇を受けていると思いますか?
想像することは容易いでしょう。
国王や貴族の慰め者にされ、生きるための最低限の食事だけ与えられてきました。
長寿のエルフはそれに耐えながらも生きていました。
ですが、人族はエルフから強襲され、奴隷のエルフはその時に見せしめとして殺されました。
今は、エルフと人族の間は休戦状態です。
これが、エルフと人族間にあった事実です。
人族はそれを隠し、歴史にも残さず、受け継がれるものは、エルフが人族に強襲をかけ休戦の状態が続いている。エルフは人族の敵であり、奴隷であるという認識だけです。
それは、我がミラージュ王国も同じなのです。
お父様から、それを聞いてきていました。
とても、許されることではありません。
そして、今回受ける依頼は、妖精の森に行く依頼です。そこは、エルフの住む森なんです。
人族が背負う罪。私はしっかりと背負い、エルフたちとお話がしたいのです。
ですから、この依頼を受けたいと言いました。
サヤには言ってましたから、もちろん知っています。
ユウ様には黙っていたこと大変申し訳ございません」
リサはそういうと、俺に頭を下げてきた。
この心こそ、王女のあるべき姿なのかもしれないな。
俺は、この清き強い心を持つ王女を助けれたことを誇りに思うさ。
「あぁ、俺はリサ、お前の想いちゃんとわかった。だから、全力でそれをサポートする」
「ありがとうございます!
それで、マナなのですが、人族に襲われ生き残ったマナだけが売られたのだと思います」
「そうなのです…売られた後は、馬車で運ばれる途中で“サイファン”という飛竜に襲われて今になるのです…」
「飛竜がこの付近にいるのは少し不思議ですね…飛竜の生息は、砂地であり、こんな森に囲まれたところには滅多に出現しないのですが…」
リサは、マナの発言ん少し考え始めた。
「今は良いじゃないか。それよりも、マナは俺たちが怖くないのか?
お前を襲った連中と同じ人族なんだぞ?」
「ご主人様は私の為に必死になってくれたのです!命を助けてくれたのです!怖くなんてないのです!」
そういうと、マナは俺に詰め寄ってきた。
「そ、そうか」
「そうなのです~」
マナはそういって、俺の胸に頭をこすりつけてきた。
くっ可愛い!
「チッ!」
えっ!沙耶舌打ちしたよ!
俺は、サヤに視線を送るとさっきとは違い、怒りはおさまっていたが、俺を睨んでいた。




