騎士団に囲まれました!
俺は、今騎士団の人たちに囲まれていた。皆、剣を抜き俺に向けて構えていた。
遡ること数分。
俺たち4人は、騎士団の集まる小屋に着いた。
「ユウ、訓練場に行くぞ!」
「お兄ちゃん、私とリサは魔術の勉強と練習をするので、終わりそうな頃にここに戻ってきますね」
「ユウ様、ご武運を」
沙耶とリサはそういうと、すぐに出て行ってしまった。
そして、俺は満面の笑顔でこっちを見ているミレイヤに連れられて、訓練場に来た。
訓練場には、騎士達が鍛錬をしていた。
「そうだ、せっかくだから、私以外の騎士達とも手合わせしてみるといい。
全員注目せよ!今から、ここにいるユウがお前たちの相手をする!ユウは、私とレイに勝った強者だ!心してかかり、ユウから色々学ぶように!」
ミレイヤがそう叫ぶと、俺はミレイヤに背中を押されたと思ったら、訓練場のど真ん中まで飛ばされた。
「では、模擬戦開始だ!」
えっ!何この状況!
何が模擬戦だよ!これイジメじゃないか!
そして、俺は、今25~30人ほどの騎士達に囲まれていた。
騎士は剣を抜き、魔術を使うであろう騎士は、後方で杖を構えた。
そして、一斉にかかってきた。
流石、騎士だ。動きは悪くないが、型にはまりすぎている。
これだけ数がいても、これだけ型にはまった動きでは、見ただけである程度の動きは予想できる。
なので、俺は一番邪魔になるであろう後方の魔術師の動きに一番注意を払う。
数がいれば、確かに有利にはなるだろうが、行動もそれに縛られることになる。
複数の騎士の間から、魔術がいくつも飛んでくる。が、魔術が所が絞られていれば、避けるのも容易い。
俺は、騎士の剣と魔術を避けながら、先ほど購入したばかりの剣を抜いた。
「頼むぜ、俺の新しい相棒」
俺は、一人でにつぶやいた。
ここで、今周囲にいる騎士達を吹っ飛ばしてもいいが、後方には魔術師がいる。
だから、ここは周囲にいる人たちを利用しよう。
そして、俺は、騎士の間から後方にいる魔術師の人数と方向、距離を確認した。
囲むようにしているな。
数は、8人か。
そして、俺は行動に移した。
攻撃を避けながら、態勢を低くし、足に思いっきり力を込め放った。
周囲にいる騎士達の隙を抜け、瞬間に魔術師の所に移動し、斬撃を放つ。
剣を持つ騎士が集まっていたことにより、魔術の攻撃範囲は制限される。
それと同時に、前衛の騎士と俺の姿が重なり見にくくなっていた。
そして、俺が飛び出ても、魔術師は反応に遅れ、魔術による追撃を受けることなく、俺はスムーズに魔術師の前に移動できた。
後は、流れ作業だった。
魔術師を4,5人倒すと、魔術師はこちらを攻撃しようとしていた。
が、それが判断ミスだ。
攻撃に徹するのはいいが、後衛は前衛がいてこその実力もある。
前衛の騎士達は、俺のスピードについて行けていない状況で、俺のまわりには前衛が全くいない。
それでも、攻撃に徹するには、相手の実力を正確に測り、相手の動きに的確に反応する必要がある。
しかし、残っている魔術師で俺の動きを見切れている者はいない。
それにより、前衛はいない、相手の動きは捉えられない、いくらでも攻めてくださいの状況で攻撃に徹するなど、隙がありすぎて、すきに攻撃してくださいと言っているようなものだ。
まぁ、俺はその行動に甘えて、斬らせてもらうがな。
5秒もかからなかっただろう。魔術師は全て排除した。
そして、俺の動きを追えきれなかった騎士達に勢い任せで攻めるのをやめた。
構えて、俺の前に立つ。
うん、勢い任せで攻めてこないのは良い。よし、ここは笑顔で答えてあげよう。
「次は、お前たちだ。だれから、斬られたい?」
俺は、満面の笑みで聞いた。
すると、何故か騎士達の表情が一気に強張り、身体に力が入るのが見ていて分かった。
そんなに無駄な力を入れては、動けるはずないだろうに。
そして、俺は騎士達が固まる中に突っ込んだ。
一人、二人、三人、四人、五人…
俺は、一人ずつ斬り倒して行き、気づくと騎士達は全員倒れて俺だけが立っていた。
これ、死んでないよね…
ちゃんと手加減したし大丈夫だよね?
俺は、そう考えながら近くに転がる騎士を剣で軽く突っついた。
「うっ…」
お、声聞こえた。よかった生きてるよ。
「ユウ、まさか5分もかからず、この人数を倒し切るとはな。しかし、敗者をそう突っついたらかわいそうだろ」
俺が、ホッとしていると、前から声が聞こえた。
ミレイヤだ。
ミレイヤが、腰に携えていた剣を抜き俺のところに歩いてくる。
「真剣で打ち合うのは、初めてだな。今回は勝たせてもらうぞ!」
ミレイヤがそういうと、急に視界から消えた。
まただ、この身長だから急に接近されると、視界から消えたように見えるんだ。
俺は、ミレイヤの斬撃を防いだが、ミレイヤの斬撃が止まることはない。
やっぱり、早いし隙が無い。
俺は、流れを先にもっていかれて、防御に徹していた。
木刀でやっていた時よりも攻撃が早く、重くなっている。
俺は、そんな攻撃を受け流していく。
一撃を避けて、流れをつかみ返すべきなのだろうが、いくら考えても、受けから避けに変えれば、流れをつかむどころか、下手したら押し切られる。
「ユウ、受けてばっかりじゃ、勝てないぞ!」
しゃべる余裕もあるのかよ!
