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妹と召喚されました!  作者: 雄也
エルフ編
40/78

絶対に助けます!

俺は1人で、アルトリアの街を歩いていた。


アルトリアは、王都よりも小さいが、勝るとも劣らない賑わいがある。

それに、ケモノ耳や尻尾がある獣人族、小柄なドワーフ等多種多様の種族がたくさんいる。


リサからは、何かあればと金貨20枚貰っている。


俺は、気ままに歩いていくと、少し雰囲気の変わった通りにでた。

先までの賑わいとはまた違った感じである。


こ、これは、いわゆる花街では!?


その通りには、娼館が多く立ち並んでいた。


金貨20枚あるよな…


俺がそんなことを考えていると、急に悪寒が走った。

そして、沙耶とリサの鬼の顔が目に浮かぶ。


こんなところにいったのバレたら殺されかねない。

バレた時のことを考えるだけで震えてくるわ!


俺は、花街から少し外れる為に小路地に入っていった。


ここは、暗いな。

周りは建物で囲まれているからか。


そう思いながら歩いていると、黒い幕で入り口を覆った店屋があった。


「旦那、少し見ていかねぇですか?今日入りたてのもあるんですぜい」


その店を通り過ぎようとしたら、なんかいかにも怪しげな男に声を掛けられた。


「ここは、どういう店なんだ?」


「入ってみれば、分かりますぜ」


そういわれて、俺は興味本位でその店に入った。

そして、中にはこれまた、暗い感じのホールがあり、そこから、部屋がいくつかあった。


「旦那、こっちですぜい」


その男は、そういうと右端にあった部屋を空けて案内してくる。

俺は、一様警戒して剣に手をかけながらも、案内された部屋に入った。


「こ、これは!?」


「種族も多種多様に揃ってますぜい」


入った部屋には、牢獄のような檻で囲まれた中に複数の人が入っていた。

ここは、奴隷店だ。


俺は、興味本位で入ってきたことを後悔した。

こんなの見たくなかったな。


だからといって、俺がここで暴れて店をつぶしたところで、この子達は救われないし。俺は、何も出来ないな。


「もういい。帰るわ」


俺は、自分に対する怒りを抑えながら、部屋を出ようとした。


「ゴホッ!ウッ!ゴホッ!」


ペチャ…


パサ…


誰かが咳き込んだと思ったら、何か液体が落ちる音がして、人が倒れる音がした。


俺は、急いで音がしたほうに駆けていった。


そこには、右耳が千切れ、目は包帯で覆われており、右足に右手が無い少女がいた。

右腹にも包帯が巻かれており、血がにじんでいる。

その少女は、床に血を吐きその場に倒れて、苦しそうに息をしていた。


酷い怪我だ!息が浅すぎる!


「あぁ、これはダメですぜ。おい!こいつを処分しろ」


男がそういうと、部屋の置くから3人の男が出てて、少女がを抱えて連れて行こうとした。


「待て…待てといっている!」


「旦那?」


「その子をどうするつもりだ?」


「どうするって、処分するんですぜ。今日入ってきたものですが、魔物に襲われて、身体に欠陥があり、いつ死んでもおかしくなかったんですぜ。死んだものをここにおいていては、菌が繁殖して、他の製品にも影響が出るかも知れねぇんで、先に処分するんですぜい」


俺はそれを聞くと、その男に掴みかかった。


「何が製品だ…」


「旦那?」


こいつに怒っても仕方が無い。

それよりもあの少女だ。


「そいつは俺が買う。いくらだ?」


「いいんですかい?もうし…」


「くどい、買うといったんだ早くしろ!」


早くしなければ、本当に死んでしまう。


「分かりやした。なら、奴隷契約をしましょう」


「その契約は、その子に負担はかからないのか?」


「いえ、負担はかかりやす」


「なら、却下だ。購入手続きだけしてくれ」


「ですが、それだと逃げたり、旦那に危害を加える可能性が…」


「この少女にそれが出来ると?」


「いえ…分かりやした」


男はそういうと、先ほどのホールに行った。


俺は、その少女を持っている3人から少女を受け取り、

その少女を抱いてホールに行った。


男は、俺に1枚の紙を渡してきた。


「購入の無いようですので、問題なければ、サインか血判をお願いしやす」


俺は、その紙を見るが何が書いてあるかさっぱり分からん。

が、今はいい。

名前は、まだかけないから血判だな。


俺は、剣を抜き自分の指に軽く当てた。

血が少し出ると、紙に押した。


「これで購入完了ですぜ。何かあれば、いつでも…」


俺は、男の発言を聞かずに少女を抱いたまま、店を飛び出た。


時間が惜しい。

病院みたいなところがあればいいが、どこにあるかは分からない!

俺は、応急処置程度は出来るが、そんな処置だけで命をつなげれる怪我ではない。


なら、魔術なら?

魔術の知識を持つ沙耶とリサなら、何か出来るかもしれない!


俺は、そう考えると沙耶達の元まで全力で走った。

抱える少女に負担がかからないように気を使いながら。


街を走っている時には奇妙な目で見られ、

宿に入ったときは、店の子に不思議な目を向けられたが、普通に通してくれた。

でも、そんなことは気にしている余裕はなく、俺は沙耶とリサのいる部屋を勢い良く開けた。


「もう、お兄ちゃん、そんな勢い良く扉開けないでください」


「ユウ様、乱暴すぎますよ」


良かった、2人とも起きていた。


「ユウ様、抱えてる子はどうされたのですか?」


「お兄ちゃんがついに犯罪に手を染めてしまいました」


「いやいや、説明は後でするから、それより傷を癒す魔術とか無いか?」


俺がそういうと、2人は顔を見合わせ俺の抱えてる少女をじっくりと見て、考えてくれた。


「そうですね、光りの魔術で治癒は出来ますが」


「その子は、身体の欠損が激しいです。傷は塞がっても、失った血と身体は治されないので、命が助かるかは分かりませんが、多少なりとも命の延命にはなります」


「ちょうど、私達も魔力が半分ほどに回復したので、とりあえず魔術をかけます」


沙耶とリサはそういうと、少女に手をかざした。

すると、少女の身体が光に包まれた。


「お兄ちゃんはこの子を助けたいんですか?」


「あぁ」


「なら、この子を助けれるのはお兄ちゃんにしか出来ないと思いますよ」


「そうですね、魔術ではどれだけ高度な魔術式を構築しても限度があります。それは、術式として描くから限度があるんです。

なら、術式を無視できればその限度はなくなります。ユウ様が使えるのは、魔法、奇跡の力なんです。

限度がなく、果てしない可能性を持つ力ですよ。

この子を救いたいのなら、ユウ様、創造してください。この子に奇跡を与えてください」


そうか、魔法は創造して発動する。

俺は1度、魔法を使っている。

出来るはずだ。いや、やらなければこの子が死んでしまう!


俺は、集中する。

周りの声も音も全てを遮断し、創造することだけを考える。


今必要なのは、癒すことだ。

傷を癒し、身体を癒し、心を癒す。

完全なる治癒だ。


完全治癒パナケイヤ


俺はそう呟くと、俺が抱いてる少女の身体が、先よりも強い光で包まれた。


光が収まると、その少女の身体には、右手があり右足があり、耳があった。

そして、先までの苦しい呼吸が嘘のように、安らいだ呼吸をしていた。


「良かった…」


そして、俺はそのまま意識を手放し倒れた。


「お兄ちゃん!?」


「ユウ様!?」


沙耶とリサが俺を呼ぶが、俺には届かなかった。

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