また一人増えます!騎士団員が…?
「ユウ、騎士団に入らないか?」
ミレイヤは俺を騎士団に誘った。
「ミレイヤ、理由を聞いてもいいか?」
「もちろんだ。ユウは、強い。騎士団の副団長であるレイに勝ち、そして、団長である私に勝ったのだ。
そんな強さを持つユウが騎士団にいてくれたら、どれだけの人が守れるか。
なによりも、私とユウは剣で語り合ったのだ。だからこそ、ユウが欲しい!」
ミレイヤは俺を満面の笑みで見てくる。純粋な目だ。俺には痛いほどの…
「俺の答えは、断る。騎士団には入らない」
「理由を聞いてもいい?」
ミレイヤは一瞬にして悲しい目に変わった。
「理由は簡単だ。ミレイヤは俺のことを何もかも誤解している。
俺の力でどれだけの人が守れるかだって?答えは簡単だ。こんな力では、誰一人救えやしない。
だから、俺はもっと強くなる必要がある。俺の大切なものを守れるほどに強くなるために。
俺にとって、それ以外の人を守る余裕はない。いや、そんなことをしていれば、いつかまた、大切なものを失うことになる。
だから、大切なもの以外はどこで死のうが俺は知らない。
逆に、邪魔になるなら俺は普通にそいつを殺すぞ。
今までだって、そうしてきた。親友だって思ってたやつもこの手で殺したんだ。
それにな、俺は騎士団みたいな集団で動くのは嫌いなんだ。知らないやつに背中なんて任せられない。
それに、俺がいくら信じたところで、人は裏切るぞ。
な、ミレイヤ。俺はこういうやつなんだ。大切なもの以外どうでもいい、ロクでもない男だ。
こんな男を騎士団に誘うぐらいなら、もっといいやつを探せよ…」
俺がそういうと、ミレイヤは泣きそうな目で俺にゆっくり歩み寄ってきた。
まぁ、ミレイヤがどう思って他かは知らないが、きっと落胆したんだろう。
そんな男だなんて思わなかったとか言って、殴るんだろうか。
俺は、殴られる覚悟をして目を閉じた。
すると、俺に来たのは強い衝撃なんかではなく、優しい温もりだった。
ミレイヤが、涙を流しながら俺に抱きついてきたのだ。
まぁ、身長差がありすぎて、ミレイヤの顔が俺のお腹ぐらいにあるが、今はそんなこと気にしていられない。
「ユウ、ごめん。もう、この話は今は良い。だから、そんな顔をしないでくれ」
そんな顔?
俺は、今そんなにひどい顔をしているのだろうか。
「お兄ちゃん、今とても悲しそうで今にでも泣きそうな顔をしてますよ」
「ユウ様…」
俺の両手を沙耶とリサがそっと握ってくる。
そして、ミレイヤが、ゆっくりと離れて顔を上げた。
涙を流した跡が、顔にある。
しかし、その目は決意が見えていた。
「ユウ、私はユウの過去に何があったのかは知らない。だから、ユウ。私がお前に今を教えてやる。
お前が生きているのは過去じゃない。今ここに生きているんだ。過去のしがらみがあるなら、私が攫ってやる。
こう見えても、私は強いんだ。ユウを過去のしがらみから攫うのなんて簡単だ。
もう一つ、私は諦めは悪い方なんだ。
ユウ、私はお前が欲しい!これは、騎士団長としてではなく、ミレイヤ=フランジェスとしてユウが欲しい!
覚悟しろよ、私はお前を全てから攫って、私のユウにしてやる!」
最後には、また笑って俺に言ってきた。
ミレイヤ、カッコイイじゃないか。
俺には、その笑顔がまぶしすぎるよ。
元気なだけの子供かと思ってたのに、さすが騎士団長だ。
「それは、聞き捨てなりませんね。お兄ちゃんには私がいるんですから、お兄ちゃんを攫わせはしません」
「ユウ様は、私の未来の旦那様です。そこは譲れません」
「えっ!王女様と婚約してるのか!」
「いえ、まだしてませんが、近い未来にします!」
「また、リサが夢事言ってますね。一度、お兄ちゃんに振られたのに」
「振られてませんよ!?」
「ユウ、なら私と婚約しよう!王女様ほどではないが、私はこれでも貯蓄はあるんだ。それに、私は寛容だからな。遊んで暮らせるぞ!」
「なっ!お兄ちゃんをヒモ男にするつもりですか!騎士団長が、そんなことを催促してもいいんですか!」
「問題ない。なんたって、私は騎士団長だからな」
「私は振られてません…」
なんか、いつも沙耶とリサが言い争っているのに、ミレイヤが増えただけでこんなに騒がしくなるのか。
そんなのを見ていると、先まで俺の中にあった、暗い気持ちが嘘のように晴れていた。
「はっはは」
すると、自然に笑ってしまった。
「ユウ、やっと笑ったな」
「ユウ様、あんな暗い顔は似合いませんよ」
「お兄ちゃんは、笑っていてください」
3人は、言い争いをやめて笑顔で俺を見る。
「あぁ、悪かった。っと、もう暗くなってきてたな。依頼は、明日出発か」
「そうですね、今日はゆっくり休みましょう」
「お腹も減りましたし、帰りましょうか」
「そういえば、食材が何もない…」
今気づいた!完全に食材買うの忘れてた!
今から買いに行ったら、時間かかりそうだな。
「なら、私が作ろう!」
すると、ミレイヤが叫んできた。
「え?いやいや、食材がないんだし無理だろう」
「大丈夫だ、騎士団の詰所にあるから、待っていろよ!」
ミレイヤはそういうと、走って行ってしまった。
「お兄ちゃん、どうしましょう?」
「いや、俺に聞かれても…」
「走って行ってしまいましたね」
そうして、俺たちはミレイヤが戻ってくるのを待っていた。