くそ、言ってくれる。
なら、望み通り攻撃にうつろうか!
俺は、腰に掛けている鞘に左手をかけた。
そして、右手で剣を持ちミレイヤの次の一撃を流し切ると、
俺は、身体の軸を斜めにして、空中で横に1回転した。
回転すると同時に、左手で鞘を強く持ち、ミレイヤの横腹に強打した。
「カハッ!」
ミレイヤは、その攻撃を受けるとすぐに後方に飛んだが、俺がその隙を逃すはずがない。
俺は、すでに着地を終え、ミレイヤに次の斬撃を与えるため迫っていた。
ミレイヤは、その斬撃に反応できたが。
流すのではなく、受けてしまった。
俺は、ミレイヤの防御の姿勢が分かると、思いっきり剣に力を込めた。
ミレイヤは、俺の斬撃を受けきれず、吹っ飛んだ。
前回は、ここで終わりだったが、おそらくそれではまだ足りない。
吹っ飛んだ先には、砂ぼこりが舞う。
砂ぼこりが舞っているのは、おそらくミレイヤが吹っ飛ぶ瞬間、剣を地面に突き刺したからだ。
俺は、すぐにミレイヤが吹っ飛んだ方に少しずれ移動した。
そして、砂ぼこりの間からチラリとミレイヤの姿が見えた。
完全に構えていた。
おそらく、砂ぼこりは、吹っ飛んだ勢いを殺すのと俺の視界を奪うためだ。
砂ぼこりにまぎれれば、やられたかが分からない。
そうして、俺が砂ぼこりが晴れるのを待っていれば、砂ぼこりから飛び出し、不意に俺を襲撃する。
やったかを確認するために、砂ぼこりに入れば、俺は視界を奪われた状態だが、おそらく、ミレイヤは俺の動きを把握できるのだろう。強襲をかけるつもりだろう。
まぁ、そんな考えに乗ってやるつもりはない。
俺は、砂ぼこりが出ていないミレイヤの後方まで行くと、剣を構え全力でミレイヤのもとに飛んだ。
砂ぼこりに入った瞬間ミレイヤが気付いたが、反応しきれず俺は、ミレイヤの首筋に剣筋を軽くあてた。
「私の負けだ」
ミレイヤがそういうと、俺は剣をミレイヤの首筋から離すと、おもいっきり、横に剣を振るった。
すると、周辺を覆っていた砂ぼこりがきれいに晴れた。
「そんなことできるなら、最初からそうすればいいのに」
そんな俺を見て、ミレイヤがつぶやいた。
「ミレイヤは、砂ぼこりを利用して俺を倒そうとしたんだろう。だから、俺は、その策を利用させてもらっただけだ。砂ぼこりを晴らしてしまったら、また最初から打ち直しになるじゃないか」
「気づいてたのか」
「あぁ、でも、砂ぼこりの中俺をどう認識するのかだけが分からなかった」
「それは、砂ぼこりの動きを見ていたんだ。目を瞑り、視界を消し音と砂の動きで判断できる」
ミレイヤ普通に言ってるが、普通じゃないからな!
このチビ、どこまでも異常だな!
「でも、ユウはほんとに強いな!あぁ~また、負けた!」
ミレイヤはそういうと、その場に大の字になり転がった。
「ミレイヤも強いぞ。朝よりも強くなってる気がするし」
「勝ったものに言われると、心にグサッと来るな。
朝より強いのは当たり前だ。ユウに勝つために、ユウの動きを思い返して鍛錬していたんだ。
私は、その場で足踏みしているわけではないぞ。少しづつ成長しているんだ」
いやいや、成長するのは時間をかけてだろう。半日で成長するか普通!
子供の成長恐るべし!
「お兄ちゃん、終わりましたか?」
「ユウ様、お疲れ様です」
ミレイヤと話していると、沙耶とリサがやってきた。
と、その横にレイもいるな。
「ユウ、お疲れ。騎士団長とまた戦っていたんだな。それどころか、この周囲に倒れている騎士達は?」
「レイか。もう交代の時間か?そこらへんに転がっている騎士は、ユウが倒した。交代時間だと教えてやれ。見た感じ怪我をしている奴はおらんし、ユウが手加減していたみたいだしな」
ミレイヤはそう言いながら、立ち上がった。
「いいですね、ユウ、次は私と模擬戦しよう」
レイの奴笑顔で俺に言ってきやがった。
今終わったばっかりだっての!
「レイ、ユウは先まで私と戦っていたんだぞ」
「そうですね、残念ですがまたの機会にしよう」
くそ、この戦闘狂嫌だ。
俺の身体が持ちそうにない!
レイは、そう言いながら倒れる騎士の所に向かった。
「ユウ、騎士団長として少し話があるんだがいいか?」
なんだか、ミレイヤが急にまじめな顔してる。
「なんだ?」
「ユウ、騎士団に入らないか?」
「は?」
俺は急に騎士団に誘われ驚いた
沙耶とリサを見るが、興味なさそうにしてるな。
ミレイヤは、なんか期待を含んだ目をしてるし、
はぁ、どう答えようかな。




